2019年07月16日

●「北朝鮮要人は漁船で日本に亡命か」(EJ第5047号)

 2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域
──そこに2隻の北朝鮮の漁船がいたのですが、この船にはたっ
た4人しか乗っていなかったのです。この4人とは、果して何者
でしょうか。この4人がどういう人物かについて、菅沼光弘氏の
本から要約します。
 金正恩氏の父、金正日氏が亡くなったのは、2011年12月
17日のことです。金正日氏がとっていた政治は「先軍政治」で
あり、軍が経済を含めてすべての国家権力を握る政治体制です。
このときは、当然のことながら、軍隊や軍人が優遇されていたの
です。なかでも、権力を持っていたのは、金ファミリーを護衛す
る任務を持つ護衛総局という部署で、李乙雪(リ・ウルソル)と
いう人物が司令官を務めていたのです。朝鮮人民軍元帥には、当
然金正恩氏が就任していますが、李乙雪も元帥の称号を持ってい
たのです。
 李乙雪は、金日成に仕え、あのパルチザン戦争にも参加した勇
者で、金正恩氏が2012年4月に軍事パレードを観閲したとき
はまだ健在であり、金委員長の隣に元帥の服を着て立っていまし
た。彼は贅沢三昧を尽くし、金ファミリーよりも、豪奢な生活を
していたといわれています。
 しかし、金正恩委員長は、父親の「先軍政治」とは異なる政治
体制を目指そうとしたのです。彼は、真の強国とは「経済に強い
国」であると考えていたからです。念頭にあったのは、中国では
なく米国です。それに当時の軍は腐敗にまみれており、根こそぎ
の改革が急務でした。中国と同じです。そして打ち出したのが、
「並進政治」です。並進政治とは、軍事建設もやるが、経済にも
重点を置き、軍事と経済を並進させるという意味です。
─────────────────────────────
        金正日 ・・・・ 先軍政治
        金正恩 ・・・・ 並進政治
─────────────────────────────
 金正恩委員長は、軍人よりも科学者、とくに核やミサイル技術
やIT技術に優れた科学者を優遇したり、何とか経済を活性化さ
せようと力を入れたのですが、それをやればやるほど、経済制裁
がきつくなっていったのです。それに軍の改革は、李乙雪元帥が
健在のうちは、さすがに手をつけられなかったのです。
 その李乙雪元帥は、2015年11月7日に死亡し、軍事改革
を進めるのに、障害はなくなったのです。それ以後のことについ
て、菅沼光弘氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 李乙雪が死んで、軍人の粛正が進めやすくなった。金正恩は、
次々と軍人を粛清してきましたが、最後に残ったのが護衛総局で
す。金正恩はこれに手を着け、かなりの人を逮捕した2018年
12月に「遭難した漁船」には、護衛総局の幹部の何人かが逃亡
するために乗っていたのではないか。金正恩が彼(ら)を捕まえ
てくれ、と文在寅に頼んだというのが、事の次第ではないかと私
は考えています。もし、そうだとすれば、日本も北朝鮮に協力し
たことになるのですね。海上自衛隊のP・1哨戒機は、すべてを
知っていたと考えるのが常識です。      ──菅沼光弘著
             『金正恩が朝鮮半島を統一する日/
        日本にとって恐怖のシナリオ』/秀和システム
─────────────────────────────
 この菅沼光弘氏の説は、なかなか説得力があります。人民軍の
幹部が次々と逮捕され、処刑されるのを見て、幹部級の大物が漁
船で日本を目指し逃亡を図る──十分考えられることです。なぜ
漁船なのかというと、北朝鮮の場合、航空機を使うことが困難で
あり、漁船を使うのが一番手っとり早いからです。目指すのは日
本。日本は沿岸警備が甘く、上陸しやすいのです。実際に、多く
の北朝鮮の漁船が沿岸で発見されています。
 推測ですが、当局が逮捕を予定していた元護衛総局の大物幹部
数人が漁船に乗って逃亡を図った。わかったのは、出航してかな
り経ってからです。報告を受けた金正恩委員長は、韓国の文在寅
大統領に電話して、「捕まえてくれ」と依頼したのではないか。
そのとき、武装していることも伝えています。
 文在寅大統領は、この要請を受けて、直ちに警備艇と攻撃され
ることにも備えて、駆逐艦を派遣したのです。もしかすると、日
本の哨戒機に発見されたとき、火器管制レーダーを発射して追い
払うことも最初から考えていたのではないでしょうか。文在寅大
統領としては、ここで金正恩委員長を助けておけば、あとあと韓
国にプラスになると計算したと思われます。
 韓国には「事大主義」という考え方があります。これは「弱い
者が強い者の言いなりになって仕えること」という意味です。直
近の「事大」として、菅沼光弘氏は、韓国におけるTHHADミ
サイル設置をめぐる一連の対中姿勢にあると指摘しています。し
かし、日本に対してはヒステリックに文句をつけてくるのです。
─────────────────────────────
 韓国はTHHADミサイルを2017年9月に慶尚北道星州に
配備したと発表しました。国内の反対運動が盛んで場所をどこに
するか、大もめにもめたのですが、結局ロッテ財閥が開発したゴ
ルフ場に設置されました。
 韓国の言い分では北朝鮮のミサイルに備えるという口実で配備
したのですが、設置場所から見ても、中国のミサイルがアメリカ
に飛んでいく前に迎撃するためだ、というのが明々白々でした。
当然、中国が韓国に対して猛烈なクレームを付けてきます。中国
は、中国国内にあるロッテグループの工場や店舗を全部閉鎖して
しまいました。それだけの報復を受けたわけですが、文在寅政権
はなんの抗議もしなかった。唯々諾々とそれを受け入れた。これ
を「事大主義」と言わずして何を事大主義と言うか。
                ──菅沼光弘著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/046]

