2019年08月13日

●「華為技術/SDNリスト入り直前」(EJ第5066号)

 今のところ、米中貿易協議は、9月初旬に行われることになっ
ています。しかし、9日、トランプ大統領は「中国と合意する準
備ができていない」として、その開催に消極的な姿勢を示してい
ます。人民元安を容認しているとして中国を為替操作国に指定し
たばかりであり、いまやっても、来年の大統領選挙に有利な成果
は得られないと考えているのです。
 これによって窮地に陥るのはファーウェイです。トランプ大統
領は9月の会談では、安全保障に関わりのない部分では、ファー
ウェイへの制裁を一部緩和するといっていたからです。そのため
中国政府は、9月の会談において、ファーウェイについての何ら
かの妥協点を探ろうとしていたのです。
 現在、ファーウェイは、企業として非常に危ない状況にあると
いえます。なぜかというと、IEEPA(国際緊急経済権限法)
が発動され、ファーウェイは、関連会社69社ごと、EL(エン
ティティ・リスト)に入れられているからです。ELに入れられ
ると、米国企業がそれらの企業に対して、技術や製品を輸出する
さい、BIS(商務省安全保障局)の許可が必要になりますが、
許可になることはまずないのです。事実上禁止です。
 ところで、IEEPAは、米国の安全保障・外交政策・経済に
対する異例かつ重大な脅威が起きたときに、非常事態宣言が行わ
れて発動されるものです。トランプ大統領は、表向きは、メキシ
コの壁の予算に絡んで、国家非常事態宣言を出しています。20
19年5月16日のことです。これは、実はメキシコの壁の件で
はなく、中国をさらに絞め上げるためのものと考えられます。
 IEEPAは、商務省だけでなく、財務省と国家安全保障局の
3つにまたがる法律です。現在、米国政府はタイミングを図って
いますが、やがて財務省が動くはずです。財務省の外国資産管理
室(OFAC)が、ファーウェイとその関連会社を金融制裁の対
象として、「SDNリスト」に掲載する可能性があります。
 もし、SDNリストに掲載されると、ファーウェイは、米国の
銀行との取引が一切禁止されます。具体的にいうと、このリスト
に掲載されると、ドル建ての国際送金ができなくなり、ドルでの
決済もできなくなります。ファーウェイのような世界中でビジネ
スを展開するグローバル企業にとってこれは致命的です。また、
国際的なマネーロンダリングにもこれで対応します。テロ組織を
撲滅するためのものです。
 このSDNリストには、2011年7月に、日本の「YAKU
ZA」の名称で、「山口組」が入れられています。これについて
経済評論家の渡邊哲也氏は、ネットで次のように書いています。
このような話は、ニュースでは取り上げないので、ほとんどの人
は聞いたことはないはずです。
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 (2011年以降)米国政府は、徐々にその対象を拡大してい
った。2012年、六代目山口組と組長である篠田建市(通称司
忍)など幹部2名をSDNリストにいれ、2013年にこれを拡
大、そして、2015年4月21日、米国は六代目山口組組長の
出身母体である山口組弘道会と竹内照明会長をSDNリストに入
れた。つまり、六代目山口組とその幹部はテロ組織とテロリスト
扱いになったわけである。ちなみに「住吉会」と「稲川会」もこ
のリストに掲載されている。つまり、この段階で六代目山口組は
国際的にはテロ組織であり、幹部は、テロの主導者と同じ扱いに
なったわけである。これを受けて、日本政府としては早急な対応
を行うことが急務になった。米国のSDNリスト掲載にされるこ
とは国際テロリストの指定と同義であり、これを国内で放置して
おけば、国際的批難を浴びるからである。
                  https://bit.ly/2KqrUUc ─────────────────────────────
 1925年頃のことですが、米国の暗黒街の顔役といわれるア
ル・カポネという人物がいたのです。米国の捜査当局は、何とか
してアル・カポネを捕まえようとしますが、どうしてもそれはで
きなかったのです。
 なぜなら、関係者が誰もアル・カポネが犯罪人であることを証
言しなかったからです。下手に証言すると、確実に命にかかわる
からです。しかし、結果として、アル・カポネを追い詰めたのは
FBIでも警察でもなく、税務当局だったのです。米国の、とく
に安全保障に関する法律は、とても複雑になっていますが、こう
いうことから学んでいるのです。
 ところで、SDNリストの「SDN」とは何でしょうか。SD
Nの意味を明らかにしておきます。
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  ◎SDNとは・・・
  Specially Designated Nationals and blocked Persons ─────────────────────────────
 中国の特別行政区であるマカオにバンコ・デルタ・アジア(B
DA)という中規模銀行があります。北朝鮮の米ドル札偽造疑惑
を追及してきた米財務省は、2005年9月、BDAをマネー・
ロンダリング(資金洗浄)の疑いのある金融機関としてSDNリ
ストに入れ、2007年に米国政府は、米国金融機関と同銀行の
取引を禁止したのです。これによって、BDAは、ドル決済がで
きなくなり、破綻危機に追い込まれています。
 つまり、IEEPA法のメインは金融制裁なのです。現時点で
ファーウェイは、エンティティリスト(EL)には入っているも
のの、SDNリストには入っていません。もし、SDNリストに
入れられると、ファーウェイと取引している米国企業に、資金が
入ってこなくなり、連鎖倒産が起きる恐れがあります。そのため
時間稼ぎをしているフシがあります。つまり、同盟国に対し、警
告のメッセージを送っているのです。「ファーウェイを使うな」
「ファーウェイから逃げろ」というサインです。9月の米中会談
がない場合、ファーウェイのSDNリスト入りは確実の情勢にあ
ります。          ──[中国経済の真実/065]

≪画像および関連情報≫
 ●米中、対北朝鮮の金融封鎖で足並み/日本経済新聞
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  【ニューヨーク=永沢毅、北京=原田逸策】トランプ米政権は
  2017年9月21日、金融制裁を軸にした北朝鮮への独自
  の追加制裁に踏み切った。国連を超えた制裁に慎重だった中
  国も事実上、金融制裁に動き出した。米中は原油や石油製品
  の制限に加え、ドルや人民元の金融システムからも北朝鮮を
  排除して圧力をかける。
   「犯罪的な『ならず者国家』を、他国が金融支援するのは
  受け入れがたい」。トランプ大統領は21日、追加制裁の大
  統領令に署名しこう語った。「中国人民銀行(中央銀行)が
  中国の銀行に北朝鮮取引の即時停止を命じた」とも述べた。
  従来は北朝鮮の大量破壊兵器の開発につながると疑われる企
  業や個人が制裁対象だった。今回は幅広い分野で北朝鮮と取
  引する企業に網を広げた。金融制裁も北朝鮮との取引がある
  だけで対象となり、条件は厳しい。
   ペンシルベニア州立大教授で元米国務省アドバイザーのジ
  ョセフ・デトマス氏は「制裁の選択肢の中で最終段階にきて
  おり、軍事挑発の前兆になる」と指摘する。北朝鮮と関係の
  ある第三国の銀行などを対象とした制裁は「セカンダリー・
  サンクション(二次的制裁)」と呼ばれる。米国はブッシュ
  政権の2005年、マカオの銀行、バンコ・デルタ・アジア
  を資金洗浄の懸念先に指定。米国内の金融機関にBDAとの
  取引も禁じた。BDAは北朝鮮関連の口座を凍結し、主要国
  の金融機関も北朝鮮との取引に慎重になった。
               https://s.nikkei.com/2MVMcqf
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アル・カポネ/暗黒街の顔役.jpg
アル・カポネ/暗黒街の顔役
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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