2019年02月26日

●「ペンス演説は米政府の意向である」(EJ第4955号)

 『文藝春秋』3月特別号で、次のメンバーによる中国について
討論を特集しています。なかなか中身があるので、そのコアな部
分をご紹介します。
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     「トランプVS習近平/『悪』はどっちだ」
     宮家邦彦/キャノングローバル戦略研究所研究主幹
     呉 軍華/日本総研理事
    ケビン・メア/NMVコンサルティング上級顧問
     冨坂 聡/ジャーナリスト
               ──『文藝春秋』3月特別号
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 米国はアジアをどう見ているのか──トランプ政権は、明確な
形でアジア戦略を発表していませんが、今回の貿易戦争でそれは
見えてきています。
 通常であれば、そういう国家戦略は、大統領の一般教書演説で
発表されるものですが、トランプ大統領は、アジア戦略を中国へ
の貿易戦争というかたちでそれを示したのです。だが、トランプ
大統領が気にしているのは、対米貿易赤字だけです。しかし、ペ
ンス副大統領が、昨年10月の演説で米国の考え方を表明し、ト
ランプ発言を補っています。これについて冨坂聡氏は次のように
解説しています。
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 現在のアメリカの考え方は、昨年10月のマイク・ペンス副大
統領の演説によく表れていました。端的に言えば、アメリカが、
「西側的な価値観、国際ルールの中での(中国の)台頭ならば歓
迎する。しかし、今の習近平のやり方は間違っている。それを修
正するのか、しないのか」と、中国に決断を迫ったのです。
        ──冨坂聡氏の意見/『文藝春秋』3月特別号
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 トランプ大統領のツイートを見ていると、混乱することが多い
と思います。あれほど、ファーウェイ排除に強硬姿勢を見せてい
たのに、このところ、一転「排除見直し」にも言及しています。
中国は、これには徹底抗戦の構えです。米国の排除の呼びかけに
乗ろうとする米国の同盟国に対して露骨な嫌がらせを執拗に繰り
返しています。
 米国と諜報活動などの機密情報を共有する5ヶ国で作る「ファ
イブアイズ」という協定があります。米国、英国、カナダ、オー
ストラリア、ニュージーランドの5ヶ国です。これら5ヶ国は、
米国の呼びかけに対して、ファーウェイ排除を決めています。秘
密情報を共有するのですから当然です。
 これに対し中国は、カナダ以外の4ヶ国に対して、露骨な嫌が
らせをやっています。英国のハモンド財務相は訪中を突然キャン
セルされ、ニュージーランド航空機は理由もなく上海着陸を拒否
される。ニュージーランド首相の訪中は延期され、オーストラリ
ア産の石炭の輸入禁止などの露骨な嫌がらせです。
 こうした中国の嫌がらせに屈したのか、英高官は「ファーウェ
イ製品の安保上のリスクは管理可能」と発言し、ニュージーラン
ドのアーダン首相は、「われわれはまだファーウェイ製品を排除
すると決めたわけではない」と発言するなど、足元の乱れが起き
ています。ファーウェイ幹部を逮捕したカナダについては、カナ
ダ人複数名の身柄を確保するなど、中国はやりたい放題の圧力を
かけています。
 そのせいか、ファーウェイの創業者の任正非氏は、「我々を宣
伝してくれて本当に感謝している。いまわれわれは5Gを売りは
じめているが、すぐに6Gを迎えることになる」と米国に対して
皮肉を交えつつも自信をのぞかせています。
 しかし、宮家邦彦氏は、トランプ大統領が何をいおうとも、ペ
ンス副大統領の演説が米国政府のコンセンサスであるとして、次
のように述べています。
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 ペンス副大統領の演説は、アメリカ政府のコンセンサスだと考
えていいと思います。ペンスはオーソドックスなワシントンの論
理を知る政治家です。あの内容は、突然思いついたわけではなく
何ヶ月もの間、各省庁が議論や協議を行い、一枚のペーパーにな
った演説だと見るべきでしょう。
 アメリカは、自国の脅威となるものは、すべて潰してきた国で
す。不正義と見なしたものはどんな力を使ってでも変えるという
国ですから、。日本も1930〜40年代にかけて脅威とみなさ
れ、潰された。だから今回も中国に対してとことんやる気とみた
ほうがいい。 ──宮家邦彦氏の意見/『文藝春秋』3月特別号
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 米国内には、中国に対する姿勢について、次の2つの人種がい
るのです。
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     1.   パンダハガー(対中融和派)
     2.ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)
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 宮家邦彦氏は、現在のワシントンは、パンダハガーが政策の決
定過程から激減しているといっていますが、これを呉軍華氏は次
のように肯定しています。
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 2015年あたりが転換期だったと思います。元CIAのマイ
ケル・ピルズベリーなど、代表的なパンダハガーたちが相次いで
公の場で反省の弁を吐露し始めた。流れが変わると思っていたら
やはりドラゴンスレーヤーが増えたのはもとより、対中融和を訴
える声がほぼなくなっていきました。トランプ政権はこの流れを
受け継いだ形で対中アプローチをしているといっても過言ではあ
りません。   ──呉軍華氏の意見/『文藝春秋』3月特別号
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/036]

≪画像および関連情報≫
 ●欧州のパンダハガー(独仏英)が中国警戒に急傾斜
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   英国政府筋はチャイナバッシングの開始を示唆している。
  欧州はこれまでパンダハガーとして、やみくもに中国とのビ
  ジネスを拡大してきた。そのためにもAIIBにも率先して
  加盟した。
   しかし買収されやすく、他方で欧州企業の中国企業買収に
  は高い壁がある。見えない条件があって、うまく行かないと
  いう不満が拡がっていた。ロンドンの豪華住宅地やマンショ
  ンの不動産価格は中国の爆買いによってつり上がり、庶民か
  ら不満が突出し始めた。
   中国と異常なほどの「蜜月」を享受してきたドイツ政府も
  EU加盟国に、「不公平な中国からの投資を警戒するよう」
  に呼びかけた。EU全域には中国の企業買収などの過激な投
  資進出に不快感が拡がっていたが、中国贔屓と見られたドイ
  ツでも、とうとう中国への堪忍袋の緒が切れた。メルケルの
  中国傾斜路線に黄信号が灯ったのだ。
   直接の理由は中国の国家安全保障に直結するハイテク技術
  やロボット企業を片っ端から買収し始めたことへの不安から
  である。シグマ・ガブリエル独副首相は中国と香港を五日間
  に亘って訪問したのち、「EUは中国のIT企業や最先端技
  術の企業買収を許可してきたが、われわれEUのメンバーが
  中国の企業や思案買収は対等ではなく不公平である」と不満
  をぶち挙げた。「中国の通商関係を切る意思はさらさらない
  が」としてミカエル・クラウス駐中国独大使も発言を補強す
  る。              https://bit.ly/2IxgTlj
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宮家邦彦氏.jpg
宮家邦彦氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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