≪画像および関連情報≫
 ●半島国家の悲しき世界観/宮家邦彦氏
  ───────────────────────────
   日本の嫌韓派の人々が韓国を批判する際によく使う言葉が
  「事大主義」の弊害なるものだ。事大主義といっても若い読
  者はあまりピンと来ないだろうが、北東ユーラシアの地政学
  を理解するうえで、「事大主義」は、「華夷思想」「冊封体
  制」「朝貢関係」などとともに、必須の概念だといえよう。
   事大主義とは、「小」が「大」に事える、つまり、強い勢
  力には付き従うという行動様式であり、語源は、『孟子』の
  「以小事大」である。国語辞典によれば、「はっきりした自
  分の主義、定見がなく、ただ勢力の強いものにつき従ってい
  く」という意味で、たとえば次のように使われる。
   事大主義とは朝鮮の伝統的外交政策だ。大に事えるから事
  大。この大というのはむろん中国のことなのだが。つまり中
  国は韓国の上位にある国だったから、そこから侵略されても
  ある程度仕方がないとあきらめる。しかし、日本は韓国より
  下位の国だ、だから侵略されると腹が立つ。上司になぐられ
  ても我慢できるが、家来になぐられると腹が立つ、という心
  理だ。(2013年12月16日付、『NEWSポストセブ
  ン』)朝鮮は、中国に貢ぎ物をささげる朝貢国として、存続
  してきた。大国に事える事大主義の伝統が抜きがたくある。
  日本が近代化に懸命に汗を流しているころも、官僚らは惰眠
  をむさぼり、経済も軍事力も衰亡していた。その朝鮮を国家
  として独立させ、西洋の進出に備えようというのが日本の姿
  勢だった。(2014年7月19日付、『産経新聞』WEB
  版)              https://bit.ly/30qElVo
  ───────────────────────────

