2019年06月12日

●「G20で米中首脳会談はできるか」(EJ第5024号)

 米国の「中国排除」はかなり本気です。米中通商協議でも、知
的財産権などの構造協議への確実な対応を中国に求めており、そ
の実効性が担保されない限り、中国とは合意しないと、ライトハ
イザー米通商代表部代表は、3月12日に、上院財政委員会で証
言していることから、その本気度が読み取れます。
 それは、中国側も十分理解しており、当初はそれに対応するた
め、「外商投資法」を自主的に成立させるなど、米国側に大幅に
譲歩する姿勢を見せていたのです。
 しかし、米国はそれだけでは満足しないのです。中国と合意し
た場合でも、中国がそれをきちんと履行しない場合、いつでも中
国に制裁関税がかけられるようにし、それについても合意文書に
明記することを求めたのです。つまり、ルールの実効性の担保を
厳しく中国に求めたわけです。
 中国はこれに反発したのです。これは、メンツを重んずる中国
にとって屈辱的であり、つねに米国の監視下で行動しなければな
らなくなるとして、閣僚級協議の合意を蹴ったのです。この状況
では、G20での米中首脳会談の開催は難しいと思われます。
 米国の本気度は、国防権限法に合わせるかたちで、次の2つの
法律を成立させていることでもわかります。
─────────────────────────────
   1.外国投資リスク審査現代化法/FIRRMA
   2.    米国輸出管理改革法/  ECRA
─────────────────────────────
 これらの法律についての詳しい説明は避けますが、「1」は、
外国人による投資審査を実施する対米外国投資委員会の権限と範
囲を拡大するものです。
 具体的には、「外国人」の定義を変更し、外国人の範囲を経営
に影響を与える取締役会への参加などまで拡大し、安全保障の定
義に、先端技術や不動産を加えています。これによって、中国企
業や中国人による先端技術や安全保障に関わる企業買収や不動産
投資は不可能になります。
 「2」は、事実上のココム(対共産圏輸出規制)に匹敵するも
のです。これによって、米国の武器輸出禁止国──ロシア、中国
ベネズエラ、イラクやテロ規制対象──などへ米国の「最先端お
よび基盤技術」を輸出することを禁じています。これに該当する
分野は14ありますが、日本企業をはじめとする他国が、これら
を今後中国に輸出するさいには、この法律によって、米国の許可
が必要になります。
 ところで、このような状況で、6月28日〜29日のG20大
阪において、米中首脳会談が行われるでしょうか。
 今のところ、その気配はいっさい感じられないのです。もし、
首脳会談が実施されるとしたら、現在、水面下で事務方が交渉を
重ねているはずですが、そういう情報はないのです。6月2日に
中国側は、中国国務院として、米中貿易協議における中国の立場
を示す白書を発表し、米国の言行不一致によって、協議は曲折し
ていることを非難しています。
 6月2日発表の白書では、「米国への全輸出品目に高率関税が
かけられたとしても経済に問題なし」という強気の発表が行われ
ていますが、本当にそんなことになったら、中国の経済は大変な
ことになります。そこで、米国の要求を受け入れるとしても、米
国の要求する「ルールの実効性の担保」だけは外させ、その代わ
り「すべての追加関税の撤廃」だけは、中国としては習近平国家
主席のメンツを守るために勝ち取る必要があります。しかし、こ
れは、非常に難しい問題です。
 これに関して、渡邊哲也氏と石平氏の対談では、次のやり取り
が行われています。
─────────────────────────────
渡邊:アメリカ側が「すべての追加関税撤廃」という中国側の条
 件を呑むのはちょっと考えられない。合意に達したとしでも追
 加関税を部分的に保留して中国側に圧力をかけ続けることは、
 かねてよりアメリカ側の戦略であるからです。
石平:だから中国が望むような結果になる唯一の可能性は、要す
 るにトランプ大統領が習主席とサシで会ったうえで、トップダ
 ウン的に決断する以外にはない。
渡邊:しかし習主席がいつまでもトランプ大統領との会談を躊躇
 うならば何も始まらないでしょう。たとえ米中首脳会談が行わ
 れたとしでも、トランプ大統領が、「全追加関税撤廃」という
 中国側の要求を退けで席を立ってしまう可能性がある。いや、
 そちらのほうが濃厚ですよ。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、ツイッターで「習主席と会談したい」と会
談に意欲を示していますが、実現は困難であると思われます。中
国側も、中国人民銀行(中央銀行)の戴相竜元総裁は、5月31
日、6月末に大阪で開催されるG20において、米中首脳会談が
行われたとしても、進展が困難であるとして、次のように発言し
早くも煙幕を張っています。
─────────────────────────────
 いじめで「アメリカ・ファースト」だ。これらを調整するのは
困難だ。日本で6月に開かれる首脳会合で大きな進展を得るのは
難しいだろうと私は予想している。     ──戴相竜元総裁
                  https://bit.ly/2Z9UM7U ─────────────────────────────
 閣僚級の協議で決着がつかなかったら、トップ同士がサシで話
し合って解決する──これは常識です。トランプ大統領は「やろ
う」といっているのに、習主席の返事はありません。彼は、サシ
ではどういしても話し合えない事情があるからです。
              ──[中国経済の真実/023]

≪画像および関連情報≫
 ●対中関税めぐる決定は「G20後」/トランプ米大統領
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  [シャノン(アイルランド)/北京/カーン(フランス)6
  日/ロイター]トランプ米大統領は6日、対中関税を「少な
  くとも」さらに3000億ドル分上乗せする可能性があるが
  中国もメキシコも米国との貿易交渉で合意を望んでいるとの
  認識を示し、対中関税措置については、28─29日に大阪
  で開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議後に決定す
  ると述べた。
   トランプ氏はG20首脳会議期間中に中国の習近平国家主
  席との会談を予定。具体的な日程はまだ決まっていないが、
  実現すれば、2018年末にアルゼンチンのブエノスアイレ
  スで行われた米中首脳会談以来となる。
   トランプ大統領は、3000億ドルの中国製品に対する関
  税措置の発動を巡る決定は習主席との会談後になると表明。
  「決定はG20首脳会議後2週間以内に行う。習主席と会談
  するが、どうなるか見てみよう」と述べた。大統領は中国と
  の協議は続いていると述べたが、直接の交渉は5月10日以
  降行われていない。これに先立ちトランプ氏は、アイルラン
  ドのシャノン空港で大統領専用機に搭乗する前に記者団に対
  し、「中国との協議については多くの興味深いことが起きて
  いる。次に何が起きるか。少なくとも3000億ドルを上乗
  せする可能性がある。適切な時期に行う」と発言。
                  https://bit.ly/2WmPJPC
  ───────────────────────────

G20/大阪での米中首脳会談見送りか.jpg
G20/大阪での米中首脳会談見送りか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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