ます。中国が民主主義国家ではないというのがその理由です。こ
れに関し、中国は「許しがたいこと」であるとし、復讐の執念に
燃えているといわれます。「既に宇宙大国になっている中国を差
し置いて、何が国際宇宙ステーションか」というわけです。こう
いうことがまかり通ると考えていることが、今の中国の問題点で
あるといえます。
中国は、その報復措置として、現在の国際宇宙ステーションが
退役する2024年(延長したとしても2028年)より前に中
国の宇宙ステーションを完成するつもりでいます。宇宙で先行し
て、それで復讐を果そうとしているようです。
そのため、中国がこれまでにやったこと、その後やると考えら
れることについて、以下にまとめます。
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◎2011年 9月29日
・「天宮1号」が、甘粛省の酒泉衛星発射センターから打ち
上げられた。宇宙実験室のひな形およびドッキング試験宇
宙船。ドッキング技術の修得が目的。
◎2016年 9月15日
・「天宮2号」打ち上げ成功。「天宮1号」をベースに改良
製造された8・6トン級の宇宙ステーション試験機。ドッ
キング標的機だった「天宮1号」に対し、「天宮2号」は
宇宙実験室と位置付けられる。
・同年10月18日に「神舟11号」がドッキングし、有人
運用を開始。11月16日に「神舟11号」が切り離され
有人運用を終了。
◎1017年 4月22日
・無人補給船「天舟1号」と宇宙実験室「天空2号」が自動
ドッキングを終了。「天宮2号」は長期運用が可能。
──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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次の国際宇宙ステーションで主導権をとるべく、中国が自信を
をもって打ち上げた「天宮1号」は、2016年3月16日から
制御不能になり、世界中を騒然とさせたのです。当時の産経新聞
ニュースは次のように伝えています。
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【北京=西見由章】中国有人宇宙プロジェクト弁公室は、20
18年4月2日、中国が独自の有人宇宙ステーション建設に向け
て打ち上げた初の無人宇宙実験室「天宮1号」が、同日午前8時
15分(日本時間同9時15分)ごろ、南太平洋の上空で大気圏
に再突入したと発表した。ほとんどすべての部品が再突入の際に
燃え尽きたとしている。中国外務省の耿爽報道官は、2日の記者
会見で、「地上への損害は現在確認されていない」と語った。
欧米の専門家らは、天宮1号が制御不能のまま大気圏に突入し
落下地点をコントロールできなかったと分析しているが、中国当
局は最後まで制御の可否について明言しなかった。任務の成功を
国内外にアピールし、メンツを保つ意図があるとみられる。
https://bit.ly/2VOgiOn
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実はこのとき中国は世界中から非難されたのです。2016年
から制御不能になっており、いつどこに落ちるか分からない状況
であったのに、そのことを世界に知らせなかったからです。国の
メンツがあるということのようですが、あまりにも無責任である
といえます。これは、昨年4月の話ですので、記憶にある人は多
いと思います。
勝手にロケットを打ち上げておいて、制御に失敗するとそれを
隠蔽し、情報を伝えない──こういうところが共産主義国家が信
用されないところです。結果として、南太平洋ハイチ近くの海底
に落下し、被害はなかったのですが、中国政府は、そこに誘導し
たとウソをついています。
「天宮1号」は8・5トンの重さですが、もし人口密度の高い
場所に落ちれば、大災害になったことは間違いないところです。
制御不能になったのですから、日本を含めて、地球上のどこに落
ちるかわからなかったはずです。
さて、中国は、今後、宇宙ステーションに関して、何をやるの
でしょうか。遠藤誉氏は、自著で次のように述べています。
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中国は2020年までに重さ66トンの天官3号の建設に着手
し、2022年までに建設を終える計画を立てている。つまり、
2022年までに本格的に宇宙ステーションを稼動させ、現在の
国際宇宙ステーションの次の世代を、中国が宇宙で担うという計
画を立てている。
打ち上げに使うのは「長征5号」の予定だ。構成要素としては
コアモジュール「天和」、2つの実験モジュール「間天」と「巡
天」および無人補給船「天舟」を同時にオプションとして打ち上
げるとのこと、いずれも「天」の文字が付いている。
これまでの宇宙ステーションと違うのは、なんといっても天宮
の中に量子暗号による通信装置が配備されていることで、搭乗員
が量子暗号による通信装置のメンテナンスに宇宙ステーション内
で携わるという。最終目標は、一群の静止衛星で、世界全体をカ
バーするつもりでいる。すべての西側諸国は、中国独自の宇宙ス
テーションに頼るしかないだろうと、鼻息は荒い。
──遠藤誉著の前掲書より
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現在、宇宙空間を飛行している「天空2号」は、2019年7
月まで軌道上を飛行していますが、その後、軌道から離脱させる
と発表しています。平均高度は、400キロ前後の低高度の円軌
道上にあるといわれています。
──[米中ロ覇権争いの行方/072]
≪画像および関連情報≫
●地球・月系の支配を狙う中国の野望/櫻井よしこ/コラム
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いま、世界のどの国よりも必死に21世紀の地球の覇者た
らんと努力しているのが中国だ。彼らは習近平国家主席の唱
える中国の夢の実現に向かって走り続ける。そのひとつが、
宇宙制圧である。21世紀の人類に残された未踏の領域が宇
宙であり、宇宙経済を支配できれば、地球経済も支配可能と
なる。宇宙で軍事的優位を打ち立てれば地球も支配できる。
2016年10月17日、中国が2人の宇宙飛行士を乗せ
た宇宙船「神舟11号」を打ち上げた背景には、こうした野
望が読みとれる。内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センター
から飛び立った中国の6度目の有人宇宙船打ち上げは、無人
宇宙実験室「天宮2号」に48時間後にもドッキングし、2
人の飛行士は30日間宇宙に滞在する。
打ち上げは完全な成功で、計画から実行まで全て中国人が
行ったと、総責任者の張又侠氏は胸を張った。中国は独自の
宇宙ステーションを2022年までに完成させ、30年まで
に月に基地を作り、中国人の月移住も始めたいとする。
いま宇宙には、日本をはじめアメリカやロシアなど15か
国が共同で運営維持する国際宇宙ステーション(ISS)が
存在する。ここに参加しない唯一の大国が中国である。中国
はアメリカとロシアの技術をさまざまな方法で入手し、独自
の開発を続けてきた。また彼らは世界で初めて「宇宙軍」も
創設した。その狙いは何か。少なからぬ専門家が中国の軍事
的意図を懸念する。 https://bit.ly/2GvPz2H
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制御不能で墜落した「天宮1号」