2019年06月13日

●「『李鴻章』になりたくない習近平」(EJ第5025号)

 6月9日のことです。中国共産党機関紙の「人民日報」の伝え
るところによると、中国政府は「国家技術安全管理リスト」とい
う仕組みを設けるということです。新制度の詳細は明らかにされ
ていませんが、世界で競争力を持つ中国国内の技術をリストアッ
プし、研究開発を後押しするほか、国外への輸出を管理、制限す
る目的があるとみられます。
 具体的な対象技術について、人民日報は、次のように述べてい
るので、ご紹介します。
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 人民日報は、中国が航空宇宙や高速鉄道、モバイル決裁、次世
代通信規格「5G」でイノベーションを起こしたと強調し、こう
した分野が規制対象と示唆した。特に5G分野では、中国は必須
となる特許出願数で3割強を占めているとされており、ハイテク
分野で中国の存在感が急速に高まっていることは確かだ。
 ハイテク分野では、すでに米国は中国通信機器最大手、為華技
術(ファーウェイ)の排除に動いている。中国側が輸出を制限す
るだけでは、有効な交渉カードとならないとの見方もある。
         ──2019年6月11日付、日本経済新聞
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 米国には既に「エンティティー・リスト(EL)」というもの
があります。安全保障上の懸念のある外国企業を記載し、輸出を
規制するものです。既にELには、多くの中国企業が記載されて
います。中国も中国企業に不当に損害を与えた外国企業を列挙す
る「中国版EL」を創設する考えですが、いずれも米国の後追い
であり、米国に大きなダメージを与えるものではないのです。
 「目には目を」ではないが、いくら技術輸出を制限しても、中
国の技術が世界を上回っているものは限られており、この分野で
の制裁合戦では米国の方に利があります。中国としては何らかの
かたちで、米国と話をつける必要がありますが、中国はなぜ話し
合いをしょうとしないのでしょうか。
 石平氏は、「習近平主席は現代の『李鴻章』になりたくない」
ので、トランプ大統領とのサシの会談を本音では、避けようとし
ているといいます。李鴻章について石平氏は、次のように説明し
ています。
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 李鴻章というのは、清王朝晩期の重臣で約20年間、清国の外
交をつかさどった人物だ。日清戦争で清国が日本に完敗したのち
李鴻章は、下関で日本側との交渉に当たり「下関条約」に署名し
た。この条約によって遼東半島と台湾が日本に割譲されたため、
当事者の李鴻章は、「喪権辱国」(国権を喪失させ国を辱めるこ
と)の張本人にされて、現在に至っても、罵声を浴び続ける存在
である。              https://bit.ly/2KFc9tf
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 本来「現代の李鴻章」という責めを受けるのは、日中交渉を任
された劉鶴氏の方です。何かと口が悪いということで評判の良く
ない北京大の孔教授にいたっては、劉鶴氏を「李鴻章以下」と罵
倒しています。
 こういう状況の下で、習主席がトランプ大統領と直接会談を行
うことは、大きなリスクを負うことになります。それは、現在の
中国が習近平独裁体制であるからです。現在の中国共産党政権内
では、習主席が、政治、軍事、外交、経済などのすべてにおいて
決定権をもっています。したがって、国として決断するすべての
ことにおける責任は習主席にあります。「喪権辱国」──国権を
喪失させ、国を辱めることの意味ですが、これについても責任も
すべて習主席が追うことになるのです。
 ケ小平は、もし独裁制をとれば、こうなることがわかっていて
集団指導体制を敷いたのです。それを習近平主席がすべて壊して
独裁体制を弾いたため、全責任が自分にかかってきてしまう状況
に陥っているのです。
 それでは、かつての毛沢東の独裁体制では、なぜ、そうならな
かったのでしょうか。毛沢東独裁体制と習近平独裁体制の違いに
ついて、石平氏は次のように述べています。
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 かつての毛沢東独裁時代と比べると、習主席の独裁にはもう一
つ大きな欠陥があります。毛沢東は絶対的なカリスマとして共産
党と国家の上に君臨し、個人独裁体制を築き上げたが、その一方
で毛沢東には周恩来という非凡な能力を持つ首相がいて、毛沢東
体制を内部から支えていました。毛沢東体制下の周恩来首相は、
毛沢東の権威に絶対的に服従しながら、首相として経済・外交な
どの実務を一手に引き受けていたのです。
 周知のように、1972年の田中角栄訪中の際、田中首相との
難しい交渉も喧嘩もすべて周恩来が担当、それらが、すべてまと
まった後に、毛沢東が出てきて角栄と会談、「大所高所」の諸に
興じたのです。その際、もし日中交渉が不首尾に終われば、当然
周恩来一人がその全責任を負うこととなったでしょう。
 周恩来のような非凡な才能を備えて誠心誠意に仕えてくれる偉
大なる忠臣がいるからこそ、毛沢東独裁は彼が死ぬまでの27年
も続いたわけです。
 残念ながら、いまの習政権には周恩来のような有能な忠臣はい
ません。共産党政治局と政府中枢には、習近平氏の幼なじみや地
方勤務時代の元部下からなる側近グループはいることはいるけれ
ど、ほぼ全員が無能なイエスマンであって、周恩来のような傑物
は一人もいない。    ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
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 中国の皇帝は、自身のことを「孤家」または「寡人」と呼んだ
そうですが、現在の中国の“皇帝”である習近平主席は文字通り
そうなりつつあります。果して習近平主席はどう動くかが注目さ
れます。          ──[中国経済の真実/024]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易協議、習主席の苦境/石平のチャイナ・ウォッチ
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   北京大の孔教授が劉鶴氏のことを「李鴻章以下」と罵倒し
  たことは、要するに、米中貿易協議における中国側の譲歩を
  「喪権辱国」だと批判したことである。それは、孔教授だけ
  の意見ではなく、国内一部勢力の声を代弁しているのであろ
  う。このような状況下で、トランプ大統領との首脳会談で貿
  易協議に決着をつけることは、習主席にとって大変難しいこ
  とであろう。劉鶴氏が当事者として米国側との合意に達した
  場合、国内で罵声を浴びるのは劉氏の方だが、習主席自身が
  米国へ出向いてトランプ大統領と「城下の盟」を結んだ場合
  「李鴻章」同様の汚名を背負って批判されるのは習主席自身
  である。
   「民族の偉大なる復興」を政治看板とする習主席はまさに
  「看板倒れ」となって、指導者としての威信に大きな傷がつ
  く。国内の反対勢力はそれを理由に巻き返しを図ってくる可
  能性もある。だから、トランプ大統領との屈辱的な首脳会談
  へ行きたくないのは習主席の本音であろう。
   しかし彼自身が行かなければ、貿易戦争に収拾をつけるこ
  とは不可能となり、中国経済は今まで以上の深刻な打撃を受
  けることとなろう。それでは習主席の政権基盤が大きく揺ら
  いでしまう。習主席にとって今の状況は、まさに進むも地獄
  退くも地獄なのである。それでも習主席は多大なリスクを覚
  悟して米中首脳会談に応じる以外に道はないだろうが、米中
  貿易戦争が、それで終息する保証があるわけでもない。彼に
  とっていばらの道はさらに続くであろう。
                  https://bit.ly/2MDdMu4
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会談するのかしないのか/米中首脳.jpg
会談するのかしないのか/米中首脳
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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