2019年07月11日

●「北朝鮮が米国と組む可能性を分析」(EJ第5045号)

 北朝鮮は、どこと組もうとしているのでしょうか。中国か、ロ
シアか、それとも米国なのでしょうか。
 金正恩委員長のハラは、おそらく米国と組みたいと考えている
と思います。金王朝は、3代にわたって、米国寄りです。初代の
金日成(キム・イルソン)は、在韓米軍を否定しなかったといわ
れます。
 北朝鮮から見た場合、中国とロシアはいつでも口実を作って、
北朝鮮に兵を入れることができる危険な隣国です。北朝鮮は長く
中国の植民地であったし、ロシアと北朝鮮の関係についても、真
田幸光愛知淑徳大学教授は次のように述べています。、
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 ソ連、ロシアには北朝鮮は領土の一部との意識が根強い。日本
の敗戦と同時に、ソ連軍の傘下にあった金日成を送り込んで北朝
鮮という国を作らせたのですから。
 というのにソ連崩壊後、後身のロシアは国力を落とし、北朝鮮
へのカネや食料を与える余裕を急速に失った。そこに中国が入り
込んで、北朝鮮は中国が仕切る国と見なされるに至った。しかし
北朝鮮はロシアの前身たるソ連の勢力圏にあったのです。
                  https://bit.ly/2LdaLzg ─────────────────────────────
 現在の金正恩委員長の率いる北朝鮮にとって、一番の脅威は中
国です。中国が考えているベストシナリオは、北朝鮮内部で何ら
かの反乱が起こり、北朝鮮が混乱に陥るケースです。そういう事
態になれば、中国は、治安維持を名目にして、人民解放軍を進駐
させることができます。そういう北朝鮮国内の反乱を中国が仕掛
けて起こす可能性もあるのです。
 また、真田教授はこういいます。中国には、200万人の朝鮮
族がおり、国籍は中国人です。「北朝鮮で圧政に苦しむ中国の同
胞を救いに行く」と大義名分を立て、進駐することも可能です。
このように、金正恩委員長にとって中国は危険な隣国です。だか
ら、権力掌握後もなかなか中国には行かなかったのです。そうい
う状況下で、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)が、中国をバッ
クに権力を握ろうとしたので、粛清したのです。張成沢は、金正
男を擁して中国と図り、クーデターを起こそうとしたとも伝えら
れています。それほど、金正恩委員長は、中国を警戒しているの
です。中国に心を許すとは考えられません。
 こういう情報があります。2019年7月4日発行の夕刊フジ
『鈴木棟一の風雲永田町』の一節です。
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 米国のCIA(中央情報局)は、北朝鮮を中国から守るためと
して、「北朝鮮内に米国の基地を置く」ことを提案した、との情
報がある。習氏の北朝鮮訪問は、習氏の方から言い出したもので
米国に傾く正恩氏を引き戻そうという動きだ。
               ──『鈴木棟一の風雲永田町』
           /2019年7月4日発行「夕刊フジ」
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 「北朝鮮内に米国の基地を置く」とは驚くべき情報です。あり
えないという人も多いと思います。実際に、情報のウラが取れて
いるわけではありませんが、体制保証を取り付けようとする北朝
鮮に米国は、それに近い情報を北朝鮮に提供している可能性はあ
ります。中国は、いち早くこの情報を掴み、習近平主席が慌てて
G20サミットの前に、米国にシフトしかねない北朝鮮を急遽訪
問した可能性があります。
 事実上「決裂」という結果に終わったハノイでの米朝首脳会談
後の2019年3月15日、崔善姫(チェソンヒ)外務次官は重
要な発言を行っています。その要旨は次の通りです。
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・北朝鮮はハノイ会談での米国の要求に屈するつもりも、そのよ
 うな交渉を持つつもりもない。
・(ポンペイオ米国務長官とボルトン米大統領補佐官を名指し)
 敵意と不信感の雰囲気を作り出し、米朝の最高指導者間の建設
 的な交渉努力を阻んだ。米国のギャングのような姿勢は、いず
 れこの状況を危機に陥れる。
・(しかしながら)両最高指導者間の個人的な関係は依然として
 良好で、相性は不思議なことに素晴らしい。 ──菅沼光弘著
             『金正恩が朝鮮半島を統一する日/
       日本にとって恐怖のシナリオ』/秀和システム刊
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 崔善姫外務次官のこの発言のあと、北朝鮮国内では、国内政治
上、大きな動きがあったのです。4月9日、朝鮮労働党の拡大政
治局会議が開かれ、10日には第4回中央委員会総会、11日に
は、北朝鮮の国会に当る最高人民会議が開かれています。そこで
次の人事が決まっています。
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    ・金永南最高人民会議常務委員長  → 退任
    ・崔龍海(チョリンヘ)党副委員長 → 後任
    ・崔善姫外務次官 →  第1外務次官に昇格
             国務委員会メンバーに選出
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 最高人民会議常務委員長といえば、対外的な国家元首の役割を
果すポジションであり、長きにわたって、金永南氏が務めてきて
います。しかし、既に年齢は91才であり、このさい、退任させ
て、まだ69歳の崔龍海氏を昇格させたのです。
 合わせて、米国の事情に詳しく、米国に多くの知己を持つ崔善
姫外務次官を第1外務次官に昇格させたことは、今後のトランプ
政権とのディールに備えた布陣と考えられます。これによって、
崔善姫第1外務次官は、米朝協議においては、金正恩委員長の首
席報道官的役割を担うことになると思われます。この金委員長の
意欲が、板門店での第3回米朝首脳会談を実現させることにつな
がったのです。       ──[中国経済の真実/044]

≪画像および関連情報≫
 ●「親米国家」北朝鮮の誕生で日本の安全保障はこう変わる
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   今後の東アジアの安全保障と国際関係を大きく左右する米
  朝首脳会談がいよいよ始まる。トランプ米大統領と金正恩朝
  鮮労働党委員長との「世紀の対決」の注目ポイントは何か、
  考えてみたい。
   今回の米朝首脳会談の結果次第では、北朝鮮とアメリカと
  いう「不倶戴天の敵」が「友好国」に一変する可能性を秘め
  ている。実際、おそらく米朝首脳会談が始まる段階で「北朝
  鮮の非核化」とその見返りとなる「体制保証」という大きな
  「取引」の枠組みは決まっていると推測される。
   ただ、枠組みをより具体的にさせ、友好国同士になるため
  には「敵」である米朝のどちらも相手に大きく譲歩する必要
  性がある。もし、譲歩が十分でなければ、米国側の経済制裁
  や軍事的圧力、北朝鮮の核・ミサイル開発の再開という昨年
  までの流れに戻ってしまうだろう。では、実際に何を米朝が
  譲ることになるのか。
   米国側の「誘い水」ともいえる妥協のポイントは、すでに
  少しずつ明らかになっている。中でも、トランプ氏が日米首
  脳会談直後の記者会見で伝えたように「朝鮮戦争終結宣言」
  は米国の考えるスタートラインのようである。北朝鮮に対す
  る「敵視政策」を止めるという意思表示であり、あくまでも
  「協定」とかではなく、「宣言」ならしやすいという見方で
  あろう。            https://bit.ly/2JCOTtC
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昇格の崔龍海氏と崔善姫両氏.jpg
昇格の崔龍海氏と崔善姫両氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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