2019年04月16日

●「米国は宇宙では中国に遅れている」(EJ第4989号)

 遠藤誉氏の本を読むと、こと量子暗号通信関連の技術では、米
国は中国に大差をつけられているように感じます。中国は、既に
どんなことをクリアしているか、以下にまとめておきます。
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 ◎2011年
  ・中国とオーストリアで「大陸間量子通信強力協定」締結
 ◎2016年 8月16日
  ・世界初の量子通信衛星「墨子号」打ち上げ成功
 ◎2016年
  ・潘建偉研究室が10個の光子ビットと10個の超電導量
   子ビットのもつれを実現/2つとも世界初、世界記録
 ◎2017年 5月 4日
  ・世界初の光量子コンピュータ中国が開発に成功
 ◎2018年 7月 3日
  ・18個の光量子ビットのもつれに成功。「もつれ数の世
   界記録」更新
 ◎2018年 9月29日
  ・「墨子号」が大陸間量子暗号通信に成功。量子暗号を用
   いた中国、オーストリア間の世界初の大陸横断ビデオ会
   議を実施
   ──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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 量子研究の進化のキーになるのは、量子コンピュータがいつ開
発されたかです。中国は、2017年5月4日に開発に成功した
と発表していますが、コンピュータの仕様などの詳細は、まった
く不明です。
 米国はどうかというと、カナダのベンチャー企業の開発による
「Dウェーブ・システム(以下、Dウェーブ)」という名の量子
コンピュータを2013年に、軍需産業を支えるロッキード・マ
ーチン社と米国航空宇宙局(NASA)が購入して使っているの
です。中国の開発成功よりも4年も前のことであり、米国がそれ
ほど遅れているようには見えないのです。なお、量子コンピュー
タの分野では、日本もがんばっており、既に量子コンピュータは
実用レベルに入っています。
 しかし、中国は、量子通信衛星「墨子号」を2016年8月に
打ち上げており、これについては米国は大きく遅れを取っている
といえます。中国は、かなり緻密な計画の下に、人材と資金を注
ぎ込み、着実に成功させています。
 そして、何よりも決定的に米国に明確な差をつけたと世界に思
わせたのは、2019年1月3日の次の記事です。
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 ◎中国探査機、世界初の月裏側着陸
 【北京=共同】中国国営の中央テレビによると、中国の無人探
査機「嫦娥4号」が3日午前(日本時間同)、世界で初めて月の
裏側への軟着陸に成功した。着陸後に撮影した画像の地球への送
信にも成功した。今後、鉱物資源などを調査する。習近平指導部
は「宇宙強国」の地位確立に向けた取り組みを加速する。
 嫦娥4号は昨年12月8日に打ち上げられた。「嫦娥」は中国
の月に住む伝説の仙女の名。地形や中性子線などの月面環境を観
測するほか、地質も調査する。月は常に同じ面が地球に向いてい
るため、裏側は地球から見えない。中国メディアによると、裏側
は表側より起伏が大きいなど環境が異なるため、新たな科学的成
果が期待できる。  ──2019年1月3日付、日本経済新聞
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 量子暗号衛星による量子暗号通信の成功に加えて、世界初の中
国探査機の月の裏側への着陸です。これには、米国の科学技術陣
と軍事当局は相当の衝撃を受けているはずです。
 地球から月の裏側に通信を送っても、月自体が遮蔽物になって
電波は届かないのです。1968年に、アポロ8号の宇宙飛行士
が始めて月の周りを飛行したとき、短時間ではありますが、地球
との通信が途絶えています。
 そのため、アンテナの役割をする衛星を打ち上げる必要がある
のですが、その衛星は月の周りのある1点に固定させなければな
らないので、その位置に正確に打ち上げるのはかなり至難の業な
のです。中国はその中継衛星「鵲橋(じゃっきょう)号」を20
18年5月に打ち上げに成功しています。
 これについて遠藤誉氏はウェブサイト上で、次のように説明し
ています。
─────────────────────────────
 アンテナの役割をする中継通信衛星は、月の周りの1点に固定
していなければならないが、中国はピンポイント的に、力の作用
がゼロになって動かない「ラグランジュ点」に焦点を当てて打ち
当てた。月の裏側に行くことよりも、実は、このラグランジュ点
にピンポイント的に衛星を打ち当てて、「宇宙で固定しておくこ
と」の方が遥かに困難だ。(中略)
 アメリカの科学者が「是非とも、中継通信衛星・鵲橋号を使わ
せてほしい」と申し出てきた。「アメリカも月の裏側に着陸した
いが、中継通信衛星を打ち上げることが困難なので、中国が利用
し終わっても、どうか回収しないでアメリカに使わせてほしい」
というのが、その科学者の申し出の内容だ。「中国は喜んで承諾
した」と、中国工程院の院士で中国月探査総設計師(リーダー)
の呉偉仁氏が述べている。これは、まずいではないか。
                  https://bit.ly/2Ueaz2x ─────────────────────────────
 これはどのように考えても、米国は、少なくとも宇宙において
は中国に完全に遅れているといわざるを得ない状況です。やはり
米国に昔日の面影はなく、あらゆるところに劣化が表面化してい
るといっても過言ではない状況です。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/070]

≪画像および関連情報≫
 ●ただの着陸ではない ── 中国が世界を震撼させたワケ
  ───────────────────────────
   地球から月への数週間の飛行の後、中国は無人探査機「嫦
  娥4号(じょうが4号)」を月面に着陸させた。だが、着陸
  地点はどこでも良かったわけではない。中国は自動車サイズ
  の着陸船と探査車を月の裏側に着陸させた──人類が過去上
  空からしか観測したことのない未知の場所だ。
   中国の偉業には世界中から祝福が寄せられた。宇宙探査に
  関心を持つ人はもちろん、NASAの高官からも。嫦娥4号
  は、月の成り立ちの謎を解明する手がかりを探り、地球から
  数十光年離れた場所から届く電波をスキャンし、氷が堆積し
  ている場所を探す。「アメリカの宇宙計画は常に世界をリー
  ドしてきた。中国による月面着陸は、紛れもなく科学的な成
  果」と引退したNASAの宇宙飛行士マーク・ケリー氏は、
  1月4日(現地時間)、ツイートした。
   さらに同氏は、中国のミッションは「政治のレベルを超え
  て、宇宙開発を進める必要があることを思い出させてもくれ
  た」と付け加えた。また、「世界は我々を置いてけぼりにし
  ている」と述べた──「我々」とはアメリカのことだ。ケリ
  ー氏は極めて愛国的な宇宙飛行士として知られ、宇宙開発に
  ついて熱心に発言している。また、中国は宇宙探査において
  世界中を打ち負かす存在になると考えているのは同氏だけで
  はない。「ただの着陸ではない」とオーストラリアの宇宙飛
  行士アラン・ダフィ氏は着陸の後、ワシントンポストに語っ
  た。              https://bit.ly/2PafkJz
  ───────────────────────────

月面を探査する玉兎号.jpg

月面を探査する玉兎号
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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