2019年02月27日

●「ドラゴンスレイヤーが米国を守る」(EJ第4956号)

 米国は、現在、本当の意味で中国を「脅威」と位置づけていま
す。それは「脅威」というより、「恐怖」に近い感情になりつつ
あります。「このままでは自分たちのヘゲモニー(主導的地位)
を奪れるかもしれない」という恐怖です。これについて、NMV
コンサルティング上級顧問のケビン・メア氏は、次のように表現
しています。
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 確かにアメリカ政府は、中国を「脅威」と位置付けています。
南シナ海・東シナ海における人民解放軍の軍事的な脅威、サイバ
ー攻撃の脅威、人工衛星破壊実験など宇宙開発における脅威、人
工島建設でサンゴ礁を破壊した環境に対する脅威・・・中国はア
メリカにとって、さまざまな意味で「脅威」となりつつある。
 しかし、私が強調したいのは、「脅威」である一方、巷間言わ
れている「中国が台頭したからアメリカが衰退した」という見方
は間違っているというものです。アメリカは中国が発展すること
は歓迎します。容認できないのは、国際ルールを無視し、「中国
のルール」を押し通そうとしていることなのです。
        ──ケビン・メア氏/『文藝春秋』3月特別号
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 現在のトランプ政権の対中国政策は、大統領選挙中のトランプ
陣営の政策顧問だったピーター・ナバロ氏とアレックス・グレイ
氏による次の論文に基づいています。なお、ピーター・ナバロ氏
は、現在、国家通商会議委員長の職にあります。
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       ピーター・ナヴァロ/アレックス・グレイ共著
「ドナルド・トランプのアジア太平洋への『力による平和』」
            ビジョン」/2016年11月発表
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 この共同論文では、「アジアの自由主義的秩序を保つためには
中国の軍事覇権を抑える力の実効が欠かせない」ことを強調して
おり、これに基づき、トランプ大統領は、アジア主体に海軍艦艇
の274隻から350隻への増強、そして、海兵隊の18万から
20万への増強計画を発表しています。
 心配の種は、トランプ大統領のむらっ気です。果して計画通り
実行できるかどうかです。北朝鮮の非核化問題でも、ノーベル平
和賞がちらつくと、大きく北朝鮮に譲歩してしまう可能性すらあ
ります。このトランプ大統領について、宮家邦彦氏は、次のよう
にコメントしています。
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 トランプの存在がトランプ政権の最大の変数ですからね。彼は
戦略家なのか。戦略がないのか。私はこの2年間ずっと自問した
けど、結局答えは出ませんでした。トランプは「自己愛性人格障
害」の傾向があり、人から賞賛されることが最優先される。内政
も外交もその手段に過ぎません。だから常識では考えられない判
断もします。
 しかし、多くのドラゴンスレイヤーがホワイトハウスにいる限
り、戦略的警戒感は解けないでしょうし、トランプも本能的に警
戒心は抱いていると見ています。
       ──宮家邦彦氏の意見/『文藝春秋』3月特別号
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 続いて、習近平体制について考えます。「2期10年」の任期
を撤廃し、事実上終身の国家主席になったことについて、どう見
るかです。
 米国の大統領の場合は、「2期8年」が限界であり、これ以上
大統領を務めることはできないのです。貿易戦争を仕掛けられて
慌てている中国にしても、じっと我慢して、トランプ後を待つ戦
略だってあるのです。
 習近平は権力欲にとりつかれているという見方もありますが、
宮家邦彦氏は「習近平は相当悩んだ末に権力の集中をしたのでは
ないか」という見方をしています。
 これと同じ考え方をするのは、元伊藤忠会長の丹羽宇一郎氏で
す。丹羽氏は、2010年、民間出身では初の中国大使に就任し
現在は、公益社団法人日本中国友好協会会長を務めています。尖
閣諸島国有化(2012年)当時の中国大使であり、大変苦労を
されています。その丹羽氏は、「私が習近平でも、改革のために
は権力を一手に掌握したかもしれない」といって、習近平主席に
よる憲法改正について理解を示しつつ、習近平氏について次のよ
うに述べています。
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 終身権力者の立場という利己主義的発想だけで、憲法を改正し
たと見ることは、習近平を見誤ることにつながる。習近平には、
いや大部分の国や組織の指導者の心底には、国民のためという大
義があると私は確信している。
 たしかに、憲法改正直後に散見した中国系メディアの「中国に
とって、社会主義の現代化を実現するにあたって重要なステージ
で、中国と中国共産党は安定した、強力で、一貫したリーダーシ
ップを必要としている」という主張は、いかにもご都合主義に映
る。だが、その一方で中国が世界の大国・一流国になるには、強
く優れたリーダーの存在が欠かせないというのも事実だ。
 習近平を一方的に独裁者と切り捨てるのではなく、政治の本道
に立って、もう少し彼の言葉と行動に注目してもよいだろう。
 習政権において権力が腐敗するか否かは、習近平の退き際にか
かっている。私は多くの日本のメディアや有識者が考えているよ
りもずっと早く、習近平本人による退任の宣言があるものと考え
ている。そのときは、盟友、王岐山も一緒かもしれないし、王岐
山のほうが少し早いかもしれない。人の真価は、結局その退き際
で決まるものだ。    ──丹羽宇一郎著/東洋経済新報社刊
          『習近平の大問題/不毛な議論は終った』
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/037]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、習近平終身主席か/文化大革命再来の懸念
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   中国共産党中央委員会は2月下旬、国家主席の任期の上限
  に関し、連続2期10年までとする条文を憲法から削除する
  改憲案を全国人民代表大会(全人代:日本の国会に相当)に
  提出した。3月5日に開幕する全人代で可決され、正式決定
  する。中国の改憲は2004年以来14年ぶり。習近平国家
  主席(党総書記=64)は13年に国家主席に就任しており
  今回の全人代で再選される。任期の上限撤廃により23年以
  降の3期目はおろか、終身主席も可能となる。
   国家主席は国家機構のトップで、国家元首に相当する。党
  トップである総書記の任期については党規約に明確な規定は
  なく、習氏に党、国家、政府、さらに軍という中国の4大権
  力が習氏に集中することになり、実質的に習近平独裁体制が
  始動する。
   また、今回の全人代では、習氏の指導理念を憲法に明記す
  ることも決まるほか、国家と政府の最高指導部人事にも習氏
  の側近が多数任命される見通しだ。党内外で習氏への個人崇
  拝の動きが広がっており、かつての毛沢東張りの独裁者の誕
  生となり、党内外では1000万人以上が殺害された文化大
  革命(1966〜76年)の悲劇が繰り返されることを懸念
  する声も出ている。       https://bit.ly/2IxERNl
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ケビン・メア氏.jpg
ケビン・メア氏 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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