閣議決定しています。いわゆる韓国をホワイト国から外す安倍政
権の決断です。これによって8月28日以降は、韓国向け輸出の
さいには、ほぼすべての品目で経産省は個別審査を求める可能性
があります。
これに先立つ1日、トランプ米政権は、米国が輸入する3千億
ドル分の中国製品に、9月1日から追加関税10%を上乗せする
と表明しています。これによって、米国が中国から輸入するほぼ
すべての中国製品に高率の関税がかかることになります。なお、
この10%の関税は25%になる可能性もあるといっています。
一方、北朝鮮は2日、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を
発射しています。この一週間で3回を数えていますが、トランプ
大統領は「小さいヤツはいい」と問題視していません。メディア
は、北朝鮮の短距離ミサイル発射は、5日〜20日にかけて予定
されている米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーデ
ィアン」への反発であると伝えています。今回、規模については
従来より縮小されています。
一見すると、これら3つの出来事は、バラバラであり、何の関
係もないように見えます。しかし、ていねいに分析すると、3つ
は密接に関係しているのです。米国をはじめとする先進国が一番
恐れているのは、世界中に核が拡散されることです。それを一番
やりそうな国は北朝鮮です。
北朝鮮は、核兵器を作る技術もそれを搭載してミサイルを飛ば
す技術も保有しつつある非常に危険な国です。この北朝鮮とイラ
ンは深いつながりがあります。イランは、1985年頃から北朝
鮮にミサイル開発の技術支援を受け、中距離弾道ミサイル「シャ
ハブ3」を開発しています。これは、北朝鮮の準中距離弾道ミサ
イル「ノドン」がモデルになっているといわれています。
北朝鮮とイランは、2015年には技術者交換を行い、北朝鮮
が2013年2月に行った3度目の核実験には、イランの技術者
も立ち合い、視察を行っています。北朝鮮とイランはそういう仲
なのです。彼らが目指しているのは、イランの「シャハブ3」の
先端部分を核爆弾搭載に適した形状に改良すべく技術を交換しよ
うとしています。イランは、北朝鮮からバルブなど、ミサイル関
連部品を輸入し、その見返りに北朝鮮がのどから手が出るほど欲
しい原油を供給しています。
トランプ政権が発足した2017年はじめの時点では、米国は
北朝鮮の金正恩委員長にも、イランの最高指導者ハメネイ師にも
会えない状態でいたのです。この「会えない」状態というのは、
最もリスクがある──とトランプ氏は考えています。ある人物に
ついて、どのように豊富な客観的情報があっても、実際に「会っ
て話す」ぐらい、重要な情報はないと、ビジネスの世界で百戦練
磨のトランプ氏はいうのです。
だから、金正恩委員長には、トランプ氏は周囲の人が驚くほど
積極的に会ったし、その後、合計3回も会っています。トランプ
氏としては、会って話した結果、金正恩委員長がどういう人物か
よくわかり、彼なら何とかコントロールできると考えたものと思
われます。
しかし、ハメネイ師には、トランプ大統領は、どうしても会う
ことができないのです。そこで会うことができるとする盟友の安
倍首相に、会ってくれと頼んだわけです。ハメネイ師との会談に
ついて安倍首相は、電話で詳しく伝えています。このように、何
かコトを進めようとするとき、その中心人物に会うことにトラン
プ氏は強い意欲を燃やしているのです。
これについて、元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者
の片山杜秀氏は、『平成史』と『現代に生きるファシズム』とい
う2冊の対談書籍を立て続けに出版していますが、このなかで、
次の興味あるやり取りがあります。
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片山:イランは神権政治の国です。大統領は、日本と同じレベル
の民主的な選挙で選びますが、大統領は軍事でも、立法でも、
司法でも、行政でも最終的な権限を持っていません。すべてを
司るのがハメネイ師だということですね。
佐藤:その通りです。ハメネイ師が出てきたことは、アメリカか
らしてもびっくりだった。ハメネイ師が何を考えているかを、
彼らは一番知りたいんです。それで、結果はどうだったのか。
イラン公式の宣伝サイト「Pars Today」が安倍―ハメネイ会談
の数時間後に伝えた内容によれば、ハメネイ師は、トランプは
交渉に値しない、メッセージは返すつもりはない、という厳し
い姿勢だったそうです。一方で、同サイトは、ハメネイ師は、
オバマも含めてアメリカの指導者で信頼できる人間などほとん
どいないとも語ったと報じています。オバマも信用できない。
それと同じレベルでトランプも信用できない。ということは、
オバマとトランプは同じレベルです。オバマと取引ができたの
なら、トランプとも取引できるという意味になるんです。
http://exci.to/2YHGMFL ─────────────────────────────
6月13日、奇しくも安倍首相がハメネイ師に会った日、ホル
ムズ海峡付近で、日本のタンカーなど2隻が攻撃され、6月20
日には、イラン革命防衛隊が、やはりホルムズ海峡付近で、米軍
無人機を撃墜しています。このとき、トランプ大統領は、イラン
に対する報復攻撃を命令し、作戦実施10分前に中止を命令して
います。重要なことは、米国はまだ核を持っていないイランに対
しては、ことによっては攻撃する可能性があるということです。
その場合、米国は「二正面作戦」を避けるため、G20での習
近平主席との会談では貿易戦争は一時休戦とし、6月末の訪韓時
に電撃的に金委員長とも板門店で会って、イランへの攻撃のため
の布石を打ったのです。トランプ氏としては、一時的にでも北朝
鮮とイランとの関係を遮断したかったものと思われます。
──[中国経済の真実/060]
≪画像および関連情報≫
●日本のタンカーへの攻撃の犯人は誰か
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佐藤:起きている事態はとても深刻なものです。ホルムズ海
峡の国際航路帯は、イランの領海内には設けられていませ
ん。アラブ首長国連邦とオマーンの領海にあります。オマ
ーンは、日本ではよく知られていない国ですがもともとは
船乗り、シンドバッドの国です。その海洋国オマーンの領
海で、今回の事件は起きました。領海内で、軍事活動を行
うということは、宣戦布告を意味します。もしどこかの国
がやったとしたら、事実上、戦争に限りなく近いことを意
味します。ここでもし、イランが戦争する意思があるとア
メリカが見做していたら、もうトランプは攻撃していたは
ずです。そうなっていないのはなぜか。ハメネイ師が安倍
首相に発したメッセージが歯止めになったからでしょう。
片山:どうもイランがやろうとしていると思えない、とトラ
ンプは思ったということですね。安倍―ハメネイ会談は、
とても重要な意味を持っていたわけですね。
佐藤:その通りです。今回の「犯人」には4つの可能性があ
ります。1つ目は、イランのハメネイ師が命じたというも
の。2つ目は、ハメネイ師は関知していないけど、ハメネ
イ師配下の軍隊=イスラム革命防衛隊が暴発したというも
の。3つ目は、アメリカ謀略説です。それぞれの立場から
もっともらしく語られていますが、どれも露見した際のリ
スクが高すぎます。そうなると蓋然性が高いのが4つ目。
内戦下のイエメンの、フーシ派がやったというシナリオで
す。 http://exci.to/2yzrggz
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安倍首相VSハメネイ師