ランプ政権は、予告通り対中関税を10%から25%に引き上げ
たのです。5月9日、閣僚級会談に現れた中国の劉鶴副首相は、
穏やかな表情に笑顔を浮かべて、ライトハイザー米通商代表と握
手していました。会議の冒頭、劉鶴副首相は、次のように発言し
たそうです。
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本日、私は習近平国家主席の特使の立場ではなく、本会議に出
席しています。もう私にできることは、何もありません。解決で
きるのは、習主席とトランプ大統領だけです。
──劉鶴中国副首相
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しかし、会談終了後、劉鶴副首相はメディアを集め、厳しい表
情で、次のことを強く訴えています。通商代表がメディアに発言
することは、とても珍しいことです。
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中国は、重大な原則問題では絶対に譲歩できない。とくに米国
が法改正まで求めていることには、いかなる国家にも尊厳という
ものがある。 ──劉鶴副首相
──2019年5月12日付、朝日新聞
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これは明らかに「米国の要求は主権侵害である」ことを批判し
ているのです。その一方において劉鶴副首相は経済について「中
国経済は安定しており、問題ない」と強調していますが、これは
国内向けの発言と思われます。
しかし、問題ないどころか、中国にとっては大問題です。この
米中貿易戦争の激化で、世界の株式市場は、先週、約2700億
ドル(約250兆円)の時価総額が失われているのです。このダ
メージは米中ともに受けていますが、中国のダメージの方が圧倒
的に大きいのです。
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アメリカ ・・ 2・1%(6800億ドル)
中 国 ・・ 5・2%(3300億ドル)
──2019年5月12日付、日本経済新聞
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トランプ氏はさらに次なる関税を予告しています。これを懸念
して、中国のテクノロジー株が10%以上下げています。
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歌爾声学(ゴーテック) ・・ 15・3%
浙江大華技術(ダーフ・テクノロジー) ・・ 11・4%
広東温氏食品 ・・ 10・5%
中国国際航空 ・・ 10・1%
雲南白薬 ・・ 9・6%
──2019年5月12日付、日本経済新聞
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歌爾声学(ゴーテック)という企業は、アップルのワイヤレス
イヤホン「エアーポッズ」、「耳からうどん」が垂れるように見
えるあのイヤホンのメーカーです。浙江大華技術(ダーフ・テク
ノロジー)は、監視カメラで世界2位の企業です。もちろん、世
界1位の海康威視(ハイクビジョン)も9%程度のダウン、軍や
警察に無線機器を納入している海能達通信(ハイテラ)も9%程
度下げています。
これらの企業は、「2019年度米国防権限法」で、米政府と
の取引が禁止されています。もちろん米国のインテルも1O・7
%のダウン、半導体のエヌビディア、アップル、ネットフリック
スも7・8%〜6・2%のダウンです。トランプ米大統領が仕掛
ける米中貿易戦争は、米中双方にダメージがあるだけでなく、ア
ジアに拡がるサプライチェーンの混乱を招くことは必至です。そ
れは、世界経済に波及されることになります。
中国という国は、「経済というものはコントロールできる」と
考えています。確かに「中国は間もなく破綻する」とずい分前か
らいわれていたのに、ちゃんと持ちこたえてきています。しかし
これは本当でしょうか。中国の現況をていねいに観察すると、深
刻な状況が見えてきているのです。
そこで、本日からのEJのテーマを次のように設定し、事実上
前回テーマの続編としたいと考えています。
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中国経済は持続可能か。本当のところどうなのか
─ 多くの情報から、中国経済の真実を探る ─
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中国国内の消費が落ち込んでいます。中国というと日本人には
「爆買い」のイメージがあるだけに信じられない思いですが、事
実です。2018年のスマホの出荷台数は、前年比で10%ダウ
ンしています。車の販売台数は、2018年は前年比でマイナス
2・8%の減少、19年に入ると、1月は前年同月比で15・7
%の減少、2月は13・8%減少です。これは驚きの減少幅であ
り、リーマンショックのとき以上の落ち込みなのです。
さらにひどいのは配分の問題。アリババなどに代表される民間
企業が中国の成長の6割を支えているのに、銀行融資の8割は国
有企業に向けられています。最も効率の悪い、生産性の低い国有
企業に融資のほとんどが注ぎ込まれている。これでは、民間企業
は切り捨てられる運命にあります。これについては、前回のテー
マで既に指摘しています。
2018年6月のことです。中国の国有企業の負債は「108
兆元」にのぼると、中央政府が公表しています。108兆元とい
われてもピンときませんが、日本円にすると、約1800兆円。
日本のGDPの3年分以上に相当する借金です。これを中国はど
のように処理しようとしているのでしょうか。しかも、頼みの米
国とは貿易戦争に突入しているのです。
──[中国経済の真実/001]
≪画像および関連情報≫
●【瀕死の習中国】中国国有企業の「負債はケタ違い」
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香港を拠点にするアジアタイムズによると、国有企業の負
債総額は、GDP(国内総生産)の159%に達した(20
17年末速報)。すでに約2100社の倒産が伝えられた。
ゾンビ企業の名前の通り、生き残りは難しいが死んでもお
化けとなる。OECD(経済協力開発機構)報告に従うと、
中国における国有企業は約5万1000社、29兆2000
億ドル(約3263兆1000億円)の売り上げを誇り、従
業員は2000万人以上と見積もられている。
マッキンゼー報告はもっと衝撃的だった。2007年から
14年までの間に、中国の国有企業の負債は、3・4兆ドル
(約379兆9500億円)から12兆5000億ドル(約
1396兆8750億円)に急膨張していた。
「中国の負債総額のうちの60%が、国有企業のものであ
る」(ディニー・マクマホン著『中国負債の万里の長城』/
本邦未訳、ヒュートン・ミフィリン社、ロンドン)。中国当
局がいま打ち出している対策と手口は債務を株式化し、貸借
対照表の帳面上を粉飾することだ。負債を資産に移し替える
と帳面上、負債が資産になるという手品の一種だ。ただし、
中央銀行は「この手口をゾンビ企業には適用しない」として
いる。 https://bit.ly/2VZghKC
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劉鶴中国副首相