2019年06月03日

●「米中貿易戦争はいつまで続くのか」(第5017号)

 米国と中国の通信を巡る貿易戦争は、米中協議が事実上破綻し
たことにより、激しさを増す一方です。6月28日〜29日に大
阪で開催されるG20サミットでのトランプ大統領と習近平国家
主席の米中会談で打開が図られる可能性はほとんどないといわれ
ています。実は、G20での米中会談が本当に開かれるかどうか
すら微妙になっているからです。
 こうした米中の衝突は、起きるべくして起きています。それは
単なる貿易問題ではなく、その本質は、米国をはじめとする資本
主義自由経済と中国の共産主義計画経済の対立であるからです。
このまま続ければ、おそらく中国共産党が倒れるまで続くことに
なります。この点について、既出の渡邊哲也氏の解説です。
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 本来、共産主義計画経済と資本主義自由経済は対立する概念で
す。政府資本と政府の統制による価格決定を基本とする共産主義
と民間資本と市場での価格決定を基本とする資本主義。「この2
つの概念のいいとこ取りをしたのが中国であり、政府主導による
資本の増大と、一部共産党資本家の投資により伸びてきたのが中
国経済です」(「」はEJ)
 そして、資産バブルにより拡張した「消費」が中国を支えてき
た半面、大きな矛盾を抱えたがために、他国との摩擦を生んでし
まったのはご承知のとおりです。資本主義のリーダーである米国
がこれを認めないとしたことで、歪(ゆがみ)が露見、中国の社
会構造を揺るがしているわけです。中国のこれ以上の経済拡張は
中国の軍事力の拡大を招き、同時に米国の覇権を脅かします。
 また、それは自由主義という価値観の敗北を意味します。この
本質があっての経済戦争であることから、米国は追撃の手を緩め
ないでしょう。        ──渡邊哲也著/ビジネス社刊
        『GAFAvs中国/世界支配は「石油」から
              「ビッグデータ」に大転換した』
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 この解説のなかで重要なのは「」の部分です。中国が体制を転
換していないのに米国は資本主義自由経済に引き入れ、それを最
大限に支援したのは、他ならぬ世界1位と2位の経済大国、米国
と日本であるといえます。そうすれば、中国が自ら体制変換をす
ると甘く考えたからです。
 かたちの上から見ると、中国にも民営企業があり、民主主義国
と同様の経営をやっているように見えます。実はそうではないの
です。何しろ中国は、国家主席、すなわち国のトップが共産党の
総書記に頭の上がらない国なのです。もちろん中国共産党総書記
と中国の国家主席では同一人(兼務)ですが、組織上どちらが偉
いかといったら、共産党の総書記の方が上なのです。
 同様に、民間企業といっても民間企業の取締役会の上に中国共
産党の支部があって、民営企業を含めたすべての企業が共産党の
支配下に置かれているのです。だから、外貨準備が不足した場合
政府の命令ひとつで、民間企業が海外に保有している資産を売却
してドルを獲得することが可能なのです。
 したがって、中国政府が国家情報法に基づいて、ファーウェイ
に情報提供を迫った場合、「それは拒否できる」といくらファー
ウェイの任正非CEOが断言しても、信用できるものではないの
です。ファーウェイのCEOも共産党員であるからです。
 共産主義と資本主義──本来、価値観の違う国同士が、経済運
営をうまくやっていけるはずがないのです。それぞれの文明社会
のなかで、別々にやっていくしかないのです。それなら、米国は
なぜ、体制変換のないまま、中国をWTO(世界貿易機関)に加
入させ、価値観の違う国との経済運営を許したのでしょうか。こ
れについて、石平氏は、次のように述べています。
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 アメリカの中国に対する考え方は蒋介石時代、毛沢東時代から
不変で、中国が経済的な繁栄をものにすれば、西側の価値観を受
け入れるようになるという自分勝手≠ネ妄想でした。アメリカ
はずっと妄想を抱きながら、中国の近代化を支援し、アメリカの
市場を中国のために開放しできた。中国製品を目一杯購入し、無
制限に中国人留学生を受け入れてきました。アメリカに留学した
中国人がアメリカの価値観を母国に持ち帰る。そういう人たちが
中国の政治の主導権を握ったら中国は変わるだろうと。しかし、
実際にはすべて裏切られてしまった。       ──石平氏
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
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 米国が「中国はきっと民主主義国になる」という“妄想”を抱
くようになった原因は、日本での成功体験にあるという意見もあ
ります。敗戦国の日本は、米国の価値観を素直に受け入れ、米国
からの経済支援を受けて、世界第2の経済大国にまで経済発展を
遂げています。米国人から見ると、同じ東洋人であり、見た目も
よく似ているので、中国人も日本人も同じように見えたのだと思
います。
 米国の日本における統治がうまくいったのは、日本はアジアで
ありながら海洋国家であり、基本的な価値観は、英国に非常に近
いのです。したがって、大陸国家である中国とは基本的価値観が
異なるのです。これについて、石平氏は次のように「アメリカは
価値観の押し売りはやめるべきである」といいます。
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 中国にしてみれば、アメリカは自分たちの価値観を押し付けて
中国の体制を転覆しようと企んでいる。そう受け止めていた。そ
れで逆に中国はアメリカに対抗心を持つようになった。だから、
アメリカは、価値観の押し付け、押し売りはやめるべきです。
             ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/016]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易摩擦激化で広がる中国メディアの「忖度」
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   トランプ大統領がツイッターでのつぶやきで予告した通り
  米国政府は5月10日、2000億ドル分の中国製品につい
  て関税をこれまでの10%から25%に引き上げた。米国に
  よる中国製品の関税引き上げは中国経済にどのような影響を
  もたらすのか。普段から付き合いのある中国国内の証券会社
  のアナリストに取材を申し込んだところ、返ってきたのは、
  「今回は応じられません」との答えだった。
   理由を問うと「みんなが答えていない中で、自分だけが話
  すのはちょっと・・・」。いつもの明快な口調が消え失せ、
  口ごもる様子には、はっきりと言えないが察してくれという
  空気がにじんでいた。
   米国政府は、10日の関税引き上げに続き、13日には、
  スマートフォンなど消費財を多く含む約3000億ドル分を
  制裁関税の対象とする「第4弾」の措置も発表した。それで
  も中国政府は外務省の耿爽副報道局長が「貿易戦争を恐れて
  はいない。最後まで付き合う」と述べるなど、強気の姿勢を
  崩さない。共同通信は、米中貿易交渉の緊張が一気に高まる
  キッカケとなった5日の米トランプ大統領のツイートの後、
  現地メディアに報道規制がかけられたと指摘している。指摘
  通り、主要紙やネットメディアではツイートを分析する記事
  を見ることはできなかった。その後、中国国内のメディアに
  よる報道は、基本的には中国政府の公式見解を繰り返すにと
  どまっている。         https://bit.ly/2YDFLLm
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評論家/石平氏.jpg
評論家/石平氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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