2019年09月04日

●「華為技術に衝撃!ARM取引停止」(EJ第5082号)

 英国の半導体設計支援企業「アーム」の話を続けます。ファー
ウェイが、アームから半導体の設計支援を受けられなくなること
が、ファーウェイにとってどのくらいのダメージになるかを知る
必要があるからです。
 ファーウェイは、表面上は強気を装っていますが、内心は深刻
そのものです。それは、孟晩舟副会長が逮捕されて以来、謎の経
営者といわれるほど滅多に人前に姿を現さないファーウェイの任
正非CEOが、頻繁にメディアの前に出てくるようになったこと
によく表れています。危機感の表れといえます。
 任正非CEOは、社内ですら自分を正面に出さない人であり、
ファーウェイの社員ですら、とくに若い人は、CEOの顔も、話
も直接聞いたことがない人が多いといわれています。ファーウェ
イは、独特の社員持ち株制を実施しており、任正非CEOの持ち
株比率は、わずか1・3%しかなく、通常のCEOのように社内
で振る舞うことを抑えているのかもしれません。
 近藤大介氏の本に興味深い逸話が紹介されています。任正非C
EOの人柄について、ある古参社員の話として、次のように紹介
されています。
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 本人はまったく飾らない性格で、深せん市の中心部にある自宅
から、庶民の服装で愛車のBMWを自分で、運転して出勤してく
る。わが社には社用機もないし、「金融業と不動産業は容易に儲
かってしまうので手を出さない」と戒めている。昼には時折、社
員食堂で食べているのを見かけるが、自分の写真や銅像を社内に
掲げることを厳禁しているため、若い社員は気づかない。先日、
エレベーターに同乗した若い社員が「入社して長いんですか?」
と任CEOに声を掛けた。そうしたらCEOは、「だいぶ古株な
んだよ」と答えたそうだ(笑)。       ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
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 さて、アームについてもうひとつ、あらかじめ知っておくべき
ことがあります。それは、アームが、2016年に日本のソフト
バンクグループに買収されたことです。2016年といえば、英
国において、EUを離脱すべきかどうかを決める国民投票が行わ
れた年です。2016年6月23日に国民投票が実施され、残留
48%、離脱52%の僅差で、離脱派が勝利を収めています。
 この国民投票に注目していたのは、孫正義ソフトバンクCEO
です。かねてから、孫正義氏は、アームという企業に関心があり
M&Aを仕掛けようとしていたのですが、株価が高くてなかなか
実現しなかったといいます。しかし、国民投票で離脱派が勝利す
ると、孫CEOは急遽英国に飛んでいます。英国の将来に不安を
感じた投資家が株を一斉に売却し、株価が下がると読んだからで
す。果せるかな、株は一斉に下がり、それに乗じて、ソフトバン
クは、アームの買収に成功したのです。
 それでもその買収金額は、実に240億ポンド(約3兆300
0億円)であり、日本企業による海外企業のM&Aとしては、過
去最大の金額になったのです。孫正義CEOがなぜアームに目を
つけたかについては、改めて述べますが、アームを日本企業が実
質的に保有していることは、非常に意義があります。
 ファーウェイとアームの関係について、既出の渡邊哲也氏は、
次のように述べています。
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 ファーウェイのCPUは、台湾セミコンダクター(TSMC)
で生産されているが、これはアームのコアと設計が基礎になって
いる。このため、CPUの在庫がなくなり次第、生産が停止する
と思われる。これに対して、ファーウェイ側は問題解決可能とし
ているが、アームによれば、設計にアメリカ技術が使われている
ということなので、アメリカが使用許可を与えないかぎり、解決
するのは不可能だろう。      ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
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 ファーウェイとの取引を停止した理由としてアームは、半導体
の設計について米国の技術を多く使っているので、米国の許諾が
ない限り、輸出できないからであるとしています。
 もうひとつファーウェイにとって打撃なのは、アームに続いて
米国に本社を置く企業、シノプシスも、ファーウェイとの取引を
停止したことです。この企業は、集積回路、やや専門的になりま
すが、とくにASIC製造に用いる論理合成ツールのデファクト
スタンダードは、この企業のツールがないと、設計できないので
す。ASICとは「特定用途向け集積回路」のことです。
 OSもCPUも内製化できるとファーウェイは豪語しています
が、アームとシノプシスからの設計支援がストップすると、その
内製化は非常に困難になるはずです。
 アームがどんなに凄い企業かがわかる話があります。2016
年1月のことですが、マイクロソフトは、そのときの次期OSで
ある「ウインドウズ8」を、インテルだけでなく、アーム設計の
CPUでも動作させると発表しています。インテルの強さの源泉
であったウインドウズ対応のCPUの技術独占が、このとき音を
立てて崩れたのです。
 その原因となったのは、アームのCPUを採用したアイフォー
ンやアンドロイド端末が、マイクロソフトの独壇場であったPC
市場を侵食し始めたことにマイクロソフトが危機感を抱いたから
です。つまり、アームのCPUは、必ずPC市場に参入してくる
と考えたのです。そのため、マイクロソフトは、アームとの提携
が不可欠であると判断したといえます。
 既に2016年時点で、アームが設計に関わった半導体は、ス
マホ、タブレット、家電、ゲーム機、自動車など、様々な用途に
使われており、その年間の出荷量は、既にインテルを超えていた
のです。          ──[中国経済の真実/081]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルよりも深刻?英ARMがファーウェイと取引停止
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   5月21日、華為技術(ファーウェイ)任正非CEO(最
  高経営責任者)は中国メディアの取材に応じてこう述べた時
  その翌日に半導体製造の開発・設計の前提がひっくり返ると
  は思っていなかっただろうか。
   BBC(英国放送協会)は22日、英半導体設計大手のA
  RM(アーム)ホールディングスがファーウェイとの取引を
  停止するよう従業員に通知したと報じた。米国がファーウェ
  イを国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして、「エン
  ティティー・リスト」と呼ぶ取引禁止対象リストに載せたこ
  とを受けた措置だ。ARMの技術の一部に米国由来のものが
  あり、規制に抵触すると判断した。ARMは「米政府の全て
  の規制に従うがそれ以上のコメントはない」としているとい
  う。米調査会社のIDCによれば、2019年第1四半期の
  ファーウェイのスマートフォンは世界シェアは米アップルを
  抜き、韓国サムスン電子に続く2位。だが、ARMの技術が
  利用できなくなれば、ファーウェイのスマートフォン事業は
  大きな打撃を受ける可能性が高い。グーグルによるOS(基
  本ソフト)「アンドロイド」の輸出禁止に際しても、「ずっ
  と開発してきた独自OSを提供すればよい」と動じなかった
  ファーウェイだが、ARMの技術だけは当面代替が不可能だ
  とみられるからだ。       https://bit.ly/2Mn1Sob
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アームの買収を発表する孫正義氏.jpg
アームの買収を発表する孫正義氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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