連会社68社をEL(エンティティリスト)に追加すると発表し
ましたが、これによって米国企業は、政府の許可なしに、ファー
ウェイに対して、製品や部品などを売買することはできなくなっ
ています。
重要なのは、この制裁措置は米国だけの問題ではなく、米国の
技術や製品を利用した第三国の企業が、ファーウェイと取り引き
した場合にも、再輸出として制裁が適用されることです。たとえ
ば、米国以外のある企業が、米国の部品を一定割合利用した製品
を開発し、その製品をファーウェイに販売した場合にも、制裁が
及ぶという厳しいものです。
これに違反すると、今度はDPLに掲載されてしまいます。D
PLは「重大違反者リスト」のことで、次の英語の頭文字をとっ
たものです。
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DPL/Denied Persons List
重大違反者リスト
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DPLに掲載されると、米国市場から締め出され、かつ米国や
海外からの輸出もストップされます。つまり、DPLはサッカー
でいうと、イエローカードを2枚もらったのと同じです。
それでも違反を重ねると、最後の手段であるSDNリストに入
れられ、金融制裁を受けることになります。これによって、ドル
送金の禁止や在米資産の凍結が行使され、身動きが取れなくなっ
てしまいます。ファーウェイは、今のところまだSDNリストに
は入っていません。SDNについては、8月13日のEJ第50
66号で説明しています。 https://bit.ly/2ORQzFC
これに素早く対応したのがグーグルです。5月20日、ファー
ウェイの新しいスマホに対し、ハード、ソフト(アンドロイドを
含む)を供給しないと発表したのです。このグーグルの、発表に
よって、世界的に、ファーウェイとの取引きを中止する動きが広
がったのです。ロイターによると、5月22日の時点で、次のよ
うな企業が、ファーウェイとの取引中止を発表しています。
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1.アルファベット
2.ルメンタム・ホールディングス(光学製品)
3.コルボ(半導体)
4.アナログ・デバイシズ(半導体デバイシズ)
5.インファイ(半導体)
6.アーム(半導体設計)
7.シノプシス(半導体設計支援)
8.パナソニック
9.米国半導体メーカー各社
インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコム
各社 ──渡邊哲也著/徳間書店
『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
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こういう動きに対してファーウェイは、表面的には、非常に強
気な対応をしていますが、最も痛手であると思われるのが、半導
体設計の英国の「アーム/ARM」がファーウェイへのライセン
スを停止したことです。アームの正式な名称は、アーム・ホール
ディングス(以下、アーム)といいます。
ところで、アームとはどういう企業かご存知でしょうか。
アームについて話す前に、その前提知識を少し知る必要があり
ます。PCのCPUといえばインテルが有名です。「インテル、
入ってる」のあのCMのインテルです。インテルは、マイクロソ
フトと組んで「ウィンテル」時代を作り上げ、CPUといえばイ
ンテル、OSといえばウインドウズといわれるほどになったのは
周知の事実です。
今でもPCのCPUは、アップルは例外として、インテルか、
その仲間のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)が中心
ですが、スマホやタブレットのCPUは違うのです。スマホやタ
ブレットもPCそのものであり、もちろんCPUが搭載されてい
ますが、そのCPUは、ズバリ、アームといっても過言ではない
のです。そのシェアは実に90%以上に達しています。
それでは、なぜ「アームのCPU」といわないのでしょうか。
それは、CPUの製造は行わず、CPUの設計を行い、いわばそ
の設計図についてのライセンスを供与するという独自のビジネス
モデルによって急成長した企業です。アームのCPUの最大の特
色は、消費電力が少なくて済む設計になって点です。
2010年(12月期)時点でのアーム・ホールディングスの
概要を示しておきます。
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◎英国/アーム・ホールディングスの概要
売上高 ・・・ 4億660万ポンド(約520億円)
経常利益 ・・・ 1億6740ポンド(約214億円)
設立 ・・・ 1990年
所在地 ・・・ 英国ケンブリッジ
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2010年当時のアームの売上高は、わずか日本円で520億
円に過ぎない。それが、2016年の時点では、米アップル、米
グーグル、韓国サムスン電子、ソニー、任天堂など、世界の名だ
たるIT企業にとってアームは必要不可欠な存在であり、ファー
ウェイもアームに大きく依存する事態になっています。
ファーウェイは、ハイシリコンという半導体制作企業を有して
いますが、そのハイシリコンがアームの半導体設計に大きく依存
しているのです。したがって、今回、アームが手を引いたことは
ファーウェイにとって、大打撃であると思われます。
──[中国経済の真実/080]
≪画像および関連情報≫
●追い詰められるファーウェイ/世界読み解くニュースサロン
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中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の任正
非・最高経営責任者(CEO)は2019年1月20日、中
国中央テレビ(CCTV)のインタビューで、ファーウェイ
排除の動きを強めてる米国に対し、こんな発言をしている。
「買わないなら向こうが損するだけだ」
ファーウェイの騒動が18年に大きく動いてから、任正非
CEOやファーウェイは強気の姿勢を崩していない。ただそ
の一方で、ファーウェイはこんな「顔」ものぞかせている。
実は最近、同社はメディアに対する「怪しい」PR活動をし
ていることが暴露されているのだ。
米ワシントン・ポスト紙は3月12日、「ファーウェイ、
“お色気攻勢”も意味ないよ」という記事を掲載。この記事
の筆者であるコラムニストが、「これまで聞いたこともない
ようなPR企業から、広東省深セン市にあるファーウェイ本
社のツアーの招待を受けた」と書いている。さらにコラムニ
ストは、「この申し出によれば、私が同社を訪問し、幹部ら
と面会し、『同社が米国で直面しているさまざまな課題につ
いて、オフレコ(秘密)の議論』をする機会があるという。
ファーウェイはこの視察旅行で全ての費用を支払うつもりだ
とし、さらにこの提案を公にはしないよう求めてきた」と書
く。「そこで私は全てのやりとりと、申し出を却下する旨を
ツイッターで公開した」これは、米国のジャーナリストの感
覚では買収工作にも近い。 https://bit.ly/2HF0Cro
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ARMのチップ