ラックホールの写真撮影に成功しています。アインシュタインの
一般相対性理論に基づいてその存在が予言されてから、約100
年後の撮影成功の快挙です。しかし、こういう国際的な宇宙開発
プロジェクトには、中国は入っていないのです。
中国が先頭を走る量子暗号通信も、「セキュアなインターネッ
ト」の実現に繋がるものであり、人類にとって明るいニュースな
のですが、中国という共産党一党独裁の全体主義国家が主導する
開発ということになると、何しろ覇権を狙う国であるだけに、世
界中の国が強い警戒心をいだいてしまうのです。
そういうことを棚に上げて、中国が内心強い怒りを貯めている
もののひとつに「国際宇宙ステーション」があります。なぜなら
中国は、非民主主義国家であるという理由で、その参加を拒否さ
れているからです。その怒りが物凄いエネルギーとなって、宇宙
開発が進んだともいえるのです。
中国の百度百科で「国際宇宙ステーション」を引くと、次のよ
うに出ているそうです。
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●中国が参入しているか否か:否
●最終退役はいつごろか:2024年。どんなに延期しても
2028年
●最も適切な次の宇宙ステーションを担う国はどこか:中国
中国が独自の宇宙ステーションを創りあげ、次世代を担う
──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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そもそも国際宇宙ステーション計画は、1981年〜1989
年まで大統領を務めたレーガン氏が、米ソ冷戦期における宇宙競
争において、西側諸国の結束力をアピールすべく提案したもので
す。つまり、これによって、宇宙において西側諸国の優位性を確
保しようとしたのです。したがって、もともと、国際宇宙ステー
ション計画は、「共産主義国家VS民主主義国家」の枠組みに、
なっているのです。
しかし、1991年にソ連が崩壊してしまうと、宇宙に関して
高い技術力を持って民主主義国家になったロシアを、国際宇宙ス
テーション建設の仲間に引き入れようとしたのです。
そういうわけで、アメリカ、ロシア、日本、カナダ、及び欧州
宇宙機関が中心となって、1999年から軌道上の組み立てが開
始され、2011年に完成したのが、現在の有人国際宇宙ステー
ションなのです。なお、欧州宇宙機関の加盟国は、ベルギー、デ
ンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー
スペイン、イギリスです。
このような事情により、国際宇宙ステーションは、軍事的、防
衛的目的があるので、共産主義国家である中国は、米国がこれま
で参加を拒んできたのです。遠藤誉氏は、これに対して中国が、
宇宙空間から中国を排除しようとしていると指摘して、次のよう
に述べています。
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「国際宇宙ステーションには、中国は参加を許されていない。
排除されている」という事実は、中国にとっては、きっと「許し
がたいこと」であり、「報復の執念を強く抱く対象」となったで
あろうことは、容易に想像がつく。
この「報復の執念」を中国が抱いたのは、国際宇宙ステーショ
ンが正式にスタートした1999年前後のことだろうが、それは
まさに潘建偉らが、オーストリアの科学アカデミーと密接な関係
を持ち、量子通信衛星に情熱を注ぎ始める時期と一致している。
中国は、「後発の利」を最大限に活かしている国だ。日米など
が主導する国際宇宙ステーションには、中国の墨子号が持ってい
るような量子暗号による機能はない。しかし中国は、国際宇宙ス
テーションが2024年には退役すると踏んで、次世代の中国独
自の宇宙ステーションには「量子暗号通信機能」を搭載しようと
計画しているのである。 ──遠藤誉著の前掲書より
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このように各国が人工衛星を打ち上げ、宇宙に出て行けるよう
になると、宇宙の領有権というものが問題になってきます。これ
については、1966年に国連総会で採択され、1967年から
発効した「宇宙条約(宇宙憲章)」というものがあります。この
条約では、次の4つのことが規定されています。
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1.宇宙空間の探査・利用の自由
2. 領有の禁止
3. 平和利用の原則
4. 国家への責任集中の原則
──ウィキペディア https://bit.ly/2GmpVOS
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このように、天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も
領有権を主張することはできない」と定められており、月、その
他の天体も、もっぱら平和利用に限定され、軍事利用は一切でき
ないとされています。ところが、資源の利用に関しては何の規定
もなかったのです。
そこで、さらに1979年に国連総会で採択され、1984年
に発効した「月協定」では、人類が最も行く確率の高い月に関し
て、月の表面や地下などの天然資源は、いかなる国家・機関・団
体・個人にも所有されないことが定められています。しかし、米
国や日本をはじめ、ほとんどの国がこの協定に加盟しておらず、
死文化してしまっているのです。
ところが、中国の巧妙な働きかけによって、国家の所有はだめ
だが、個人や企業の所有を認めるという「2015宇宙法」を時
のオバマ米大統領が後押しして成立させてしまうのです。
──[米中ロ覇権争いの行方/071]
≪画像および関連情報≫
●中国の宇宙ステーションの一部技術がISS超える?
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中国有人宇宙事業チーフデザイナーの周建平氏は2018
年4月24日、2022年に完成予定の中国宇宙ステーショ
ン「天宮」は、情報とエネルギー、動力技術、ランニングコ
ストの面で、国際宇宙ステーション(ISS)を上回る可能
性があると表明した。科技日報が伝えた。
周氏はまた、「全体的に見て、天宮は規模のほか、機能や
応用の効果、建造技術、物資補給などの重要指標でミールを
上回り、ISSの水準に達するか近づくことになる」と説明
した。周氏は同日開かれた、3年目となる「中国宇宙の日」
メイン活動で、天宮について詳細に説明した。周氏によると
その基本構造は1つの核心モジュール、2つの実験モジュー
ルで構築される。3つのモジュールの複合体の重量は66ト
ンで、定員は通常3人。乗組員交代の時には短期的に6人を
収容できる。
天宮には3つの接合部があり、有人宇宙船、補給船、その
他の宇宙船による接合と停泊を受け入れる。船内には26の
ペイロード積載空間、67の中小型船外ペイロード接合部、
3つの船外大型ペイロード吊り下げ箇所、1つの拡張試験プ
ラットフォーム吊り下げ箇所がある。給電、情報、熱制御、
ロボットアームなどの応用ペイロードによる力強い支援力を
持つ。実験プロジェクト及び試験設備は需要に応じて交換も
しくはアップグレードできる。モジュール化補給船はペイロ
ード実験に、高い輸送能力と理想的な輸送環境を提供する。
http://exci.to/2GoUB1X
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国際宇宙ステーション(ISS)