ます。中国工程院の設立に尽力し、2002年まで、工程院の副
院長を務めていた人物です。彼は、当時の中国製造(メイド・イ
ン・チャイナ)をどう表現するかと記者に聞かれ、次のように答
えています。
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生産量は非常に大きいが、しかし価値はそれほど高くない。メ
イド・イン・チャイナは、全世界を覆っている。多くの国がメイ
ド・イン・チャイナなしに生活することができないほどだ。しか
しその中国製は、未だ中低級の製品であることを認めなければな
らない。つまりひとことで言えば「大而不強」(大きいが強くな
い)という4文字で表現するのが、最も適切だ。 ──朱高峰氏
──遠藤誉著/PHP
『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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習政権が成立した年である2012年の中国の製造業の状況は
どうであったかについて、遠藤氏の本からまとめると、次のよう
になります。
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◎2012年/製造業の対前年増加幅
米国:1兆8533億ドル
中国:2兆3307億ドル
世界銀行の統計
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上記の数字で分かるように、中国は、額としては米国を大きく
上回っています。それは、全世界の製造業の20%の生産量を占
めています。
しかし、中国製造業の付加価値を調べてみると、そこには大き
な問題点を指摘できます。これについて遠藤誉氏は、次のように
述べています。
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工業先進国の製造業付加価値は、平均35%強であるのに対し
て、中国製造業の付加価値は21・5%に過ぎない。製造業の増
加幅が中国のGDPの32・6%しか占めていないのに対して、
その製品を製造するためのエネルギー消費量は全国のエネルギー
消費量の58・0%を占めている。つまり、生産性は32・6%
しかGDPに頁献していないのに、その製品を製造するためのエ
ネルギーは、国家全体の58・0%を奪っているので、建設的で
なく、損をしているということだ。 ──遠藤誉著の前掲書より
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要するに中国は、表面からは見えないキー・パーツの部分に弱
く、それらを外国から輸入し、組み立てているに過ぎない中国製
品が数多くあるのです。中国は、人体大の原子爆弾を作ることは
できても、心臓大のエンジンを製造することができないでいる状
態にあるのです。とくにエンジンを作ることができないでいるこ
とは有名です。そのおかげで日本電産は大儲けしています。
中国の製造業における問題点としては、次の3つを上げること
ができます。
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1.イノベーション能力と核心のコア技術に弱い
2.基盤技術(汎用性高い多目的技術)に欠ける
3.製造に当って資源の浪費と環境汚染がひどい
──遠藤誉著の前掲書より
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2012年の中国の技術のレベルでは、米国のそれに追いつき
追い越すためにはあと「30年」はかかる状態だったのです。中
国は、2025年を起点として、第2段階を2035年、第3段
階を2045年として計画していたのです。
問題は、少なくとも習近平政権ができるまでは、その程度の技
術レベルであった中国が、AIをはじめ、あらゆる技術のキー・
パーツになる半導体の分野において、信じられない速度で、米国
に追いついてきたことにあります。具体的にいうと、中国は、半
導体産業に関して、世界ベスト10に入る企業があらわれるほど
急激に成長してきているのです。
それが果して事実であるかどうか。もし事実であったとすると
なぜそんなことができたのか。これらについては、これから書い
ていくことになりますが、それが事実であるからこそ、トランプ
政権は、中国に貿易戦争を仕掛けたのです。しかし、その真の狙
いは貿易問題ではなく、「中国製造2025」にあります。
このトランプ大統領と習近平主席のバトルについて、遠藤誉氏
は、自著で次のように述べています。
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トランプは、この10年の問に中国が成し遂げるであろう成果
にストップをかけ、中国にアメリカを凌駕させる足がかりを絶対
に与えてはならないと、米中貿易戦争という手段を通して挑戦し
ている。それを見抜いたトランプの目は鋭い。
習近平は、この10年間で何としても中国のハイテク分野にお
けるコア技術の自国による自給自足を満たし、宇宙開発において
アメリカに追いつき追い越そうとしている。国家主席の任期制限
を撤廃してまで、自分の手で成し遂げようと死闘しているのであ
る。そうしなければ、彼が政権スローガンに掲げた「中華民族の
偉大なる復興」を成し遂げる「中国の夢」は実現せず、中国共産
党による一党支配体制は崩壊するという危機感を抱いているから
だ。「アメリカこそが偉大だ」とするトランプと「中華民族の偉
大なる復興」を叫ぶ習近平と、ここは「偉大さ比べ」になった格
好だが、どちらに軍配が上がるのか。
──遠藤誉著の前掲書より
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──[米中ロ覇権争いの行方/042]
≪画像および関連情報≫
●習近平の「自力更生」は「中国製造2025」の達成
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習近平が最近よく言う「自力再生」は、決して文革時の毛
沢東返りではなく、「中国製造2025」によりコア技術の
自給自足達成を指している。「中国製造2025」を見なけ
れば、中国も米中関係も日中関係も見えない。
その証拠に、2018年5月8日の中国政府の通信社「新
華社」電子版「新華網」の報道を見てみよう。「中国製造2
025:困難に遭い、自ら強くなる」というタイトルで「中
国製造2025」と「自力再生」の関係が書いてある。文字
だけでなく、写真に大きく「中国製造2025」とあるので
一目瞭然だろう。なお、中国語では「製造」は「制造」と書
く。小見出しには「2018年は絶対に普通ではない年にな
る!」とあり、冒頭に、おおむね以下のような趣旨のことが
書いてある。──いまわれわれは、国家戦略「中国製造20
25」を推進しており、改革開放40周年を迎えようとして
いる。ある国が、わが国に高関税をかけてわが国のハイテク
製品輸出に徹底的な打撃を与えようとしている。どこまでも
つきまとう執拗な封鎖を通して、われわれは「困難から抜け
出すには、ただ一つ自力再生以外にない」ということを知ら
なければならない!ここにある「ある国」とは、言うまでな
く、「アメリカ」のことである。
https://bit.ly/2IMrpVL
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習近平国家主席VSトランプ大統領