李乙雪元帥と金正恩委員長.jpg
李乙雪元帥と金正恩委員長
 2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域
──そこに2隻の北朝鮮の漁船がいたのですが、この船にはたっ
た4人しか乗っていなかったのです。この4人とは、果して何者
でしょうか。この4人がどういう人物かについて、菅沼光弘氏の
本から要約します。
 金正恩氏の父、金正日氏が亡くなったのは、2011年12月
17日のことです。金正日氏がとっていた政治は「先軍政治」で
あり、軍が経済を含めてすべての国家権力を握る政治体制です。
このときは、当然のことながら、軍隊や軍人が優遇されていたの
です。なかでも、権力を持っていたのは、金ファミリーを護衛す
る任務を持つ護衛総局という部署で、李乙雪(リ・ウルソル)と
いう人物が司令官を務めていたのです。朝鮮人民軍元帥には、当
然金正恩氏が就任していますが、李乙雪も元帥の称号を持ってい
たのです。
 李乙雪は、金日成に仕え、あのパルチザン戦争にも参加した勇
者で、金正恩氏が2012年4月に軍事パレードを観閲したとき
はまだ健在であり、金委員長の隣に元帥の服を着て立っていまし
た。彼は贅沢三昧を尽くし、金ファミリーよりも、豪奢な生活を
していたといわれています。
 しかし、金正恩委員長は、父親の「先軍政治」とは異なる政治
体制を目指そうとしたのです。彼は、真の強国とは「経済に強い
国」であると考えていたからです。念頭にあったのは、中国では
なく米国です。それに当時の軍は腐敗にまみれており、根こそぎ
の改革が急務でした。中国と同じです。そして打ち出したのが、
「並進政治」です。並進政治とは、軍事建設もやるが、経済にも
重点を置き、軍事と経済を並進させるという意味です。
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        金正日 ・・・・ 先軍政治
        金正恩 ・・・・ 並進政治
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 金正恩委員長は、軍人よりも科学者、とくに核やミサイル技術
やIT技術に優れた科学者を優遇したり、何とか経済を活性化さ
せようと力を入れたのですが、それをやればやるほど、経済制裁
がきつくなっていったのです。それに軍の改革は、李乙雪元帥が
健在のうちは、さすがに手をつけられなかったのです。
 その李乙雪元帥は、2015年11月7日に死亡し、軍事改革
を進めるのに、障害はなくなったのです。それ以後のことについ
て、菅沼光弘氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 李乙雪が死んで、軍人の粛正が進めやすくなった。金正恩は、
次々と軍人を粛清してきましたが、最後に残ったのが護衛総局で
す。金正恩はこれに手を着け、かなりの人を逮捕した2018年
12月に「遭難した漁船」には、護衛総局の幹部の何人かが逃亡
するために乗っていたのではないか。金正恩が彼(ら)を捕まえ
てくれ、と文在寅に頼んだというのが、事の次第ではないかと私
は考えています。もし、そうだとすれば、日本も北朝鮮に協力し
たことになるのですね。海上自衛隊のP・1哨戒機は、すべてを
知っていたと考えるのが常識です。      ──菅沼光弘著
             『金正恩が朝鮮半島を統一する日/
        日本にとって恐怖のシナリオ』/秀和システム
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 この菅沼光弘氏の説は、なかなか説得力があります。人民軍の
幹部が次々と逮捕され、処刑されるのを見て、幹部級の大物が漁
船で日本を目指し逃亡を図る──十分考えられることです。なぜ
漁船なのかというと、北朝鮮の場合、航空機を使うことが困難で
あり、漁船を使うのが一番手っとり早いからです。目指すのは日
本。日本は沿岸警備が甘く、上陸しやすいのです。実際に、多く
の北朝鮮の漁船が沿岸で発見されています。
 推測ですが、当局が逮捕を予定していた元護衛総局の大物幹部
数人が漁船に乗って逃亡を図った。わかったのは、出航してかな
り経ってからです。報告を受けた金正恩委員長は、韓国の文在寅
大統領に電話して、「捕まえてくれ」と依頼したのではないか。
そのとき、武装していることも伝えています。
 文在寅大統領は、この要請を受けて、直ちに警備艇と攻撃され
ることにも備えて、駆逐艦を派遣したのです。もしかすると、日
本の哨戒機に発見されたとき、火器管制レーダーを発射して追い
払うことも最初から考えていたのではないでしょうか。文在寅大
統領としては、ここで金正恩委員長を助けておけば、あとあと韓
国にプラスになると計算したと思われます。
 韓国には「事大主義」という考え方があります。これは「弱い
者が強い者の言いなりになって仕えること」という意味です。直
近の「事大」として、菅沼光弘氏は、韓国におけるTHHADミ
サイル設置をめぐる一連の対中姿勢にあると指摘しています。し
かし、日本に対してはヒステリックに文句をつけてくるのです。
─────────────────────────────
 韓国はTHHADミサイルを2017年9月に慶尚北道星州に
配備したと発表しました。国内の反対運動が盛んで場所をどこに
するか、大もめにもめたのですが、結局ロッテ財閥が開発したゴ
ルフ場に設置されました。
 韓国の言い分では北朝鮮のミサイルに備えるという口実で配備
したのですが、設置場所から見ても、中国のミサイルがアメリカ
に飛んでいく前に迎撃するためだ、というのが明々白々でした。
当然、中国が韓国に対して猛烈なクレームを付けてきます。中国
は、中国国内にあるロッテグループの工場や店舗を全部閉鎖して
しまいました。それだけの報復を受けたわけですが、文在寅政権
はなんの抗議もしなかった。唯々諾々とそれを受け入れた。これ
を「事大主義」と言わずして何を事大主義と言うか。
                ──菅沼光弘著の前掲書より
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              ──[中国経済の真実/046]

≪画像および関連情報≫
 ●半島国家の悲しき世界観/宮家邦彦氏
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   日本の嫌韓派の人々が韓国を批判する際によく使う言葉が
  「事大主義」の弊害なるものだ。事大主義といっても若い読
  者はあまりピンと来ないだろうが、北東ユーラシアの地政学
  を理解するうえで、「事大主義」は、「華夷思想」「冊封体
  制」「朝貢関係」などとともに、必須の概念だといえよう。
   事大主義とは、「小」が「大」に事える、つまり、強い勢
  力には付き従うという行動様式であり、語源は、『孟子』の
  「以小事大」である。国語辞典によれば、「はっきりした自
  分の主義、定見がなく、ただ勢力の強いものにつき従ってい
  く」という意味で、たとえば次のように使われる。
   事大主義とは朝鮮の伝統的外交政策だ。大に事えるから事
  大。この大というのはむろん中国のことなのだが。つまり中
  国は韓国の上位にある国だったから、そこから侵略されても
  ある程度仕方がないとあきらめる。しかし、日本は韓国より
  下位の国だ、だから侵略されると腹が立つ。上司になぐられ
  ても我慢できるが、家来になぐられると腹が立つ、という心
  理だ。(2013年12月16日付、『NEWSポストセブ
  ン』)朝鮮は、中国に貢ぎ物をささげる朝貢国として、存続
  してきた。大国に事える事大主義の伝統が抜きがたくある。
  日本が近代化に懸命に汗を流しているころも、官僚らは惰眠
  をむさぼり、経済も軍事力も衰亡していた。その朝鮮を国家
  として独立させ、西洋の進出に備えようというのが日本の姿
  勢だった。(2014年7月19日付、『産経新聞』WEB
  版)              https://bit.ly/30qElVo
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李乙雪元帥と金正恩委員長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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