2019年03月14日

●「国家情報法第8条の内容とは何か」(EJ第4967号)

 遠藤誉氏によれば、ファーウェイのバックに人民解放軍がいる
といわれるのは、創業者の任正非CEO自身が人民解放軍兵士の
経験があり、ケ小平のいわゆる「軍民転換」によって、とくに技
術系の企業に軍の出身者が多くいるのは、当たり前であるという
のです。
 しかし、問題は先端企業に元軍人が多いか少ないかではなく、
ファーウェイが通信機器の開発メーカーであることと、2017
年6月から施行されている「国家情報法」があることです。とく
に問題があるとされる同法第7条を再現します。
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 国家情報法第7条
 いかなる組織及び個人も、国家の情報活動に協力する義務を
 有する。
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 この条文の意味するところは、中国の企業と個人は、国家が必
要と認めて命令すれば、いかなる組織や個人の持つ情報も提供し
なければならないというものです。この条文だけ見ると、国家が
命令すれば、中国人民と企業は必要に応じてスパイにならざるを
得ないことになります。
 これに対して任正非CEOは「私はそのような法解釈はしてい
ない。外交部がはっきり述べているように、中国はどんな法律も
企業にすべてを要求するようなことはしない」と述べています。
 わかったようなわからないような任正非CEOの発言ですが、
「外交部がはっきり述べているように」という部分に注目して、
外交部の発言を探したところ、2019年2月20日の耿爽(グ
ン・シュアン)報道官の次の発言が見つかったのです。
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記 者:一部のメディアからファーウェイ(華為技術)に関する
 情報が報じられています。米国およびその同盟国がファーウェ
 イが中国政府に協力して情報を摂取しているという確かな証拠
 を示せていないという内容がある一方、中国の「国家情報法」
 第7条の規定に憂慮を示し、ファーウェイの参入を制限すべき
 という内容もあります。これについて、どう評価しますか。
報道官:私の理解が間違っていなければ、これらを報じたメディ
 アは西側諸国のメディアですね?
記 者:(うなづく)
報道官:私たちはこれらのメディアが、米国などの国が情報窃取
 の証拠を示せていないという点を認めていることについて、肯
 定的に評価する。これは客観的な態度だ。ここで強調しておき
 たい。第7条では確かに「いかなる組織や公民も国家の情報活
 動を支持、協力し、知り得た秘密を厳守しなければならない」
 と書かれているが、続く第8条では「国家の情報活動は法に基
 づいて行われ、人権を尊重、保障し、個人や組織の合法的な利
 益を守らなければならない」とされている。この法律を批判す
 る人は、本当に詳しく条文を読んだことがあるのだろうか。こ
 の法律を一方的に、切り取って見るのではなく、全面的に見て
 正確に理解することを求める。   https://bit.ly/2CjWn1O
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 グン・シュアン報道官のいう通り、第8条を示されれば、それ
なりに納得はできますが、少なくともネット上で調べる限り、国
家情報法の詳細の情報はなく、専門家でない限り、私も含めて、
第8条の内容をはじめて知った人が多いはずです。
 しかし、第7条にしても第8条にしても、条文は抽象的表現で
あり、国家の意思によって、恣意的に判断される余地は大きく、
国家情報法という法律の存在自体が脅威です。
 なお、遠藤誉氏の著作「『中国製造2025』の衝撃」には、
「国家情報法」自体の記載は見当たらないのです。この本で述べ
ていることと、国家情報法は無関係ではないにもかかわらず、不
思議な話です。ちなみに、この法律の施行は2017年6月であ
り、本の発行は2019年1月11日になっています。
 これに関連して、ネット上には次のようなツイートが発信され
ているのを発見しました。やっぱり何かあると思います。
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 ◎北の遊び人/2018年12月16日:13:06
 今朝のフジテレビ「報道プライムサンデー」で遠藤誉オバチャ
ンは、なぜ「ファーウェイの社員には、中国共産党員が大勢いる
こと」を隠し、「ファーウェイ副会長がもっていた7通のパスポ
ート」には一切触れないし「中国の国家情報法」について説明し
ないのだろう?           https://bit.ly/2VU7HsO
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 遠藤誉氏の論文やレポートで、「国家情報法」について書かれ
ているものがないか探してみましたが、見つかっていません。そ
の代わり、中国の「反スパイ法」について、日本人として心得て
おくべき記事はあります。
─────────────────────────────
    中国「反スパイ法」の具体的スパイ行動とは?
                ――日本人心得メモ
              https://bit.ly/2qN3tos
─────────────────────────────
 この記事には恐ろしいことが書いてあります。中国に旅行に行
くとき、誰かから、どこそこの景色を写真に撮って送って欲しい
と頼まれたとします。そういうことはよくあると思います。
 実は、そこは撮影不可の場所なのですが、現場には、それが撮
影不可とわかる看板などの表示は、見当たらないことが多いので
す。たとえ看板が出ていたとしても、気が付かないことが多いと
思われます。そこで依頼されたようにそこの景色を撮影し、ネッ
トで送ったとすると、それは、「反スパイ法」による「スパイ行
為」に該当するのです。遠藤誉氏は、日本人に注意を喚起してい
るのですが、国家情報法については、どこにも書いていないので
す。         ──[米中ロ覇権争いの行方/048]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ、米国の企業秘密を盗んでいない可能性
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   2018年12月1日に中国通信機器大手ファーウェイの
  孟晩舟・副会長兼CFO(最高財務責任者)が、米国の要請
  によりカナダのバンクーバーで逮捕されて以降、米国による
  ファーウェイへの攻撃が激しさを増している。
   今年1月16日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナル
  は、米政府がファーウェイを米企業の企業秘密を盗んだ疑い
  で本格捜査していると報じた。また、1月21日にカナダ紙
  グローブ・アンド・メール(電子版)は、米政府がカナダに
  ファーウェイの孟副会長の身柄引き渡しを正式要請する方針
  を固めたと報じた(1月23日付日本経済新聞)。
   そして米国司法省は1月28日、ファーウェイと孟副会長
  を、イランとの違法な金融取引に関わった罪および米通信会
  社から企業秘密を盗んだ罪で起訴した。
   このように米国がファーウェイを攻撃する根拠として、筆
  者は以下のように考えていた。恐らく、多くの人も同じよう
  に理解をしていたのではないか。
  (1)通信基地局の売上高シェアで世界1位のファーウェイ
  は、中国政府の手先であり、17年6月28日に中国で成立
  した「国家情報法」に基づいて、中国政府の指示により米国
  の知的財産を盗んでいた。
  (2)上記の技術盗用の証拠をつかんだ米国が、カナダへ要
  請し、孟副会長を逮捕・起訴するとともに、18年8月13
  日に米国が制定した「国防権限法2019」に基づいて世界
  中からファーウェイを排除しようとしている。
                  https://bit.ly/2VP7QxI
  ───────────────────────────


グン・シュアン中国報道官.jpg
グン・シュアン中国報道官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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