2019年06月27日

●「今年はチベット動乱60年である」(EJ第5035号)

 習近平政権になって、強力に推進されている「宗教の中国化」
は、その実態を調べてみると、あるわ、あるわ、5大宗教すべて
において、深刻な問題がたくさんあります。これを一つずつ、て
いねいに書くと、これだけでひとつのテーマになってしまうので
福島香織氏の本にしたがって、チベット(チベット仏教)の現状
についてのみ、述べるにとどめることにします。
 今年、2019年は、1956年から始まった、いわゆる「チ
ベット動乱」がピークに達した1959年3月10日の「ラサ蜂
起」から60年目に当ります。「ラサ蜂起」については次の【A
FP=時事】の記事をご覧ください。
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 中国の支配に対して武装蜂起し、ラサのポタラ宮前に集まった
チベット民衆。この日、ダライ・ラマ14世が中国側に拉致され
ると疑ったラサ市民数万人が解放軍と全面対決するに至った。ダ
ライ・ラマ14世はチベットを3月17日脱出した。中国当局は
動乱制圧後、「民主改革」(社会主義化)を推進。65年に自治
区を設立した(チベット・ラサ=当時)
        ──1959年3月10日/【AFP=時事】
                  https://bit.ly/2LbVOfX ─────────────────────────────
 ダライ・ラマ14世は、1935年生まれで、4歳のときに活
仏の転生者として認定されましたが、1959年のチベット動乱
のさい、身の危険を感じて、数万人の民とともにインドに亡命し
ています。おそらく彼は「世界一有名な難民」でしょう。
 チベット動乱では、正確な数字は出ていないものの、解放軍の
鎮圧による犠牲者は、120万人を超えるといわれます。これは
チベット人口の5分の1に該当します。
 習近平政権は、今年がチベット動乱から60年目であることを
警戒し、この3月から4月は、外国人のチベット地域への立ち入
りを制限しました。とくにダライ・ラマ14世の生まれ故郷のタ
クツェル村には、大勢の武装警察が出動し、厳重警戒をしていた
といわれます。
 それに加えて、中国当局は、今年の3月、「チベット民主改革
60周年白書」を発表しました。その内容はこうです。1959
年のチベット動乱は、中国共産党がチベットの人々を農奴制から
解放し、チベット地域の統治権確立を宣言して60年になるが、
中国共産党による「民主改革」は大きな成果を上げている。
 これに関連して、ダライ・ラマ14世は自身の政治的特権を守
るために、チベットの発展を阻害してきた害悪である。しかし、
中国共産党のおかげで、この60年の間に、チベットのGDPは
191倍になっている──こういう内容です。
 これは、中国共産党の立場に立ったときの意見ですが、チベッ
ト動乱以後のチベットについて、福島香織氏は、次のように述べ
ています。
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 このチベット騒乱の鎮圧以降、ダライ・ラマ14世の中道路線
を求める希望もあり、チベットには大きな抵抗運動は起きていま
せんが、代わりに絶望したチベット仏教の僧侶や尼僧、信者らの
焼身自殺が相次ぎました。
 2018年暮れまでに150人以上が自らを燃やし、中国共産
党によるチベット弾圧の悲劇を世界に訴え続けてきました。です
が、世界的にはチベット問題に対する関心は依然と低く、チベッ
トの状況はますます厳しくなりました。    ──福島香織著
   /『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』ワニブックス
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 チベット人は、ウイグル人と違って、政権サイドへの対応はお
となしいように見えますが、これは、ダライ・ラマ14世が説く
「中道路線と非暴力」によるものです。チベット人は、忠実にそ
の教えを守っています。だから、おとなしいのです。
 既にダライ・ラマ14世は、2011年に政治から引退を表明
していますが、現在でも、彼はチベット人の精神的な支えになっ
ているのです。
 しかし、ダライ・ラマ14世は現在84歳、今年に入ってから
も、持病の肺感染症で入院するなど、健康がいまひとつ思わしく
ない。問題はダライ・ラマ14世が亡くなったときが大変です。
チベット人に何が起きるか。これについて、福島香織氏は次のよ
うに述べています。
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 もし、ダライ・ラマ14世が入寂されたら、残されたチベット
人たちはどうなるのでしょう。私は、ダライ・ラマ14世の入寂
がきっかけで、チベット人たちの忍耐が切れるのではないか、あ
るいはそれを懸念しすぎる習近平政権が、先に今以上に徹底的な
チベット弾圧を展開するのではないか、と心配でなりません。ダ
ライ・ラマ14世は転生しないと宣言していますが、中国はダラ
イ・ラマ15世を自らの手で探し出し、あるいはでっち上げて育
て、チベット仏教そのものを中国化しようと試みるでしょう。
 そのような宗教への冒涜が行われたとき、これまで、おとなし
かったチベット人も立ちあがるかもしれません。チベット人は、
700万人程度と決しておおきな人口ではありませんが、ウイグ
ル人やモンゴル人ら、やはり自治と独立を望む人々が一斉に連動
して蜂起し始めたら、制度疲労を起こしかけている中国共産党体
制の屋台骨が揺らぐかもしれません。
                ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 同じようなことがキリスト教にも仏教にもあります。習近平政
権は、2018年9月にバチカンと司教任命権をめぐる対立に対
して、暫定合意をし、国交回復に動き出す構えを見せていますが
これも「宗教の中国化」の話です。もし、これに失敗すると、中
国分裂も十分起こり得ることになります。
              ──[中国経済の真実/034]

≪画像および関連情報≫
 ●チベット暴動/中国はダライ・ラマ派との「人民戦争」宣言
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  [北京/2008年3月16日/ロイター]中国チベット自
  治区ラサで発生したチベット仏教僧らによる大規模な暴動を
  受け、中国の当局者らは、チベット仏教の最高指導者ダライ
  ・ラマ14世の支持者らとの「人民戦争」を戦うとの姿勢を
  強調した。同暴動をめぐっては、数十人の死者が出ていると
  の情報もある。
   ラサでは14日、けさをまとった者や独立を求めるスロー
  ガンを叫ぶ者が商店を破壊したり、銀行や政府関連の建物を
  攻撃、警官に石や刃物を振りかざしたりして、大規模な暴動
  に発展した。
   16日付のチベット・デーリー紙によると、中国政府当局
  者は15日の会合で「今回の乱闘や破壊、略奪、放火の憂慮
  すべき出来事は、国内外の反動的な分離派勢力が慎重に計画
  したもので、最終目的はチベットの独立だ」と指摘。「分離
  主義に反対し安定を守るため、人民戦争を戦う。こうした勢
  力の悪意ある行為を暴き出し、ダライ派の醜い面を明るみに
  さらけ出す」としている。
   住民らによると、ラサでは16日現在、鎮圧部隊が道路を
  管制した上で住宅を厳重に監視している。今回の暴動につい
  て、中国は少なくとも10人の「罪の無い市民」が、主にデ
  モ参加者の放火による火事で死亡したと発表した。これに対
  し、ラサとつながりの強い外部関係筋は、ロイターに対し、
  犠牲者はそれよりもはるかに多いと指摘。暴動とその後の鎮
  圧行為での被害者の遺体を実際に目の当たりにしたという人
  物の話として、「ある遺体安置所だけでも67体あったそう
  だ」と語った。         https://bit.ly/2IJftC0
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ダライ・ラマ14世.jpg
ダライ・ラマ14世
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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