2019年08月23日

●「EUとファーウェイとの親密関係」(EJ第5074号)

 ヨーロッパ(EU)各国の本音は、「安全保障は米国/経済は
中国」と決めています。ムシがいいのです。ドイツなどは、中国
のお陰で経済を立て直しています。メルケル首相は、日本にはほ
とんど来ず、ひたすら中国ばかり行っていたのです。
 もともとヨーロッパ諸国は、携帯電話に関しては中国との結び
つきが強いのです。「GSMA」という携帯電話会社で構成する
団体があります。世界750社以上の携帯電話会社が参加してい
ます。GSMAは、次の言葉の言葉の頭文字をとったものです。
─────────────────────────────
  GSMAとは・・・
  Global System for Mobile communications Association ─────────────────────────────
 「GSM」とは、携帯電話の統一規格であり、GSMを採用し
た国同士では、国境を越えても自分の機種で携帯電話サービスを
そのまま利用できるので便利です。そのため、GSMはヨーロッ
パの統一規格になっています。GSMAは、1995年にロンド
ンで設立されています。
 ちなみに、日本の携帯電話の通信網の場合、GSMには対応し
ていない。このため、通話が国内に限られていて、一般に海外で
の使用ができないのです。したがって、海外で携帯電話を使うに
は、GSM対応の海外専用端末を携帯電話会社からレンタルして
使用することになります。
 GSMAは、毎年2月にはスペインのバルセロナ、6月には中
国の上海で、各社の携帯電話の見本市であるMWCを開催してお
り、年々その規模が拡大しています。今年のMWCは次のように
予定通り行われています。いうまでもないことながら、MWCで
は、ファーウェイがいつも主役なのです。
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 ◎MWC/2019バルセロナ
  2019年2月25日〜2月28日
 ◎MWC/2019上海
  2019年6月26日〜6月28日
          MWC=モバイル・ワールド・コングレス
─────────────────────────────
 今年のMWCは、米中貿易戦争のさなかに行われたのですが、
GSMAは、2月14日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 GSMAは、ヨーロッパで、通信インフラ供給ネットワークの
安全と競争を保護するよう要求する。
 ネットワークのさまざまなセグメント(アクセス、トランスポ
ート、及びコア)への機器の供給を妨げる行為は、ヨーロッパの
事業者、企業、および市民にとってコストを増大させる。ヨーロ
ッパの携帯電話事業者は、すでにヨーロッパ全土の国家安全保障
機関との協力関係を確立しており、重大なリスクは完全に回避可
能なのだ。                 ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 問題はこのような声明がなぜ出たかです。GSMA加盟の各国
としては、既にファーウェイを中心にまとまっており、その安全
性については、自分たちが責任を持って行うので、われわれは、
米国が主張する「ファーウェイ排除」には組みしないというヨー
ロッパとしての考え方を主張しているように思えます。
 しかし、そうはいってもヨーロッパにとって米国は、安全保障
の面で重要な存在であり、正面切って「ファーウェイは排除でき
ない」とはいえないのです。その結果出てきたのが、EUの欧州
委員会による「5Gネットワークのセキュリティに対するEUの
共通取り組み勧告」です。3月26日のことです。
─────────────────────────────
国家レベル ・・・ 各加盟国は、(2019年)6月末までに
 5Gネットワーク・インフラの国家リスク評価を終える。その
 際、各加盟国は国家安全上の理由で、国家の標準やレベルの枠
 組みに適合しない企業を市場から排除する権利を有する。
EUレベル ・・・ 各加盟国は、ENISA(欧州ネットワー
 ク情報セキュリティ庁)のサポートを受けて、相互に情報交換
 を行う。そして(2019年)10月1日までに、関連するリ
 スク評価を終える。EUのネットワークと情報システム協力グ
 ループは、12月末までに、国家及びEUレベルで識別された
 サイバー・セキュリティのリスクに対処するための対策を策定
 する。                  ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 この時点(3月26日)では、EUとしては、5Gを安全保障
にかかわる核心的部分とそうでない部分に分け、核心的な部分に
ついてはファーウェイを排除するが、そうでない部分は受け入れ
るという方針を立てていたのです。トランプ大統領もファーウェ
イの扱いに関しては緩和の可能性に言及しています。
 しかし、トランプ政権の軍事強硬派は、ファーウェイを取引材
料に使おうとするトランプ大統領のやり方には賛成せず、EUか
らファーウェイを完全に排除させる決断をしたのです。その決断
は、5月15日、米商務省がファーウェイとその関連会社をEL
(禁輸リスト)に入れたことです。
 ELに入れられると、その企業に米国から製品やサービスを輸
出するには、商務省産業安全局(BIS)からの個別承認が必要
になりますが、これは「原則非承認」ということになっているの
で、実質上の禁輸措置です。これは、どこかの国を迂回しての輸
出も禁止されるので、ファーウェイにとっては、非常に厳しい制
裁になります。結局のところ、EUも不満ながらも米国の方針に
従わざるを得なくなりつつあります。もし、ヨーロッパ市場も失
うと、ファーウェイにとって大ピンチになります。
              ──[中国経済の真実/073]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプのファーウェイ制裁、日本の選ぶべき道は?
  ───────────────────────────
   中国の大手通信機器ファーウェイが6月17日、アメリカ
  の制裁の影響で、今後2年間の売上高が3兆3000億円減
  るという見通しを明らかにしました。特に、主力のスマート
  フォンの世界販売が今年(2019年)2割減。とりわけ海
  外での販売が4割減と大きく落ち込んでいます。5月15日
  にトランプ大統領が、アメリカの安全保障の脅威となる企業
  の通信技術を、アメリカ企業が利用することを禁止する大統
  領令を出した。また、アメリカの商務省はこの大統領令とは
  別に、対イランの経済制裁に違反したとして、アメリカ企業
  がファーウェイと取引することを事実上禁止する措置をして
  います。
   アメリカ企業はファーウェイにスマホの部品を供給しては
  いけないだけでなく、この措置にはソフトウェアも含まれま
  す。例えば、いまスマホのなかにグーグル・プレイやGメー
  ルがあらかじめ入っていますが、それが利用できなくなる。
  これから新発売されるものは、搭載できなくなる可能性が高
  いのです。アメリカがファーウェイを事実上制裁するのは、
  ファーウェイはスマホだけでなく通信設備も作っています。
  その通信設備にはスパイウェアが組み込まれていて、情報を
  盗んでいると言うのです。バックドアという情報の勝手口の
  ようなものが付いていて、そこから通信内容がダダ漏れして
  中国政府に渡ってしまうというものがアメリカの主張です。
                  https://bit.ly/2Z4WFXU
  ───────────────────────────

MWC/2019上海.jpg
MWC/2019上海
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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