2019年02月28日

●「習近平体制は簡単には崩壊しない」(EJ第4957号)

 事実上の終身国家主席の地位と権限を手に入れた習近平体制は
その直後に米国から貿易戦争を仕掛けられ、中国経済に大きなダ
メージを与えています。現在、中国国内で何が起きているかにつ
いて、日本総研理事の呉軍華氏は次のように述べています。
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 現状のままでは、習近平政権は続くでしょう。唯一、習近平政
権の阻害要因になりうるのが「アメリカ」という要素なんです。
今後アメリカがどの程度、中国に圧力をかけるか。それによって
中国国内にどのくらいの影響が出るか。
 現に最近、中国国内で現行政策への批判が表面化しつつあるの
です。習近平は、2014年頃からケ小平以来の中国の国家方針
であった「才能を隠して好機を待つ」という意味の「韜光養晦」
(とうこうようかい)を葬り、強硬な「対米主戦論」を前面に打
ち出した。ところが、昨年夏、米中貿易戦争が始まると、「習近
平は韜光養晦を止める時期を見誤った」という批判の声が出始め
たのです。これもアメリカが国内に与えた影響の一つです。
           ──呉軍華氏/『文藝春秋』3月特別号
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 2018年8月21日と22日の2日間、習近平主席は北京で
全国宣伝思想工作会議を招集し、社会主義思想の引き締めを図っ
たのですが、その席上、幹部たちに対して、次のように釈明して
いるのです。
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 私に対する個人崇拝が進んでいることは知らなかった。自分が
青年時代に7年間、下放されていた狭西省の寒村・梁家河が「革
命の聖地」となっていることを、中国中央電視台のニュースで、
はじめて知って驚いた。           ──習近平主席
           ──近藤大介著/NHK出版新書568
    「習近平と米中衝突/『中華帝国』2021年の野望」
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 これによって、党の指導部は方針を変更し、習近平主席のポス
ターを撤去したり、終身国家主席の誕生のために用意されていた
国威発揚映画『すごいぞ、わが国』の公開の中止を決めたりして
います。個人崇拝が進むのはまずいのです。
 現在のところ米中貿易戦争の3月1日の交渉期限は延期され、
3月中に米中首脳会談が行われる可能性が大です。しかし、これ
によって通商協議は解決する可能性がありますが、知財侵害や国
有企業への補助など、米国が問題視する中国側の「構造問題」は
落としどころはまったく見えない状況にあります。
 もしこの問題がこじれて、経済が悪化すると、中国はどうなる
のでしょうか。
 冒険投資家のジム・ロジャーズ氏は、リーマン・ショックから
10年が経過し、「次の経済危機は既に静かにはじまっている」
と述べ、その経済危機はリーマン・ショックをはるかに上回る規
模になるとし、次のような不気味な予言をしています。
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 中国での想定外の企業や地方自治体などの破綻が火種になるだ
ろう。中国では、この5年、10年に債務が膨張した。足元では
債務削減を進めているが、その影響で景気は減速し、世界経済も
停滞に陥る。            ──ジム・ロジャーズ氏
           2019年2月24日付、日本経済新聞
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 中国政府にとって一番怖いのは国民の反乱です。外部には伏せ
られていますが、現在中国の失業率は最悪の状態です。もし、米
国との交渉がうまくいがず、経済がさらに悪化した場合、共産党
体制に何らかの影響が出るのでしょうか。中国は、北朝鮮などと
違って、世界中に中国人は住んでおり、米国をはじめとする自由
な国の様子を見ています。それで自分の国の独裁政治は誤ってい
るとは考えないものでしょうか。
 これについて、呉軍華氏は、「共産党体制はそんなに簡単には
壊れない」として、次のように述べています。
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 共産党への反発は今もすでにあるんです。しかし、共産党への
反発=政治不安定とはならない。歴史を紐解くと、1960年代
文化大革命で何千万人が餓死し、人民の不満は募りました。しか
し、あれだけ酷い状況でも共産党は権力を維持した。「共産党や
習近平は気にいらない。でも彼らがいなければ国が大混乱に陥り
もっと大変なことになる」と考えていてる人が大半なのです。
           ──呉軍華氏/『文藝春秋』3月特別号
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 一党独裁で、政治的自由は与えないが、経済は自由で、金儲け
は賛成という国は中国以外にもあります。その典型はシンガポー
ルです。基本的にはベトナムもそうです。米朝首脳会談で、北朝
鮮が、その会談場所としてシンガポールやベトナムを選ぶのは、
そこにシンパシイを感じているからでしょう。
 しかし、シンガポールは小さな島国で、統治が簡単ですが、中
国のような大きな国で一党独裁制をとると、どうしても無理が出
てくるのです。呉軍華氏は、もし、中国の体制の危機について、
次のように述べています。
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 体制が揺らぐという意味で中国にとって最も脅威になるのは、
アメリカによる「ピンポイント・アタック」。つまり、有力者や
企業、機関を対象とした制裁だと思います。昨年9月、アメリカ
は人民解放軍の兵器管理部門である李尚福中央軍事委員会装備発
展部部長を制裁対象にしました。個人が対象になったのは初めて
です。12月には通信機器企業ファーウエイ創業者・任正非CE
Oの娘、孟晩舟副会長がカナダ当局に拘束されました。
           ──呉軍華氏/『文藝春秋』3月特別号
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/038]

≪画像および関連情報≫
 ●中国は5年以内に"隠れ不良債権"で壊れる/関辰一研究員
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   金融は各種の経済活動を下支えする社会インフラであるが
  ゆえに、容易に、経済と社会の危機を誘発する導火線にもな
  る。経済成長を続け、GDPでは日本を抜き去り、米国に迫
  る中国経済の「罠」とは、水面下で、金融リスクが大きく高
  まったことである。金融リスクの核心が不良債権問題である
  ため、その実態に迫った。後述するように中国の公式統計は
  信頼性に欠けると思われる点がいくつもあるからだ。
   中国の不良債権の実態を知るために、筆者は中国上場企業
  2000社余りの財務データを基に、中国の潜在的な不良債
  権の規模を推計した。結論を先に述べれば、推計額は公式の
  不良債権残高統計の約10倍となった。中国の不良債権問題
  は深刻であり、何らかのきっかけで金融危機が発生する可能
  性は払拭できない。
   不良債権とは、一般的に、金融機関にとって約定どおりの
  返済や利息支払いが受けられなくなった債権、あるいはそれ
  に類する債権を指す。中国では、金融機関がリスクを軽視し
  た融資審査のもと、過剰な融資を行ってきた。利息の支払い
  余力が不十分な企業に対しても、追加で資金を貸し続けてい
  るケースも多い。その結果、金融機関は巨額な不良債権を抱
  えるようになったとみられる。  https://bit.ly/2U7aTAQ
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呉軍華日本総研理事.jpg
呉軍華日本総研理事
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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