2019年08月20日

●「ZTE叩きはなぜ早期解決したか」(EJ第5071号)

 ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)という企業につい
ては、人によって見方が分かれています。多くのレッテルが貼ら
れているからです。近藤大介氏の近刊書の冒頭に、日本の取引先
3社の人の意見が出ています。
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 ファーウェイの製品は、いまや日本製品よりも品質はいいし、
価格は安いし、おまけにアフターサービスにも優れている。ただ
中国の企業なんですよね・・・。       ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
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 ファーウェイは確かに優れたいい企業ですが、しょせんは中国
企業であり、信用できないという意味です。2012年のことで
すが、米国3大移動通信キャリア、Tモバイルを狙い撃ちにした
機密窃盗事件というものがあったのです。
 Tモバイルは、2012年当時、独自の優れた携帯電話専用自
動計測ロボット「Tappy/タッピィ」 を開発していたのです。そ
れと見られる写真を添付ファイルにしてありますが、このマシン
は、人間の指を真似て、さまざまな画面上のタッチ操作やアプリ
のチェックなどができます。
 Tモバイルでは、このマシンを高度に機密が保たれた実験室に
設置・保管し、数名のエンジニアしか入室できないようにしてい
たのです。ただ、そのなかには、大口の取引先であるファーウェ
イのエンジニアも含まれていました。結果としてそのファーウェ
イのエンジニアが写真を撮るなどして、その技術を盗み出し、自
社用として再開発したのです。
 Tモバイルは、この事件を機にファーウェイとの提携を解消し
2014年、シアトル連邦地裁にファーウェイを相手取って、こ
の窃盗事件を提訴し、民事訴訟では勝訴しています。こういう、
れっきとした事実があります。今回米政府は、これを刑事犯罪と
して裁こうとしています。
 そして、2019年1月28日、ファーウェイ、ファーウェイ
米国法人、スカイ・コムテック(星通技術)および、孟晩舟副会
長兼CFOをアメリカ連邦大陪審が起訴しています。
 ところで、よくわからないのは、米国の捜査当局が、なぜ、孟
晩舟容疑者に焦点を絞って逮捕し、起訴したかということです。
これは、2018年の米国商務省によるZTE叩きと関係がある
といわれています。
 2018年4月16日のことです。米商務省は、世界4位で、
中国では、ファーウェイに次ぐ第2位の通信機器メーカーである
ZTE(中興通訊)に対し、米国の法律に反し、イランや北朝鮮
に対して製品を輸出しているとして、全米企業に対して、ZTE
との取引を禁じたのです。
 ZTEにとってこれは青天の霹靂です。なぜなら、ZTEは、
部品の30%を米国に依存しており、米国企業と取引を禁止され
ると、製品が作れなくなってしまうからです。中国にとってもこ
れは大問題です。ZTEは、深せん市政府が経営する国有企業で
あり、2017年度売上高は、1088億元(約1兆7千億円)
従業員約9万人を超える大企業だからです。そのため翌日17日
には、新聞紙上に「ZTE倒産説」が出るほど、ビックなニュー
スになったのです。
 しかし、これは、意外なほどあっさりと決着してしまいます。
ロス商務長官は、2018年6月7日、次の発表を行い、13日
にZTEへの制裁を解除したからです。
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   ZTEに過去最高の罰金を科して、制裁を解除する
                 ──ロス米商務長官
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 もちろん条件付きです。罰金は10億ドル、預託金4億ドル、
経営陣の刷新、10年間の監視対象などです。しかし、これにつ
いては、比較的監視はゆるやかで、資金については直ちに中国の
国家開発銀行と中国銀行からの緊急融資を受けて、ZTEは倒産
を免れたのです。
 問題は、なぜ、スピード決着したかです。その理由がメディア
で報じられることはありませんが、近藤大介氏は、次の3つの理
由が考えられるといっています。
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 1.「通商強硬派」の代表格であるトランプ大統領の関心が
   薄かったことである。
 2.「ZTE叩き」はその7倍の規模を誇るファーウェイ叩
   きの予行演習である。
 3.ZTEが秘密裡に、米国商務省が提案する「司法取引」
   に応じたからである。
                ──近藤大介著の前掲書より
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 近藤大介氏によると、問題が早く解決したのは「3」であると
いうのです。あくまで目的は「ファーウェイ潰し」であり、米国
が欲しかったのは、イランとの不正取引に関するファーウェイの
内部情報です。ZTEとファーウェイは、創業時期も1980年
代の半ばで同じであり、本社も同じ深せんにあるライバル企業で
あって、これまでさまざまな面で確執があったのです。
 技術面での競合、エンジニアの引き抜き、仕入先、顧客の奪い
合いなど、けっして仲の良い企業でなかったことは確かです。し
たがって、秘密の情報を聞き出す相手としてZTEは最適な存在
だったのです。会社が潰れるかどうかの瀬戸際であり、しかも競
合企業にダメージを与えられるので、ZTEが司法取引に応じた
としても、けっして不思議ではないのです。
 もしかすると、米国は、最初からファーウェイを潰す目的で、
計算のうえ、ZTEを叩いた可能性もあります。いずれにしても
米当局は、これによって、孟晩舟のイランに係る重要情報を入手
したのです。        ──[中国経済の真実/070]

≪画像および関連情報≫
 ●米国のZTE制裁がもたらす屈辱/WSJ
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   中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)が米国から「欺
  瞞、虚偽の供述と再三にわたる米国の法律違反」と非難され
  「ペテン師」とまで呼ばれている。米商務省の公式サイトに
  公表された声明文は、その語彙が容赦なきものであるのみな
  らず、いたるところに辛辣な皮肉が隠すこともなく使用され
  「愛国」的な中国人を強く刺激した。
   ZTE事件は中国人に大きな心理的衝撃をもたらした一方
  で、中国の専門家が一年前にZTEの内幕を暴いた文章もイ
  ンターネットでは広く読まれるなど、中国世論も米国への反
  発一色ではない。
   2018年4月16日、米国商務部は米国企業にZTEと
  の取引を禁じると発表した。ZTEが過去にイランなどへ通
  信機器を輸出していたことなどが理由だった。4月20日、
  ZTEの総裁は訴えるような口調で、「この禁止令によって
  中興はショック状態に陥っている」と語った。このニュース
  は公共の場でも、ソーシャルメディアでも、極めて大きな論
  議を引き起こした。
   中国ではこの事件が一企業の得失を超え、官民の情緒と神
  経を逆なでし、あらゆる人が熱心に討論に参加するような事
  態を引き起こしている。それは、ZTE事件が突然、これま
  で人々が理解していなかった「中国と米国の実力の差」とい
  う真実を明らかにし、中国の弱さやその潜在的な危険をみん
  なの目前で暴いてみせたからだ。 https://bit.ly/2ZaATRS
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Tモバイル/携帯電話専用自動検測ロボット.jpg
Tモバイル/携帯電話専用自動検測ロボット
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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