2019年03月13日

●「華為技術の後ろに軍隊がいるのか」(EJ第4966号)

 「ファーウェイのバックには人民解放軍がいる」といわれるこ
とがあります。それは、本当のことなのでしょうか。中国研究家
の近藤大介氏のレポートを読むと、任正非CEOはファーウェイ
という企業を「軍隊」と捉えており、世界の市場を「戦場」と表
現してします。まさに「軍隊的経営」です。
 任正非CEOは、2019年の年明けに社員向けのメールを配
信していますが、そのなかのフレーズのいくつかを示します。
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 ・5Gは地雷であり、東でも西でも炸裂する。
 ・新たな戦闘で這い上がるのだ。
 ・管理部門の幹部から「将軍」を選抜する。
 ・自己革新と隊伍の「血液交換」を断行する。
 ・われわれは多くの派兵を惜しまない。
 ・チベットの将軍に空母を動かせといっても意味がない。
                  https://bit.ly/2EVBISf
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 なぜ、ファーウェイと人民解放軍が結びつけられるのかについ
て、遠藤誉氏は自著のなかで、任正非氏の生い立ちを含めて、詳
しく書いています。詳しくは、遠藤氏の著書を読んでいただくと
して、以下に要約することにします。
 背景としては、3月5日付のEJ第4960号において、「大
而不強」という言葉の説明として取り上げたケ小平によるベトナ
ム戦争(中越戦争)後の、人民解放軍の100万人削減がありま
す。「兵士はたくさんいるが、無駄な兵士が、だぶついているだ
け」と判断し、兵士の大幅削減を決断したのです。
 そして、職を失った解放軍兵士の技術兵を中心にして、ケ小平
は、かつて武器製造の根拠地だった内陸部のあちこちで「自動車
産業」を起こすよう指示したのです。重要なのは「技術兵を中心
として」という部分です。これを「軍民転換」といいます。19
80年代のことです。
 任正非氏は、1944年に貴州省の極貧の家に生まれ、成人に
なる時点で文化大革命に遭遇しています。任正非氏は、重慶建築
工程学院(現在の重慶大学)で学んでいたのですが、卒業の一年
前に文化大革命が起きてしまうのです。
 文化大革命については、表面的にはきれいごとをいっています
が、その本質は、大躍進政策の失敗によって国家主席の地位を劉
少奇党副主席に譲った毛沢東共産党主席が、自身の復権を画策し
紅衛兵と呼ばれた学生運動を扇動して政敵を攻撃させ、失脚に追
い込むための、中国共産党内部での権力闘争です。
 とくに大学教授などの知識層が狙われたといいますが、非常に
多くの人が、この文革によって被害を受けたのです。共産党の資
料に残されていないのですが、40万人から1000万人の人が
何らかの被害を受けたといわれています。
 しかし、「農工兵」に関しては迫害から逃れることができると
知って、任正非氏は人民解放軍入隊を選んだのです。なお、「農
工兵」とは、「農」は農民、「工」は工場従事者、「兵」は兵隊
のことです。任正非氏は人民解放軍を志願したところ、重慶建設
工程学院で学んだ経歴により、基礎建築兵に配属され、正式に兵
士になったのです。
 もともと技術レベルが高かったので、順調に出世し、技術員、
工程師になり、副所長にまでなっています。しかし、そこで突然
解雇され、深せんの南海石油後方勤務サービスに配置換えになる
のです。ケ小平による人民解放軍の100万人削減の影響です。
 しかし、新しい仕事には興味も関心もない任正非氏は、周囲か
ら、2万1000人民元(日本円で約30万円)をかき集めて、
ファーウェイ(華為技術)を立ち上げるのです。1987年のこ
とです。
 しかし当時は、雨後の竹の子のように小さい企業が立ち上がっ
ては消えていくという時代であり、事業経営が最も難しい時代で
あったといえます。ファーウェイはどのようにして生き残ったの
でしょうか。遠藤誉氏は、このちっぽけな企業、ファーウェイが
生き残ったの理由には次の2つあるといいます。
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  1.通信機器開発&サービスをメインの事業にしたこと
  2.当時としては珍しい従業員持ち株制を導入したこと
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 ファーウェイは、起業時期のタイミングが実によかったといえ
ます。中国は、固定電話が普及しておらず、ポケベルの時代を経
て、いきなり携帯電話の時代に突入しています。ファーウェイは
それを先取りしたのです。従業員持ち株制も画期的です。当初、
任正非CEO自身の持ち株は1・3%、残りの98・7%の株主
はすべて従業員なのです。従業員のやる気が起きて当然です。
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 起業当初のホァーウェイの顧客は、中国電信、中国移動、中国
網通(網はインターネット)、中国聯通などの、中国企業が中心
だったが、1997年に香港のハチソン・ワンポアと海外契約を
得たのを皮切りに、2000年代以降は、ブリティッシュ・テレ
コム、ドイツテレコム、テレフォニカ、テリア・ソネラ、アドバ
ンスト・インフオ・サービスおよびシンガポール・テレコムなど
全世界の大企業向け事業も大きく展開して、世界のホァーウェイ
として一気にグローバル化していく。
 2012年には売上高でエリクソンを超えて、世界最大の通信
機器メーカーとなっている。製品によっては世界シェア1位だ。
特にスマホにおいては、出荷台数、シェアともに世界3位であり
2017年には世界シェアでアップルを抜いて世界2位になった
こともあった。            ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/047]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ急成長の謎を解く/日経XTECH
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   まずは、「ファーウェイ基本法」について。「ファーウェ
  イ基本法(以下、基本法と略)」とはファーウェイの基本理
  念や経営方針をまとめたものだが、驚くべきことにウィキペ
  ディアの中国版ともいえる「百度百科」にも一項目として記
  載され、全文が掲載されている。本書によれば、基本法は、
  1996年ごろから考案され、1998年に正式に発表され
  たものであり、基本理念のほかに、経営方針、組織編制、人
  材開発、管理方針、後継者およびその改正方法などからなる
  2万字に及ぶ「憲法」である。本書では事あるごとに「基本
  法」に言及され、いかにファーウェイにとってこの基本法が
  重要な存在かがわかる。
   また、本書では触れられていないが、「百度百科」ではこ
  の基本法について面白い解説を付けている。「この基本法が
  ほかの企業から大変な関心を寄せられているのは、普段低姿
  勢な(永井注:本書の中でも、任正非CEOについて何度も
  『低姿勢』『謙虚』といった表現が現れる)ファーウェイが
  このように高らかに自らの理念を謳い上げているからだ。こ
  のようなファーウェイの2面性がより人々に『ファーウェイ
  は理解できない』と感じさせるのである。」このように本稿
  の冒頭でも述べたとおり、中国人にとってもファーウェイは
  謎なのだ。なぜ、このように、ファーウェイは謎と感じられ
  るのか。            https://nkbp.jp/2u41PS8
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ファーウェイ本社.jpg
ファーウェイ本社
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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