経済成長率が発表されました。それは、1月〜3月期よりもさら
に0・2ポイント減速しています。
─────────────────────────────
2019年4月〜6月期 2019年1月〜3月期
6・2% 6・4%
─────────────────────────────
「6・2%」という数字は、統計を開始した1992年以降で
最低であり、リーマンショック直後の2009年の6・4%も下
回っています。しかし、各国の経済統計担当者は、この中国の数
字が大ウソであることはわかっています。昭和初期生まれの人が
ピンとくる表現を使えば「大本営発表」そのものです。6%台の
実質経済成長率は、通常の感覚でいえば「凄い成長率」であるか
らです。それがなぜ深刻なのでしょうか。
経済成長率に限らず、こういう国家統計は申告制です。何を経
済成長率に含めるか含めないか、どのように計算するかなど、す
べては申告制ですから、国のさじ加減でどのようにでもなるので
す。中国の経済統計が信用できないことは、李克強首相ですら認
めているのですから、世界中が知っています。
これは「債務(借金)」についても同じことがいえます。日本
は「GDP対比200%以上の債務を抱えている」──これは、
さんざんいわれています。日本は超借金大国であると。これは、
財務省が資産を無視して、借金だけを申告しているからです。な
ぜ、そんなことをするのか。増税をしやすくするためとしか考え
られません。つまり、日本の場合、経済の状況を実態よりも悪く
申告しているのです。中国とは逆です。
ここで留意すべきは、この負債は「国の債務」と考えている人
が多いですが、「政府の債務」です。このあたりがわざとぼかさ
れています。この政府の債務には、中央政府と地方政府の両方が
含まれています。これを一緒にして、国の借金として考えている
人が多いです。この場合、地方政府の債務については中国と違い
日本では、ほとんど破綻を心配する必要はないのです。
この地方政府の借金の安全性について、植草一秀氏は2011
年発行の自著において、次のように述べています。
─────────────────────────────
地方政府の借金は、それぞれの地方の金融機関などが資金の出
し手となっており、どの経済主体がいくら地方自治体に資金を供
給するかについて綿密な計画がたてられ、その計画に基づいて地
方債が発行されている。
また、地方債を発行できる事業も限定されており、基本的には
借金返済の裏付けが確かでないものには、地方債発行が認められ
ないような仕組みが取られている。したがって、この200兆円
の地方債の残高については、基本的に大きな懸念が生じる恐れが
ないと言っても過言でない。例外的に地方政府の財政危機が表面
化するケースがあるが、巨大な地方債残高を抱えたまま地方政府
が破綻するといった事態は想定されないのである。
──植草一秀著『日本の再生/
機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却』/青志社刊
2011年11月発刊
─────────────────────────────
ここで植草一秀氏のいう「200兆円」とは、2011年度末
の借金残高合計が、894兆円になるという予測に基づいていま
す。これは日本のGDPの185%に相当しますが、894兆円
の内訳は次の通りです。地方政府の借金は外して申告しても一向
に問題がないということをいいたいわけです。
─────────────────────────────
中央政府 ・・・・・・ 693兆円
地方政府 ・・・・・・ 201兆円
─────────────────────────────
日本に比べると、中国はきわめて深刻です。中国の経済データ
は、各地に配置されている中国共産党幹部が、その所管する地方
のGDPを北京に報告しますが、目標値をクリアしないとその幹
部の失点になるので、報告数値を水増しすることが慣例です。
そこで、中国の本当の数字を探る試みがいろいろ行われていま
す。その一つが「李克強指数」です。鉄道貨物輸送量や融資、電
力消費のデータですが、最近では、それらの数値も信用できるも
のではなくなってきています。
そこで産経新聞特別記者・田村秀男氏は、自動車とセメント生
産の前年比増減率をベースにして、「タムラ・フジ産経指数」を
作り、それによって分析する方法を考えたのです。自動車生産台
数は、外資との合弁が多いため、誤魔化しが効かず、セメント生
産は、政治的裁量とは無関係なので、わざわざウソをつく必要が
ないからです。
添付ファイルのグラフは、自動車、セメント生産の前年比増減
率に実質GDPの伸び率を組み合わせたものです。これについて
田村秀男氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
成長率の水準を抜きにすれば趨勢はきれいに連動し、いずれも
右肩下がり曲線である。自動車は工業生産の要で、セメントは不
動産開発が柱となるハコモノ投資(総固定資産投資)を100%
反映する。総固定資産投資のGDP構成比は40〜50%に上り
昨年は8%前後の伸び率になっている。
ところがセメント生産は、前年比マイナスで、いかにも不自然
だ。固定資産投資は土地の所有権を売買する権限を持つ地方政府
の裁量次第だから、ウワモノの投資をしたように偽装できる。セ
メントと自動車生産動向からすれば、実際の中国経済は実質マイ
ナス成長に陥っている。そして4〜6月期はさらに下落に加速が
かかっていると推計できるのだ。 https://bit.ly/2XWrWf6
─────────────────────────────
──[中国経済の真実/050]
≪画像および関連情報≫
●中国のGDPは嘘であり水増しされている
───────────────────────────
中国が毛沢東による1949年の建国当初から手本として
きたのは、一早く共産主義を確立していた大国ソビエト連邦
でした。ソ連から一万人の顧問が中国を訪れて産業育成の方
法を始めとして統計システムまで持ち込まれました。しかし
そもそもソ連の統計が大嘘であったということがソ連崩壊と
同時に明らかになったのです。
実はソ連は崩壊するまでは世界第2位のGDPということ
になってたのですが、崩壊後に明らかになったGDPは発表
の半分の規模でしかなかったのです。また、1928年から
1985年の国民所得の伸びは実際には6・5倍にしかなっ
ていなかったにも関わらず、90倍に拡大していると誇大に
も程がある統計を出していたのです。
しかし、非常に巧妙につくられていたみたいでノーベル経
済学賞を受賞したサミュエルソンでするソ連の統計をみて、
『ソ連は成長している』と結論付けてしまっていました。結
局、ソ連にしても中国にしても一党独裁で国家を収めている
国では、共産党のおかげで国が成長していると国民を騙さな
いといけないのです。騙さないと、不満が爆発して革命が起
き一党独裁政権が瓦解してしまいますからね。ただ、嘘の統
計をねつ造し続けても国家は瓦解します。
https://bit.ly/2GmsCiV
───────────────────────────
中国の自動車、セメント生産と実質GDPの前年比増減率