2019年03月11日

●「米国政府によるZTE潰しの意味」(EJ第4964号)

 ハイシリコン(HiSilicon) とは、「海思(ハイスー)」とい
う中国語を英語表記したものです。なぜ、「海思」なのかについ
て、遠藤誉氏が追跡しています。大陸の中国で「海」という言葉
が出てくるのは、何か意味があると感じたからだそうです。
 ハイシリコンの総裁は、既に述べているように、1969年生
まれの何庭波氏という50歳の女性です。元ファーウェイの社員
で、2004年10月に独立して、ハイシリコンを創業していま
す。経営者になりたかったわけでなく、あくまで「自分は『工程
師』である」という精神文化を持っていて、半導体製品は外販せ
ず、ファーウェイのために研究し、ファーウェイのためにチップ
を開発しているのです。
 何庭波総裁とは、どういう人物なのでしょうか。
 何庭波総裁は、ハイシリコンの新入社員には、単なる挨拶を超
えて、いつも熱く語りかけます。そのなかで何庭波総裁は、次の
ように述べています。来月入社してくる新人に何を話すべきかの
参考になると思います。
─────────────────────────────
 私たちは国内各地だけでなく、世界とつながっています。そし
て必要が生じれば、どこにでも行きます。たとえば、私は(ファ
ーウェイ)入社したその日から、半導体チップの製造に取り掛か
りましたが、2年後の1998年には上海の研究所に行かなけれ
ばならない事態に迫られました。無線通信に関する研究拠点が、
上海にあったからです。
 そこで私は一人で上海に行き、そこのチームの仲間入りをして
研究開発に没頭しました。ようやく成果が出て、深せんに戻って
また半導体の研究開発に没頭しましたが、しばらくすると任総裁
にアメリカのシリコンバレーに行ってこいと言われたのです。
 私は、シリコンバレーに2年間出向しました。この2年間で私
が学んだものは多く、半導体設計の大きなギャップを思い知らさ
れました。その後、全世界から多くの多彩な人材を吸収するに至
りました。(中略)
 創造することに価値を見出して下さい。あなた方の技術と知識
をホァーウェイに注いでください。ホァーウェイは、あなた方が
いるからこそ美しく輝くのです。あなた方は高速鉄道のような動
力車に乗ったのではなく、あなた方がその先頭の運転席にいるの
です。運転するのは、あなた方なのです。
 ホァーウェイは、あなた方が輝かせるのです!自分の人生を美
しく輝かせることがホァーウェイを美しく輝くことにつながる。
期待しています!ありがとう!     ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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 この何庭波総裁の新入社員への挨拶から遠藤誉氏は、「海思」
という社名は「海の彼方から祖国を思う」と意味ではないかと推
定しています。祖国の中国から遠く離れたアメリカから、多くの
ことを学び、それを祖国の中国に持ち帰る──そういう思いが、
「海思/ハイスー」という社名になったというわけです。
 社名はさておき、ハイシリコンの最大の特色は、既に述べてい
るように製品を「外販しない」ということです。半導体を提供す
るのはファーウェイ一社のみというわけです。つまり、ハイシリ
コンという企業は、独立企業でありながら、ファーウェイの専属
の研究開発部門であり、他社には一切製品を提供しないことをポ
リシーにしているのです。
 そのポリシーを守る姿勢は、米クアルコムから長く半導体の提
供を受けていたZTE(中興通訊)が、クアルコムから突然提供
を断られ、ピンチに瀕したときも、ハイシリコンは提供に応じな
かったことでも、ポリシーを守る頑固さがわかります。仮に習近
平政権が命令しても提供しないと思われます。
 ZTEは、米国で成功した数少ない中国ブランドといえます。
ZTEは、高機能なスマホを低価格で販売することに加え、NB
Aの試合のスポンサーを務め、ロビー活動に多額の費用を投じて
政治家やパートナー企業から信頼を獲得し、米国市場で4位とな
る11%のシェアを獲得することに成功したのです。そのような
親米企業でも、国防に懸念があるとなったら、米国は絶対に許さ
ないのです。
 中国の通信機器に関しては、2012年の議会報告書書──そ
のタイトルは「中国の通信機器企業ZTEとファーウェイによっ
て引き起こされたアメリカの国家安全問題」の段階から、中国へ
の警戒感は強くなってきており、この問題に関しては、大統領よ
りも議会の方が警戒感が強いのです。したがって、この問題でト
ランプ大統領が中国と取引しようとしたら、米議会は絶対に許さ
ないと思われます。
 遠藤氏は、この米国政府によるZTE排斥問題に関して、自著
で次のように述べています。
─────────────────────────────
 トランプ政権が2018年4月17日に、中国の国有企業であ
るZTE(中興通訊)に、向こう7年間の取引禁止を発表すると
中国のネットは燃え上がった。多くは「やるなら、やれ!中国に
は華為と中微がある!」と叫んでいる。
 「中微」は、中国人が「中微半導体設備(上海)有限公司」/
AMECを指して言うときの略語だ。中国の一般庶民の感覚とし
て、ホァーウェイ、特にその頭脳であるハイシリコンと中微(A
MEC)を応援する声が高い。誰もZTEには関心を持たないし
中国の青年を取材したときの「ZTEはバカだから」という、吐
き捨てるような反応が一般的だ。そして異口同音に言うことは、
「トランプが中国の半導体産業の猛進を加速させた」という視点
だ。それは、残念ながら、真実に近い可能性を孕んでいる。
                 ──遠藤誉著の前掲書より
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/045]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人が知らない中国「ZTE」の覇権/米スマホ市場4位
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   米中貿易摩擦が悪化する中、最初の犠牲者となったのが、
  中国の通信機器大手「ZTE(中興通訊)」だ。同社の業績
  悪化は長期間に及びそうだ。
   米トランプ政権は深センに本拠を置くZTEが対イラン制
  裁に違反したとして、同社が米企業からスマートフォンや通
  信機器に不可欠な部品を購入することを7年間禁止すると発
  表した。
   この措置により、ZTEは主要事業の運営停止に追い込ま
  れている。トランプはツイッター上でZTEへの制裁緩和を
  示唆したが、同社の顧客の中には供給体制への不安から取引
  を縮小するケースが出ており、業績の影響は甚大だ。こうし
  た中、ライバル企業がZTEの顧客獲得に動いており、一度
  失った契約を取り戻すのは容易ではないとアナリストらは指
  摘する。トランプは、2018年5月14日に次のようにツ
  イートした。「巨大企業であるZTEが速やかに事業に戻れ
  るよう、習主席と方策を協議している。中国ではあまりに多
  くの職が失われた。既に商務省に対して指示を出した」。
   ZTEの中で打撃が最も大きいのは、スマートフォン事業
  だ。現在、アリババが運営する「Tモール」の、ZTE公式
  ショップは販売を停止している。また、オーストラリアの大
  手通信会社「Telstra」 は「米国の制裁により当社への商品
  供給が困難になった」と述べてZTE製スマートフォンの販
  売を取り止めた。        https://bit.ly/2Hq3aKY
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ZTE(中興通訊).jpg
ZTE(中興通訊)

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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