起きるであろう金融危機の可能性について、深刻な懸念が拡大し
ています。ヨーロッパのバンカーや金融アナリストたちは関係国
のGDP、輸出統計、外貨準備などを精密に分析し、デフォルト
の可能性のある国を慎重に探っています。宮崎正弘氏によると、
次の8ヶ国がデフォルトの可能性が高いといわれています。
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モンゴル キルギス
モンテネグロ モルディブ
パキスタン ジブチ
ラオス タジキスタン
──宮崎正弘著/『世界から追い出され壊れ始めた中国/
各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
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これら8つの国は、いずれも中国が最大の債権国であり、もし
ひとつでもデフォルトが宣言されると、中国に甚大な被害が及ぶ
ことになります。これに加えて、既にIMFに支援を求めている
か、求める可能性の高い国として、ベネズエラ、ニカラグア、コ
ンゴ共和国、ジンバブエの4ヶ国が上げられていますが、本当に
IMF管理になると、これらも資金の貸し手はダントツに中国で
あるので、最も被害を受けます。IMFは資金の貸し手に対し、
80%前後の債権放棄を迫るからです。
もうひとつ中国にとって頭の痛い問題は人民元安の進行です。
中国にとって為替の死守すべきラインとは次の通りです。
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◎中国にとって為替の死守線
1ドル = 7人民元
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中国は、為替のデットラインを「1ドル=7元」に設定してい
ます。これ以上元安が進むと、輸出には有利な環境にはなるもの
の、資本が大量に流出してしまう恐れがあり、どうしても7元で
食い止める必要があるからです。
米中貿易戦争が5月10日の第3幕(3000億ドル分に25
%の関税追加)に入ったとき、ドル高/元安がじりじり進行し、
6月10日には、「1ドル=6・9625元」という7%ライン
ぎりぎりのドル高/元安水準になっています。
それが、6月29日のG20サミット大阪での米中首脳会談に
より、米中通商協議が再開されることが決まると、為替は「1ド
ル=6・8168元」と、5月10日以来、8週間ぶりのドル安
/元高の水準に戻っています。
今後の人民元の情勢について、植野大作三菱UFJモルガン・
スタンレー証券/チーフ為替ストラテジストは、次のようにコメ
ントしています。
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このまま人民元がしっかりと下げ止まるかどうかは未知数だ。
米国と中国が不毛な輸入増税合戦を停止して話し合いのテーブル
に戻ることになったのは朗報だが、さめた目線で評価すれば、協
議自体は「中断する前の状態」に戻ったに過ぎない。これまで米
中の間で繰り広げられた通商交渉は、単なる貿易摩擦の範疇を超
え、知的財産権の保護や国家安全保障の問題なども複雑に絡んだ
次世代技術の制空権争いの様相を呈している。
双方とも「譲れぬ一線」があるとみられ、たとえ協議が再開さ
れても早期決着のハッピーエンドは期待しにくい。2020年の
米大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領が、景気悪化のリスク
を冒してまで泥沼の関税合戦を再開するとは思えないが、これま
で貫いてきた対中強硬姿勢には国内世論の一定の支持がある。交
渉の長期化は避けられないだろう。 ──植野大作氏
https://bit.ly/2Zi1UPY ─────────────────────────────
現在、中国は異常な外貨持ち出し制限をかけています。宮崎正
弘氏によると、元中国人民銀行の幹部だった人が、海外留学中の
子供に送金しようとして銀行に行くと、1回の送金限度は、3千
ドルまでと断られたという。かつて海外留学生ヘの送金は、1回
3万ドルまで可能だったはずだが、現在は3千ドルに制限されて
いるというのです。今年の6月の話です。
北京駐在の日本人のビジネスパーソンの話ですが、帰国するこ
とになって、銀行に行くと、外国人については「1人当たり1年
間で5万ドルまで」といわれたといいます。このビジネスパーソ
ンは、仕方がないので、1年後わざわざ預金を下ろしに北京まで
行ったというのです。
中国は外貨流出に神経をとがらせています。しかし、公的に外
貨準備は世界一位の「3兆ドル」といっている中国です。なぜそ
んなに外貨流出に慎重になるのでしょうか。
実は、現在の中国の外貨準備はまだ世界1位ですが、「3兆ド
ル」ではありません。大幅に減っています。諸説があるのですが
宮崎正弘氏によると、最新の数字は次の通りです。
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◎米国債保有額/2019年5月12日現在
中国 ・・・・ 1兆1230億ドル
日本 ・・・・ 1兆0420億ドル
──宮崎正弘著の前掲書より
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中国は、フェースブックが提唱した新暗号資産「リブラ」を警
戒しています。ビットコインのときも多くの中国人が使い、中国
政府は規制を強化しましたが、今回も警戒しています。新暗号資
産「リブラ」については、EJのテーマとして取り上げるつもり
ですが、これが果して定着するかどうかは疑問です。要するに、
中国人は、自国の通貨「人民元」を信用していないのです。だか
ら他の通貨を持とうとして必死になるのです。
──[中国経済の真実/059]
≪画像および関連情報≫
●動かないドル円相場の行方と人民元の関係/田渕直也氏
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たびたぞ触れてきたが、昨年来、ドル円為替相場の変動率
は記録的な低水準となっている。昨年末以降、米国金利が急
低下しているにもかかわらず、やはりドル円レートはほとん
ど動かない。為替相場は、少なくとも短期的には2ヶ国間の
金利差に連動するのが普通であり、ドル円相場の最近の動向
はこのセオリーに反する異常事態と言ってもよい。まずは、
この背景について改めて整理してみよう。
昨年2018年は、米国金利が大きく上昇し、セオリーに
従えばドル高円安になるべき一年だった。ところが、ドル円
レートは狭いレンジで上下するだけで、大きくは動かなかっ
た。今、ドル金利が低下しているのに円高が進まないのは、
その反動とも受け取れる。
では、昨年米国金利が上昇したときにドル買いが強まらな
かったのはなぜか。金利の上昇が米国資産市場の価格変動リ
スクを高め、その結果、日本から米国への投資の流れが勢い
をなくしたことが大きな要因になったと考えられる。一方、
今の金利低下局面では、それと逆に、米国資産市場が安定を
取り戻し、それにつれて日本から米国資産への投資の流れが
再開しているとみられるのである。
こうした見方は、ドル円レートと、米国株式市場の変動率
(VIX指数)との連動性が高まっていることからもうかが
える。VIX指数が上昇すると円が買われ(リスクオフの円
買い)、VIX指数が落ち着くと緩やかなドル高が再開する
というパターンが続いているのだ。その結果、VIX低下時
の緩やかなドル高とVIX上昇時の短期的円高が交互し、結
果として比較的狭いレンジ内の取引に終始しているというわ
けだ。 https://bit.ly/2YztNll
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米ドル/人民元/2012年〜2019年