で発売をはじめています。既に1000万台を超える予約が入っ
ており、出足はきわめて好調とのことです。しかし、5G用の通
信網の普及はまだ十分ではなく、中国の主要都市でも2019年
いっぱいかかる予定です。日本では、5Gの普及はさらに遅れ、
2020年以降になる見通しです。
ところで、ファーウェイは今後どうなるのでしょうか。
2018年8月13日、トランプ大統領は、788ページに及
ぶ次の法律文書に署名しています。この月に81歳で亡くなった
ジョン・マケイン上院議員の名が冠せられています。
─────────────────────────────
◎国防権限法
H.R.5515 John S.McCain National Defence Authorization
Act for Fiscal Year 2019
─────────────────────────────
この法律の第889条に「特定の電気通信及びビデオ監視サー
ビスもしくは機器に関する禁止」というタイトルの付いている部
分があります。この部分の近藤大介氏の要約を次に示します。
─────────────────────────────
@2019年8月13日以降、「中国の指定5社」をアメリ
カ公的機関の調達から排除する。
A2020年8月13日以降、「中国の指定5社」と取引が
あるアメリカ及び世界の企業も、アメリカの公的機関の調
達から排除する。 ──近藤大介著
『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
これはとてつもない厳しい条文です。中国の指定5社を米国の
公的機関の調達から排除することはわかりますが、その1年後に
は、その中国の指定5社と取引のある米国及び世界の企業も米国
の公的機関の調達から排除するといっているからです。
ここでいう「中国の指定5社」とは、次のメーカーです。
─────────────────────────────
@ファーウェイ(華為技術)
・世界最大の通信機器メーカー
AZTE(中興通訊)
・世界4位(中国2位)の通信機器メーカー
Bハイテラ(海能達)
・世界最大の無線メーカー
Cハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)
・世界最大の防犯カメラメーカー
Dダーファ(浙江大華技術)
・世界2位の防犯カメラメーカー
──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
この「中国の指定5社」のなかで、米国が最も危険であるとし
ているのがファーウェイです。これに対して、中国は「坊主憎け
りゃ袈裟まで憎い」ということわざと一緒で、罪のない中国の一
企業に米国は不当な弾圧を加えているとして猛反発です。
しかし、ファーウェイに関しては、オバマ政権時代から米国の
CIAが執念深く追跡しており、今般の孟晩舟氏の逮捕は、米政
府としては十分な自信を持って行っています。しかし、そういう
米国の危機感は、とくに日本では、十分理解されているとは思え
ないのです。「米国がファーウェイを使うなというから、使わな
いことにする」というレベルなのです。先にご紹介した中国の体
制内で大胆な発言をすることで知られる人民大学の向松祚教授は
米中の貿易戦争の本質をずばり衝いています。
─────────────────────────────
これは貿易戦争でも経済戦争でもなくて、米中の価値観の深
刻な衝突である。 ──人民大学教授の向松祚氏
─────────────────────────────
このことをもっと分かりやすく、具体的に述べているのは、あ
の投資家、ショージ・ソロス氏です。ソロス氏といえば、中国企
業に多くの出資をして中国市場で大儲けし、その経済を後押しし
てきたような人物ですが、それでも西側民主主義の良心の部分で
は、中国は許せないといっています。中国に詳しい福島香織氏は
ソロス氏の言葉を次のように紹介しています。
─────────────────────────────
中国は世界唯一の独裁国家ではないが、最も豊かで、最強の最
先端技術をもつ政権であり、中国の人工知能や機械学習などは監
督管理ツールに使われている。習近平の指導下で、中国は顔認識
技術を含む世界最先端のシステムを確立し、国民の識別にこれを
利用し、政権に多大な脅威を与えると思われる個人をはじき出し
一党独裁国家の中国において、至高無上の統治権威を打ち建てる
というのが習近平の野望だ。中国は先進的な監視監督科学技術を
用いることで、習近平は開放社会の最も危険な敵となった。
https://bit.ly/31HaNU7 ─────────────────────────────
中国は、一帯一路計画を通じて、中華的価値観に基づいた中華
秩序圏を中国の外側に広げようとしていますが、その中華秩序圏
の拡大、確立の鍵を握るのがファーウェイなどに代表されるテク
ノロジーの力です。本来、人類の未来の幸福のために使われるべ
き科学技術を、こともあろうに、人権弾圧、民族弾圧のために使
うことは、ペンス副大統領などに代表される西側社会のエリート
や知識階級を自任する人たちにとっては看過することができない
ことであり、そのもの凄い怒りが、ファーウェイという中国の企
業に向っているのです。
まして、ファーウェイの持つ高度な技術が、自らが努力して開
発したものというよりも、その大半が不正な手段で盗み取ったも
のであることを知るとき、それは到底許せるものでないことはよ
く理解できると思います。 ──[中国経済の真実/069]
≪画像および関連情報≫
●ファーウェイ幹部 今後どうなる? 板挟みのカナダ
───────────────────────────
【ニューヨーク=上塚真由】カナダは、通信機器大手、華為
技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(C
FO)=保釈中=の身柄引き渡しをめぐり、米中の間で難し
いかじ取りを迫られている。引き渡しの可否をめぐる審理は
長期化するとみられ、カナダに対し「報復措置」を取り圧力
を強める中国との関係改善も見通せない。
ロイター通信によると、孟被告は1月29日に保釈条件の
変更を協議するため、西部ブリティッシュコロンビア州の裁
判所に出廷するという。裁判所は、2月6日にも孟被告に出
廷を求めている。
米国からの正式要請を受け、カナダの法相は30日以内に
手続きを進めるか否かを判断。認められれば裁判所で審理が
始まり、数週間から数カ月続くとみられる。裁判所が引き渡
しを認める決定を下した場合、再度、法相が可否を判断し、
承認されれば孟被告は米国に引き渡される。ただ、孟被告は
裁判所や法相の判断に異議を唱えることが可能で「結論が出
るには数年かかる」(カナダメディア)との観測もある。
米中の板挟みにあるカナダは対応に苦慮。トルドー首相は
23日の会見で「法的な手続きに従って決める」と述べ政治
的な関与を否定したが、米国とは機密情報を共有する5カ国
の協定を結んでおり、孟被告の引き渡しを認めなければ、安
全保障施策の障害になりかねない。26日には、身柄引き渡
しをめぐり中国寄りの発言をしたマッカラム駐中国大使の更
迭を発表した。 https://bit.ly/2NdBlrR
───────────────────────────
どうなる!ファーウェイ孟晩舟CFO