2019年05月09日

●「中国のアキレス腱/経済財政事情」(EJ第5000号)

 本日で、1998年9月15日を第1号として、営業日の毎朝
お届けしてきた日刊メールマガジン「エレクトロニック・ジャー
ナル(EJ)」は、節目となる5000回に到達しました。この
正味20年間を支えていただいた読者の皆様に心より感謝申し上
げるしだいです。ありがとうございました。
 当面、続ける意欲はまだありますので、今まで通り発行してい
きますが、今回のテーマに関しては、少し軌道修正をしたいと考
えております。今年の1月4日から執筆してきている今回のテー
マ「米中の覇権争いは今後どうなっていくか」は、同時期に開始
された米中貿易交渉の進行と合わせて書いてきましたが、ここに
きて重大局面を迎えようとしています。
 2019年5月5日、トランプ米大統領は突如、2000億ド
ル(約22兆円)分の中国製品に課す関税を10%から25%に
引き上げると宣言したのです。5日に宣言して、10日から引き
上げるというのです。その間、5日しかないのです。かなり無茶
苦茶な話であり、いかにもトランプ風です。
 このトランプ大統領の突然の関税引き上げ宣言に関し、米産業
界は猛反発しています。製造業や小売業の業界団体は、たった5
日前の通告で関税を課すことによる悪影響を訴えています。米企
業としては、米中協議の進展による関税撤廃を期待していたので
すが、真逆の結果となり、困惑しているのです。
 しかし、このトランプ大統領のツイッターでの通告に対し、共
和党ならぬ野党・民主党上院トップであるシューマー院内総務は
次のツイートを発信し、関税の引き上げに賛成しています。
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 力こそが中国に勝利する唯一の手段である。中国に屈しては
 ならない。後退してはならない。
            ──民主党上院シューマー院内総務
─────────────────────────────
 なぜ、トランプ大統領は、突如関税引き上げを、通告したので
しょうか。
 これについて、ライトハイザー代表とムニューシン財務長官は
次のようにいっています。
─────────────────────────────
 ◎ ライトハイザー代表
  ここ一週間ほどで、中国側のコミットメントに、後退がみら
 れた。米国としてはそれは受け入れられない。
 ◎ムニューシン財務長官
  これまでに交渉した、非常に明確な文言を後戻りさせようと
 していることが、週末にかけて明白になった。そうした後退に
 よって、合意が著しく変わる可能性があった。
           [北京/ワシントン/6日/ロイター]
─────────────────────────────
 このEJの原稿を書いている7日時点の情報では、中国が何を
後退させたのかは、はっきりしていません。いくつかの情報から
総合して考えると、外国企業が中国に進出したさいに、強制的技
術移転を条件とする制度を撤回させる法制化を中国側が約束した
にもかかわらず、それを後退させたのではないかといわれていま
す。もしそうであったとすれば、それは十分「ちゃぶ台返し」と
いうことになります。
 このニュースが流れたとき、ダウ平均は反落しましたが、その
後少し戻しています。それは、劉鶴副首相を含む中国の交渉団が
会談のために米国に向うことが明らかになったからです。その会
談で中国が後戻りを撤回する可能性はあります。しかし、関税引
き上げは、10日の午前0時1分と期日と時間を切っているので
関税引き上げが撤回される限界は、本日、すなわち9日中という
ことになります。したがって、決裂リスクも色濃くあるのです。
 このように、突然関税引き上げを宣言するなど、トランプ大統
領は関税をもて遊んでいると批判する向きも多いですが、日高義
樹氏は、トランプ大統領の中国に対する考え方は一貫していると
して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国に対するトランプ大統領の基本的な考え方は、「中国は紛
れもなく共産主義国家で、このまま力を持たせておけば世界を共
産化する悪魔の国である」というものだ。トランプ大統領は20
18年初め、得意のツイッターでこう述べている。
 「中国が不法な貿易や先端技術の盗用を続けて強力な国家にな
れば、世界はどうなるか、どれほどひどいことになるか計り知れ
ない」
 このトランプ大統領の考え方は、冷戦時代に「共産主義者は滅
ぼす以外にない」と唱えたハーバード大学のリチャード・パイプ
ス博士やハリー・ロジック博士、さらにはトランプ政権の国家安
全保障担当補佐官ジョン・ボルトン博士ら、アメリカの超保守勢
力に繋がっている。
 トランプ大統領はこの考え方に基づいて、関税などの経済攻勢
によって中国を財政的に追い詰め、結果的に中国の政治体制であ
る共産主義体制を崩壊させようとしている。トランプ大統領はさ
らに、強力な経済力によってアメリカに次ぐ軍事力を保有してい
る中国を軍事的にも追い詰め、アメリカの軍事力を抑止力として
中国の現政権を取り潰してしまおうと考えている。
                 ──日高義樹著/悟空出版
『2020年「習近平」の終焉/アメリカは中国を本気で潰す』
─────────────────────────────
 日高義樹氏の指摘で重要なのは「関税などの経済攻勢によって
中国を財政的に追い詰める」ということです。すなわち、中国の
経済・財政事情はきわめて深刻であり、ここを衝くことが中国の
勢いを封ずることになるという考え方です。経済・財政事情こそ
中国のアキレス腱です。現在トランプ政権は、関税を使い、的を
絞って、この一点を攻撃しているのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/081]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国、約束破った」報告受けトランプ氏激怒
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   【ワシントン=塩原永久】トランプ米大統領は5日、中国
  からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分に上乗せした10
  %の関税を、10日から25%に引き上げるとツイッターで
  表明した。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表
  は、6日、貿易協議で中国が構造改革の約束を「撤回した」
  と非難し、関税引き上げを8日にも正式発表すると明らかに
  した。貿易摩擦の解消を目指した米中の交渉は、瓦(が)解
  (かい)するか、土壇場で妥結するかの重大局面を迎えた。
   交渉責任者のライトハイザー氏は「協議は続ける」と述べ
  9、10両日に中国の劉鶴副首相が率いる交渉団が訪米する
  との見通しを記者団に語った。一方、中国が先週の閣僚協議
  で、約束していた改革の取り組みを後退させ、報告を受けた
  トランプ氏が、関税強化を決断したとの見方を示した。ロイ
  ター通信が報じた。米ブルームバーグ通信によると、ライト
  ハイザー氏が先週北京で協議した際、中国側が外国企業への
  技術移転強要を是正する法整備の約束を撤回。報告を受けた
  トランプ氏は激怒した。ライトハイザー氏によると、10日
  の午前零時過ぎに、2千億ドル分への関税率を25%に上げ
  る。トランプ氏は6日にも、巨額の対中貿易赤字は「これ以
  上、認められない」とツイッターに投稿した。同氏は5日の
  投稿で「中国との協議は続いているが(進展が)遅すぎる」
  と述べ、不満を表明した。    https://bit.ly/2WzQWEk
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「関税引き上げる」と宣言するトランプ大統領.jpg
「関税引き上げる」と宣言するトランプ大統領


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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