成し遂げようとしたケ小平は、そのときから「諸外国から情報を
集める」ことを徹底しようと考えていたといいます。「4つの近
代化」とは次の4つです。
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1. 「工業」の近代化
2. 「農業」の近代化
3. 「国防」の近代化
4.「科学技術」の近代化
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そのさい、外交方針としては、「韜光養晦」の方針を徹底させ
たのです。「韜光」とは名声や才覚を覆い隠すこと、「養晦」は
隠居するというのが本来の意味ですが、一般には、爪を隠し、才
能を覆い隠し、時期を待つ戦術を形容する言葉とされています。
そ-うでないと、情報は集まらないと考えたからです。
具体的には、世界中に散らばる中国からの留学生を中心とする
情報収集、中国に進出する外国企業からのノウハウの収集です。
それは、実に巧妙なものであり、それが現代の中国を作ることに
貢献したのです。しかし、現代の中国の習近平政権では、「韜光
養晦」の方針のマントをかなぐり捨て、あらゆる方面に中国の力
を誇示するようになっています。
それでは、留学生を通じて、どのようにして情報を収集するの
でしょうか。その具体的な管理方法について遠藤誉氏は、自らの
体験から、次のように説明しています。
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世界各国にいる中国人留学生は、各大学で、「中国留学生学友
会」というものを結成していて、学友会の会長は各国に駐在して
いる中国大使館教育処と連携を取り、大学における中国人留学生
の基本情報を提供している。つまり、どの国のどの大学における
中国人留学生も、全員が中国大使館教育処の管轄下にあるという
ことになる。
この情報を一瞬で、中国中央政府の国家教育部に報告すれば、
中国政府中央は全世界にいる中国人留学生の情報を掌握し、監視
あるいは管轄することが可能となる。中国人留学生の安全を守る
ため、と言われれば何も言い返せないが、目的がそれだけではな
いことは、誰の目にも明らかだろう。小さな大学とか、その大学
にあまり多くの留学生がいない場合は例外だが、たとえば日本の
国立大学などは、すべてこの管轄下にあるということは言える。
それは大学院に進んでも同じで、教育機関を卒業し、その国の企
業で働いていたり、あるいはその国で起業している人たちは、国
家人事部という中央行政省庁が管轄する。
──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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これで分かるように、中国では、留学生が、どこで、どのよう
な研究をし、どのような仕事を得て、現在どのような地位に就き
どういう成果を上げているか、完全に把握しているのです。
中国では、留学生のことは、「留学人員」、もしくは「海外学
子」という言葉で呼んでいます。遠藤誉氏によると、2001年
6月に次のようなイベントが開かれているのです。
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期日:2001年6月29日
内容:「留学人員科学技術交流会」
主催:瀋陽市人民政府/科学技術委員会工業科学技術処
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このイベントでは、事前にウェブサイトに出ている「難題招標
表」に基づいて、留学人員は招標する必要があります。「招標」
とは「入札」と同じ意味です。
「難題招標表」には、瀋陽市にある重点企業が抱える「難題」
──文字通り、なかなか解決できないでいる課題が載っているの
です。留学人員は、そのなかで、自分が解決できると思われる難
題をマーキングし、提供できる技術、専門分野、連絡先、現職な
どを記入するのです。これが「招標」です。企業側は、応募して
きた留学人員を検討し、最も適切と思われる「頭脳」を落札し、
その留学人員には、科学技術交流会に出席する資格を与える仕組
みになっています。
その交流会に実際に出席した遠藤誉氏によると、儀式は瀋陽体
育館に約7000人集めて行われ、中国人民解放軍儀仗隊による
国旗掲揚まであるものものしいものです。そして、別会場で行わ
れた交流会の様子を遠藤氏は次のように述べています。
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盛大な開幕式が終わると、会場は藩陽市の国家ハイテク技術産
業開発区にある施設(文字が難しく表示できないのでこの表現を
使うことにする)に移った。「難題招標表」だけで何組かは海外
にいた段階で「落札」してしまったらしい。これを「得標」と称
する。地方政府が資金援助をするので、堂々と公開で技術提供の
調印式を行う。
いかにも「羽ばたきます」ということを象徴したような、翼を
空に広げた造りの21階建ての施設には、インターネットで見た
「難題招標表」よりも詳細な人材募集のポスターが並んでいる。
あの「難題招標表」リストに載っていた以外の技術を求める人材
募集広告も新たに付け加えられていて、業績や能力により通常の
10倍以上の給料を出すというものもある。調印式は1階の国際
会議場で行われた。真紅の絨毯が敷き詰められた階段教室のよう
な大会議場には、大きな半円を措いた舞台があり、20人ほどが
横並びに座れる横幅がある。細いテーブルと椅子の後ろに、儀式
に立ち会う国や地方の指導層がズラリと立って並んでいる。
──遠藤誉著の前掲書より
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──[米中ロ覇権争いの行方/057]
≪画像および関連情報≫
●中国の海外留学に変化の兆し/海帰族・海待族
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中国経済が世界に大きな影響を及ぼすようになってきた。
中国躍進の背景には、「海帰族」(海外留学帰国者)という
大きなブレーン集団が貢献していることは間違いない。20
05年までに「海帰族」は23万人を超えた。一方、最近に
なって一部の「海帰族」が「海待族」(仕事が見つけられず
家で待機する「海帰族」)に転化する現象が生まれている。
同じ「海帰族」でありながら、その明暗がはっきり分かれて
いる。しかしこれは、中国社会がさらに進化していく過渡期
の現象であり、決して悲観する必要はない。
1970年代以降、中国では改革開放政策が取られ、社会
の各方面で改革が行われてきた。また、欧米諸国の先進科学
技術を習い、文化大革命によって多大の影響を受けた欧米諸
国との経済格差を取り戻すため、1978年に最初のアメリ
カ留学組が派遣され、長い間、中断されていた留学生の海外
派遣が再開された。
しかしその後、長年にわたって海外に出る留学生の人数は
大きな成長を見せず、1992年には、6540人に過ぎな
かった。このような状況は1990年代後半まで続き、留学
はいわゆる少数のエリート学生のみの特権になっていた。こ
れらのエリートをいかに帰国させ国内で活動させるか。これ
が中国の大きな課題となっていた。
https://bit.ly/2YnaVau
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国連で演説するケ小平