2019年06月26日

●「ウイグルを徹底的に弾圧する理由」(EJ第5034号)

 中国は、共産党一党独裁という国家体制を敷いている特殊な国
家です。国内には、多くの不満分子もいることから、国のトップ
である総書記/国家主席は、つねに命の危険にさらされていると
いえます。
 実際に中国の指導者はよく暗殺未遂に遭っています。ケ小平は
7回、胡錦濤元主席は3回遭っていますが、習近平氏は、総書記
になる前に2回、1期目の任期の5年間で10回、2期目に入っ
てからも2回遭っています。合計14回という多さです。
 習近平主席は、とくにウイグル人については、かなりひどいこ
とをやっています。福島香織氏の本によると、ごく最近のことで
すが、次のようなことがあったのです。
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 2019年2月5日。中国でいうところの春節″の日、中国
新彊ウイグル自治区グルジャ市(伊寧市)で一つの悲劇が起きて
いました。漢族役人たちが、春節祝いをもって、「貧困少数民族
救済」という建前で、ウイグル家庭に新年のあいさつにきたので
す。その春節のお祝いの品とは、ムスリムにとって禁忌の豚肉と
酒でした。役人たちはあたかも善意を装って、ウイグルの人たち
に豚肉を食べろと強要し、彼らが嫌がるそぶりを見せると、20
17年4月に制定された「脱過激化条例」に違反した、と言って
再教育施設に強制収用するつもりなのです。RFA(ラジオ・フ
リージア)という米国政府系資金が入ったメディアが報じていま
した。            ──福島香織著/ワニブックス
          『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』
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 「再教育施設」というのは、正式には、「再教育職業訓練セン
ター」といい、習近平政権2年目の2014年に、新疆地区を中
心に造り始めています。その実態は、職業訓練などではない、思
想の再教育をする強制収容所です。
 問題は、なぜ、新疆地区を中心に造ったのかというと、明確な
理由は分からないものの習近平主席自身が、2014年4月30
日に、ウルムチ南駅での爆破テロに遭っているからです。これに
ついて中国共産党は、ウイグル人全体が、祖国である東トルキス
タンを侵略されたと恨みに思っているせいであるとしています。
そのためウイグル人が持つ民族の思想、伝統、文化を丸ごと破壊
し、再教育をして、中国共産党に忠実な愛国者にしなければなら
ないと考えています。無茶苦茶なことです。
 この再教育職業訓練センターに収容され、奇跡的に生還したオ
ムル・ベカリ氏という人がいます。この人は、新疆ウイグル自治
区の地方都市トルファンで生まれ、民族的にはカザフとウイグル
の混血で、成人後はカザフスタンで国籍を取得したカザフスタン
人です。彼は、ビジネスマンとしてウルムチに出張し、たまたま
両親の住むトルファンに立ち寄ったところ、いきなり武装警察に
よって連行され、再教育職業訓練センターに収容されたのです。
 カザフスタンにいるオムル氏の妻が国連人権委員会に手紙を書
いて救いを求め、カザフスタン大使館からカザフスタン政府にも
訴えたのです。これに人権NGOやメディアも動き、2017年
11月4日にオムル氏はやっと釈放されています。カザフスタン
国籍であったからこそ、釈放されたといえます。
 オムル氏は、現在のウイグルの現状について、ある講演会で次
のように話しています。
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 ウイグル問題は、見方によってはシリアの内戦などよりも残酷
です。戦争が起きていれば、世界中の誰もが同情する。でも東ト
ルキスタンは新彊ウイグル自治区として、観光客が普通に訪れる
ことができる一見すると平穏な地域なんです。でも、ウイグル人
は厳しい監視下に置かれ、家族がある日忽然と消えても、収容先
で急死しても、何事もなかったかのような幸せなふりで”日常
を営まねば、今度は自分が収容されかねないという恐怖を抱えて
いるのです。          ──福島香織著の前掲書より
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 ウイグル人弾圧は、習近平主席の3大悪代官の筆頭とされる陳
全国氏が、新疆ウイグル自治区の党委員会書記の地位に就いてか
ら一層ひどくなったのです。2016年8月のことです。この陳
全国は、泣いている子供に「陳全国が来るよ」というと、泣きや
むといわれるぐらい悪辣なことを平気でやる人物のようです。
 陳全国書記は、新疆地域を徹底的な監視社会化し、ウイグル人
が何をしているかを管理しています。おびただしい数の監視カメ
ラを設置するだけで満足せず、住民のスマホに追尾機能が付いて
いる「監視アプリ」を強制的にダウンロードさせ、その行動の監
視を始めたのです。それに加えて、12歳〜65歳の全ウイグル
人に対して、DNAや虹彩などの生体情報を含むあらゆる個人情
報を提出させ、スマホのGPSとAI付き監視カメラをリンクさ
せ、個人の行動、言論、人間関係などのすべてを監視することが
出来るようにしたのです。
 したがって、ウイグル人が、日常生活と少しでも違った行動を
すると、すぐに公安が訊問に訪れるといいます。これが、オムル
氏のいう「家族がある日忽然と消えても、収容先で急死しても、
何事もなかったかのような幸せなふりで”日常≠営まねば、今
度は自分が収容されかねない」という言葉の真の意味です。
 陳全国氏の悪辣さはこれに止まらないのです。2016年から
17年にかけて、警察官3万人、警察協力者9万人の大増員を行
い、とんでもないことをはじめたのです。それが、監視のための
「ホームスティー制度」です。
 ホームスティー制度とは、警察協力者が定期的にウイグル家庭
に泊まり込み、行動を監視する制度です。このように、家庭のな
かまで入り込んで、ウイグル人の全行動を把握しているのです。
つまり、ウイグル人のあらゆる「自由」を奪い、国家の監視下に
置いています。こんなことが許されていいのでしょうか。
              ──[中国経済の真実/033]

≪画像および関連情報≫
 ●日本で「ウイグル問題を報じづらい」3つの深刻な理由
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   最近、中国が新疆ウイグル自治区でおこなっている少数民
  族ウイグル人への弾圧問題が、世界でのホットなトピックに
  なっている。国連人種差別撤廃委員会は2018年8月末、
  最大100万人のウイグル人が強制収容所に入れられている
  との指摘を報告。米中両国の政治的対立もあり、最近は米国
  系のメディアを中心に関連報道が続いている。
   トルコ系のウイグル人が多く住む新疆は、チベット・内モ
  ンゴルなどと並び、20世紀なかば以降にやっと中国政府に
  よる直接支配が確立した地域なので、少数民族の間では独立
  や自治獲得を望む意向が強い。
   だが、中国では1989年の六四天安門事件後、国家の引
  き締めのために漢民族中心主義的なナショナリズムが強化さ
  れ、また経済自由化のなかで辺境地帯の資源・都市開発や漢
  民族による移民が進んだ。結果、2010年前後からは追い
  詰められた少数民族による大規模な騒乱が増えた。少数民族
  のなかでも、イスラム教を信仰するウイグル人は、中国共産
  党にとっては「党以外の存在」に忠誠を誓っているように見
  える。彼らは人種や文化習慣の面でも漢民族との隔たりが大
  きく、中央アジアや中東との結びつきも強いことから、他の
  少数民族以上に強い警戒を持たれている。
                  https://bit.ly/2LhwViG
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陳全国新疆ウイグル自治区党委員会書記.jpg
陳全国新疆ウイグル自治区党委員会書記
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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