2019年08月01日

●「包商銀行国有化は金融危機の前兆」(EJ第5059号)

 「一帯一路」の話から、中国の経済の話に戻します。大きな事
件が起きるときは必ず前兆というものがあります。これに関して
「ベア・スターンズ」という米国の大手投資銀行(証券会社)の
名前を覚えているでしょうか。
 べア・スターンズは、ゴールドマン・サックス、モルガン・ス
タンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズに次ぐ米国第5
位の大手投資銀行のひとつです。このべア・スターンズが、20
07年2月に倒産の危機に瀕したのです。サブプライムローンが
原因でした。
 このベア・スターンズを米国政府は救済したのです。なぜか。
時のポールソン米財務長官の判断だったといわれます。これがモ
ラルハザードの始りで、市場に一気に楽観論が広まります。それ
から1年後に、リーマンブラザーズが同じ原因で危機に陥ります
が、こちらは救済されなかったのです。そして、いわゆるリーマ
ン・ショックが起きることになります。
 なぜ、ベア・スターンズは救済されたのに、リーマンブラザー
ズは救済されなかったのでしょうか。これについて私は、過去に
EJで書いています。興味があったら、読んでください。
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    2008年9月26日付、EJ第2418号
    「救済されたベアとされなかったリーマン」
     テーマ:「サブプライム不況と日本経済」
                  https://bit.ly/2YwaaPj ─────────────────────────────
 一転して、2019年5月24日、「包商銀行」という中国の
地方銀行が倒産の危機に瀕します。内蒙古省を拠点とする地方銀
行ですが、この銀行を、中国銀行保険監督管理委員会(CBIR
C)が、89%の株式を取得して、公的に管理し、元本の30%
削減という措置をとります。つまり、国有化したわけですが、こ
れらの措置を中国当局は電光石火やったのです。こんなことは過
去20年間なかったことで、不安が広がります。
 中国当局は、なぜこのような地方銀行を電光石火救済したので
しょうか。包商銀行は、608億元の資産と270億元の預金が
あり、不良債権率は1・48%と報告されています。なぜ、それ
が経営危機に陥ったのか、はっきりしていないのです。
 米国のベア・スターンズの例にならって、これを中国の金融危
機の前兆とみる専門家もいます。何が何でも隠したかったことが
あると思われます。包商銀行の国家管理について、中国人民銀行
(中央銀行)は、わざわざ次のコメントを出しています。金融不
安の打ち消しを図ったものと思われます。
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 包商銀行の国家管理は、単独の案件であり、金融不安は何も
 ない。          ──中国人民銀行(中央銀行)
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 中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏の最近刊書によると、包商銀
行は、明天証券グループの隠れ蓑の役割を果たしていた銀行であ
るとする次の記述があります。
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 じつは同行(包商銀行)は、肖建華が主導した投機集団、明夫
証券グループの隠れ蓑であった。インサイダー取引の前衛部隊役
を担い、217億元を投下してシャドーバンキング(影の銀行)
機能をやらされていたうえ、肖建華のATMとして駆使され、投
機資金に回されていたことが判明した。この包商銀行の国家管理
事件によって、中国の金融危機が表面化した。上海、北京を避け
て内蒙古省の銀行を活用したのも、中央政界とは無縁のバンカー
だったから、利用価値があったのだろう。   ──宮崎正弘著
           『世界から追い出され壊れ始めた中国/
     各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
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 肖建華とは何者でしょうか。
 郭文貴という人がいます。この人の名前は中国の証券業界で知
られています。郭文貴氏は、江沢民時代から証券界の黒幕として
香港を根城に、一部の中国共産党幹部と組んで、インサイダー取
引を大々的に展開したのです。江沢民派閥に属する人物です。
 ところが、習近平政権になると、江沢民派閥の不正蓄財にメス
が入り、次々と江沢民派閥の有力者が逮捕されるに及んで、身の
危険を感じて、郭文貴氏は米国に逃げ込んだのです。しかし、米
国にこっそり隠れているわけではなく、ニューヨークの豪邸に住
み、テレビやネットの媒体を駆使して、習近平一派の不正蓄財や
不正経済行為を暴露し続けているのです。あのトランプ米大統領
の盟友といわれるスティーブン・バノン氏とも交流があるといわ
れています。
 肖建華氏は、この郭文貴氏の番頭格の存在であり、江沢民人脈
の金庫番といわれていた人物です。肖建華氏は香港のフォーシー
ズンズという一流ホテルに長期滞在し、4人のボディガードに囲
まれていたといいます。
 しかし、彼はこのホテルから、白昼堂々と中国当局に拉致され
当局の取り調べを受け、その後行方不明です。香港では、現在も
「逃亡犯条例」反対のデモが終息していませんが、そんな条例は
なくても中国当局はこのように大物を中国に拉致できるのです。
 彼は、包商銀行を隠れ蓑にして、明天証券グループという投機
集団を駆使してインサイダー取引や、シャドーバンキング、投機
資金など、数々の不正行為をやっていたものと考えられます。
 したがって、包商銀行をオープンに潰してしまうと、銀行を通
じた数々の悪行が明るみに出てしまうことになります。これは、
他行への波及効果で、金融危機にそままま結びつくので、素早く
国家管理にしたものと思われます。中国には4000行の銀行、
地方銀行、信用組合がありますが、そのうち420行が問題を抱
えているといわれます。いつ破綻しても不思議はないのです。
              ──[中国経済の真実/058]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、包商銀行の破綻回避は吉とでるか
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   包商銀行の件は、同行の派手な来歴ゆえに関心を集めてい
  る。筆頭株主にして主要な借り手である金融グループ、トゥ
  モロ─・ホールディングスを経営していた富豪の肖建華氏は
  2017年に香港のホテルから失踪。同グループの資産は今
  小分けにして売却中だ。
   中国には破綻寸前の地銀がいくらでもあるが、包商銀は経
  営が特に危ない。UBSのジェーソン・ベッドフォード氏は
  昨年公表した報告書で、ティア1資本比率が8%を切って、
  国内最悪水準となっている3行の1つに同行を挙げた。今年
  第1・四半期の中国の銀行資産に占める都市銀行の割合は、
  13%、地方銀行は7%にとどまるものの、抱える金融リス
  クという点では地銀の比率がとびきり大きい。国有大手銀行
  が政府保証のついた最優良顧客を確保している以上「雑魚」
  は残り物で我慢せざるを得ないからだ。
   損失隠しのための工作が施されるのは、珍しいことではな
  い。2018年、上海浦東発展銀行は、不良債権を隠すため
  に1493社ものペーパーカンパニーを使ったとして罰金を
  科された。大連銀行は幾度も救済を受けている。中国政府は
  15年に預金保護制度を導入した。これにより、理論上は銀
  行が破綻しても一般預金者に被害が及ばなくなったはずだ。
  しかし制度の整備はまだ道半ば。昨年9月時点で預金保険の
  資金はわずか120億ドル、今年3月時点でもまだ、制度の
  執行にあたる当局の設立が話し合われている状態だった。
                  https://bit.ly/2GCPOtu
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中国人民銀行.jpg
中国人民銀行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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