相がはじめてです。なぜかというと、オーストラリアにほぼ導入
が決まっていた日本の「そうりゅう型」潜水艦導入をターンブル
首相が突如取りやめたからです。
調べてみると、このマルコム・ターンブルなる人物は、親中派
の元実業家であり、それなら導入中止は当然と思ったし、日本の
潜水艦導入中止を「日本の技術が中国に渡らなくてよかった」と
いう趣旨のツイートを発信したので記憶に残っていたのです。
ところで、安倍首相は、オーストラリアの首相と仲が良かった
はずです。だから、潜水艦の導入の話になったはずですが、安倍
首相と仲が良かったのは、ターンブル首相の前のトニー・アボッ
ト首相です。そのアボット首相は党内の政治クーデターで、政権
交代を余儀なくされたのです。直近のオーストラリア3代のデー
タを以下にまとめます。
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◎トニー・アボット
2013年 9月18日〜2015年 9月15日
◎マルコム・ターンブル(首相就任前の役職:通信相)
第1次政権
2015年 9月15日〜2016年 7月19日
第2次政権
2016年 7月19日〜2018年 8月24日
◎スコット・モリソン (首相就任前の役職:財務相)
2018年 8月24日〜在任中
https://bit.ly/2YnB1wZ ─────────────────────────────
ごく大ざっぱにいってしまうと、アボット氏からターンブル氏
への交代と同じようなことが、ターンブル氏からモリソン氏への
交代において起きているのです。いずれもオーストラリア与党の
自由党のなかの政権闘争です。与党の自由党の政権運営がうまく
いかず、支持率が低迷した挙句の政権交代です。
ちなみに就任直後のトランプ大統領がオーストラリアの首相と
の電話会談で、移民問題で意見が衝突し、トランプ大統領が途中
で電話をガチャ切りした相手はこのターンブル首相です。
関心があるのは、あれほど親中派だったターンブル政権がなぜ
中国とうまくいかなくなったかです。これについて、ロイターは
2018年6月19日に「焦点:火花散らすオーストラリアと中
国、なぜ関係悪化したか」というレポートを出していますが、そ
の中心部分を以下に示します。
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輸出ブームを駆り立てた画期的な自由貿易協定(FTA)を中
国と結んでからようやく2年がたとうとしている中、ターンブル
首相は、外国の影響を制限するのを目的とした新たな法案を提出
する理由として、中国による「干渉」を挙げた。
ターンブル首相は昨年(2016年)、議会において、中国共
産党がオーストラリアのメディアや大学、政治に干渉していると
の報告に懸念を示した。その中には、野党議員が中国の利害関係
者と密接な関係を持ち、献金を受けていたとの報告も含まれ、後
にこの議員は辞職に追い込まれた。ターンブル首相率いる中道右
派政権は、外国からの政治献金を禁止したり、外国のために働く
ロビイストに登録を義務付けたりする法案を準備している。また
諜報の定義変更も提案されており、犯罪の対象となる活動が拡大
することになる。(中略)中国によるオーストラリアへの干渉問
題は同年、中国軍と近い関係にあるとされる中国企業に北部ダー
ウィン港を貸与する契約が浮上し、一段と批判されるようになっ
た。同契約を巡っては、米海軍兵士1500人超が駐留する基地
が近いことから、米国も懸念を示したとされる。
https://bit.ly/2ME522O ─────────────────────────────
実は、2019年5月18日にオーストラリアでは総選挙があ
り、選挙前の予想では、野党の労働党が圧倒的に優勢だったので
す。中国が選挙資金などを含めて積極的に支援したフシがありま
す。しかし、結果は予想に反して、与党のモリソン政権が勝利し
たのです。大逆転勝利です。
この勝利を世界のメディアは「奇跡」と報道し、それをトラン
プ氏の米国大統領の当選と英国のブレグジットと同様に予測する
のが困難な出来事に例えたほどです。これは、オーストラリアの
国民が、親中路線の労働党を嫌ったからであり、明確に中国に対
して「NO!」を突き付けたことになります。
南太平洋を中国から守るには、何といっても重鎮のオーストラ
リアを親中派にさせないことであり、今回の総選挙は、それを実
現した選挙結果であるといえます。それに「ファイブ・アイズ」
という5つの国の諜報連携を機能させるためにも、オーストラリ
アが親中国では困るのです。ファイブ・アイズの5つの諜報機関
とは次の通りです。
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◎ファイブ・アイズ
1.アメリカ
アメリカ国家安全保障局/NSA
2.イギリス
政府通信本部/GCHQ
3.カナダ
カナダ通信保安局/CSEC
4.オーストラリア
参謀本部国防通信局/DSD
5.ニュージーランド
政府通信保安局/GCSB
https://bit.ly/2insxgt ─────────────────────────────
──[中国経済の真実/056]
≪画像および関連情報≫
●トランプ氏、豪首相との電話会談を「最悪」と打ち切り
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米紙ワシントン・ポストは2017年2月1日、ドナルド
・トランプ米大統領が先月28日にオーストラリアのマルコ
ム・ターンブル首相と電話で会談した際、豪国内の難民を米
国が受け入れるという両国の合意を批判し、予定時間を切り
上げ会談を一方的に終わらせたと報じた。
同紙によると、28日に、各国首脳と電話会談を相次いで
行ったトランプ氏は、ターンブル首相との会談を「今までで
最悪」と呼んだという。トランプ大統領は、会談後にツイッ
ターで、難民の再定住計画について「この馬鹿な取り引きの
中身を調べる」とコメントした。
オバマ前政権時にまとめられた合意では、オーストラリア
で難民申請した1250人を米国が受け入れることになって
いた。オーストラリア政府に対しては、難民申請した人々を
自国で受け入れずナウルとパプアニューギニアの施設に収容
したことで、非難の声が上がっていた。
トランプ氏は先月27日に、イスラム教徒が多数を占める
特定7ヶ国の入国を一時的に禁止する大統領令に署名。ター
ンブル豪首相は、難民の米国再定住の合意が実行されるのか
説明を求めていた。28日にはターンブル首相のほか、ロシ
アのウラジーミル・プーチン大統領など4人の首脳がトラン
プ大統領と電話で会談した。ワシントン・ポスト紙は、電話
会談について報告を受けた複数の米高官の話として、会談は
1時間の予定だったものの、25分たったところでトランプ
氏がいきなり打ち切ったと報じた。https://bbc.in/2JYz7KZ
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トランプ米大統領とターンブル豪首相電話会談