の5月9日に第5000号に到達します。ここまで、約20年か
かっています。土日祝日を引くと1年で約250回、1000号
に達するには約4年かかります。スタートが1998年ですから
5000号で20年になるのです。これほど続けられたのは、多
くの人の支えがあり、読者の皆様の支持と励ましがなければ、続
けることはできなかったと思います。厚く御礼申し上げます。お
そらく特定のテーマを決めて連載するスタイルの日刊メールマガ
ジンはEJだけだと思います。
5000号を9日先に控えた22日から数回、現在のテーマか
ら少し離れますが、気になるニュースがあるので、それを急遽取
り上げることにします。もっともそれは日本の医療技術の話であ
り、今回のテーマとまるで関係のない話ではないはずです。
『選択』という雑誌があります。選択出版株式会社が発行して
いますが、この会社の設立は1974年4月なので、約45年の
歴史があります。実は、この雑誌は書店で購入することはできず
年間予約購読のみです。私は、5年ほど前から『選択』を購読し
ていますが、とても役に立っています。
『選択』の記事には、著者名がありません。書店で購入できず
著者名もないというと、内容の信憑性を疑う人もいますが、記事
内容は正確で、掲載人物は全て実名で、その主張はストレートで
あり、まさに歯に衣を着せない迫力ある筆致で書かれています。
相当実力のある記者が書いているものと思います。
この『選択』/2019年4月号に、次のタイトルの記事が掲
載されたのです。
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◎世界が冷視「科学公共事業」の惨状
「幻想」のiPS再生医療
──『選択』/2019年4月号
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この記事の内容はなかなか衝撃的なのです。安倍政権はiPS
再生医療を政権の成長戦略と位置づけているので、政治と無関係
ではないのです。
そのためか、「iPS再生医療」はよく新聞に掲載されますが
それは、何かの病気のiPS再生医療がスタートするときだけの
ことです。網膜疾患の臨床研究やパーキンソン病への適用など、
治療がスタートするときは、大きな記事になりますが、その後の
経過や結果は、ほとんど記事にならないのです。そう思っていた
ときに、『選択』4月号がiPS再生医療を取り上げたのです。
ところがです。2019年4月18日付の日本経済新聞夕刊に
iPS再生医療関連記事が掲載されたのです。しかも、トップ記
事としてです。
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他人iPS移植安全確認
理研術後1年の経過良好/実用化へ7合目
──2019年4月18日付の日本経済新聞夕刊
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まるで『選択』の批判に応えるような記事の内容です。そして
その次の19日からは、このニュースは他紙でも伝えられたので
す。しかし私の知る限り、iPS再生医療の経過や結果が記事に
なったことはきわめて珍しいことです。
そもそも、なぜ、私が、いわゆる再生医療に関心を持ったかと
いうと、EJで「STAP細胞事件」をテーマに取り上げたこと
があるからです。EJのスタイルは、特定のテーマを取り上げて
あらゆる情報を積み重ねて真実に迫ろうとするものですが、うま
くいかないことも多々あるのです。しかし「STAP細胞事件」
については、かなりのところまで迫ったとの自負があります。ブ
ログで読めるので、アドレスを記しておきます。
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STAP細胞事件をわれわれはどのようにとらえるべきか
── 事件の背後に潜む闇を解明する ──
2015年5月7日付、EJ第4028号
〜2015年9月25日付、EJ第4125号
https://bit.ly/2DnKAQG
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『選択』の記事と、今回の新聞報道が、関連があるかどうかは
わかりませんが、記事の内容を対比させてみると、『選択』で批
判していることに、新聞の記事は応えているようにみえます。し
かし、もし、関連があるとしたら、『選択』は書店では売ってい
ないし、読んでいる人はきわめて限定された人たちであるのに、
なぜ気にするのか疑問です。
ひとつ考えられることは、『選択』を読んでいる人は限定的で
はありますが、その読者層は、大手企業のトップであるとか、著
名文化人であるとか、ジャーナリストなど、自分の意見を持って
発信している人が多いと思われます。したがって、いかに読者が
限定されているとはいえ、批判が拡がる前に、反論を試みたので
はないかと考えられます。
もうひとつ違和感があるのは「他人のiPS細胞の移植」とい
う言葉です。本来iPS細胞は、自分の細胞から作られるという
ことではじまったはずです。自分のiPS細胞で作るので、拒絶
反応もないし、安全であるというのが、「売り」ではなかったの
でしょうか。
「自分のiPS細胞」から「他人のiPS細胞」へ──これは
大きな変化のはずです。この変化は、どのようにして決まったの
でしょうか。そのことが、新聞などの報道で、少なくとも大きく
伝えられたことはなかったように思います。少なくともこのこと
は、大きなニュース価値があると思うのにです。
いろいろな疑問があります。明日からしばらくの間、このテー
マを追及していきたいと思います。
──[米中ロ覇権争いの行方/074]
≪画像および関連情報≫
●2018、再生医療はどこまで進んでいる?
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先日、「患者・社会と考える再生医療」というイベントに
参加してきました。「“再生医療の研究をめぐる情報”につ
いて、みんなで考えてみませんか?」をテーマに、医師、研
究者、市民が一緒になってディスカッションなどを行うとい
うなかなかユニークな試みです。
主催は日本再生医療学会。学会の幹事で、京都大学iPS
細胞研究所(サイラ)上廣倫理研究部門の八代嘉美准教授が
中心となり、午前中は医師、研究者による講演、そして午後
からホームワークタイム。参加者はグループに分かれ、自分
たちが患者として再生医療についてどのような情報を求めて
いるのか、何が足りないのか、どうしたらいいのかという問
題について、語り合い、アイデアを出し合いました。
その中で最も多かった課題は、「今、何が行われているか
分からない」「再生医療が必要になったらどこに連絡すれば
いいのか」「そもそも私たちは、治療を受けられるの?」と
いったもの。つまり正しい情報をどこに求めるかということ
でした。こうした課題を解決するには、伝える側が「正しい
情報をいかに分かりやすく伝えるか」という点が重要だと痛
感しました。
iPS細胞の登場によって、iPS細胞から人の組織や臓
器をつくり、それを移植することで「今まで不可能だった治
療が可能になる」、「夢の再生医療が現実になる!」と大き
な話題になりました。実際に、再生医療の研究はここ数年、
ものすごい速さで進んでいて、「世界初の快挙!iPS細胞
を用いた臨床手術成功」などのニュースを目にする機会も多
くなりました。 https://bit.ly/2UL6cBo
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『選択』/2019年4月号