2019年02月21日

●「米中貿易戦争で中国経済失速拡大」(EJ第4952号)

 2月14日のEJ第4947号から書いてきた中国のEC企業
の雄、アリババのジャック・マー(馬雲)会長の突然の退任の話
はこのくらいにして、米中貿易戦争の話に戻ることにします。
 2月20日現在、ワシントンにおいて、次官級の貿易協議が続
いていますが、本日と明日の22日にかけて開催する予定の閣僚
級の会合に向けての地ならしをやっています。3月1日まで今日
を含めて8日しかありませんが、トランプ氏は次のように延長の
可能性をほのめかしています。
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 タイミングは正確にはいえないが、3月1日は「魔法の日(マ
ジカル・デイト)」ではない。多くのことが起こりうる。
                   ──トランプ米大統領
       ──2019年2月20日付、日本経済新聞夕刊
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 そもそも中国は米国に経済では絶対に勝つことは困難です。そ
の国力の差が謙著だからです。2017年の時点で、中国のGD
Pは米国の63・2%であり、約3分の2です。したがって、両
国がガチンコでぶつかれば、その体力差は歴然としています。
 もうひとつ、中国は、金融システムが米国に比べて脆弱です。
自由市場のなかで150年もの間、もまれ抜いてきている米国の
金融システムに比べて、中国のそれは、1992年に始めた社会
主義市場経済という独自のシステムであり、その強靭さは比較に
ならないでしょう。ソ連が崩壊したことからわかるように、国家
が経済をコントロールできるかどうかはきわめて疑問です。しか
し、中国はできると固く信じているようです。
 米中貿易戦争がはじまってからも、秋ぐらいまでは中国経済は
きわめて好調だったのです。しかし、今にして思うとそれは駆け
込み需要であり、12月には遂に前年同月比4・4%減少の失速
になったのです。中国の経済は次のように誰の目にも明らかなよ
うに、目下失速しつつあるのです。
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 中国経済に関して、足元で最大の衝撃は、昨年の自動車販売が
2・8%減の2808万台と前年比マイナスに転落したことだろ
う。日本の新聞は「28年ぶり」と書いているが、28年前とは
89年6月の天安門事件の翌年で、中国経済は国際制裁を受け、
過去最悪と言われた年であり、昨年の自動車販売は事実上、史上
初のマイナスなのである。
 それが年間3000万台を前にした足踏みでないことは年明け
の動きでわかる。北京、上海ともに自動車販売は「ディーラーが
一部の店舗の閉鎖を始めた」(中国の自動車業界関係者)ほどの
不振。2月5日の春節を前に例年なら盛り上がる高額商品の消費
は真逆の様相を示している。
            ──『選択』/2019年2月号より
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 「小米(小米科技)」という中国の企業があります。スマホ会
社として創業し、現在、スマホの世界シェア4位のIT大手企業
です。中国のIT企業というと、どちらかというと、習近平主席
から睨まれている企業が多いのですが、小米は習近平主席のお気
に入りといわれています。
 中国当局は、中国国内の株式市場を活性化させるため、すでに
海外市場で上場している中国の有力企業や「ユニコーン」と呼ば
れる中国の新興企業群を中国国内でも上場させる計画を立ててい
ます。ちなみに「ユニコーン」と呼ばれる企業とは、次のような
企業のことです。
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 「ユニコーン企業」とは、創設10年以内、評価額10億米ド
ル以上、未上場、テクノロジー企業といった4つの条件を兼ね備
えた企業を指す。アメリカの調査機関の集計によれば、2017
年12月1日時点で、世界に220社のユニコーン企業が存在し
それらの多くはアメリカもしくは中国の企業だ。アメリカ発の企
業は109社で全体の49・5%を占めている。これに続いて中
国発の企業が59社で全体の26・8%を占める。日本は(当時
上場が決まっていなかった)メルカリの1社のみ。
                  https://bit.ly/2BL6MDq
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 中国には、CDR(中国預託証券)という制度があります。ア
リババやテンセントなどの中国のIT企業は、中国ではなく、米
国や香港で上場しているので、中国国内の投資家がそれらの企業
の株式を購入するにはカベがあるのです。そこで、他国で上場さ
れている株式を人民元建てで取引できるようにする制度です。中
国国内の信託銀行に証券を預けて、受領書を発行してもらうこと
で、実質的に株式を保有できるのです。これをCDR(中国預託
証券)といい、CDRは次の頭文字をとったものです。
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        CDR
        Chinese Depositary Receipt
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 中国当局としては、CDRの最初の適用事例としようとしたの
は、小米だったのです。小米もこれを受け入れ、香港市場と上海
市場に同時に上場する計画を立てていたのです。資金調達予定額
は、それぞれ50億ドルで、香港と上海で100億ドルを狙って
います。
 しかし、小米は、6月19日になって、突然上海での上場を延
期し、香港でのみ上場したのです。小米は、中国当局との約束を
破ったことになります。これは相当勇気のいることです。
 小米の創業者の雷軍CEOは、米中貿易戦争による中国経済の
不安定さに懸念を抱いたのです。ビジネスマンとしては、当然の
判断であるといえます。これは、中国内外の有力企業の「中国離
れ」を意味しています。中国経済は現在どんどん不安定化を増し
ています。      ──[米中ロ覇権争いの行方/033]

≪画像および関連情報≫
 ●日本が中国に「ユニコーン企業」数で大敗北を喫した理由
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   グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンという4
  大IT関連企業は、それぞれの頭文字を取ってGAFAと呼
  ばれることがある。一方、百度(バイドゥ)、アリババ、テ
  ンセントの3社の呼称であるBATに、ファーウェイのHを
  付け加え、私はこれら4社をBATHと呼んでいる。
   BATHの成長はきわめて著しく、GAFAを猛追してい
  る状況だ。特に上場済みのBATの時価総額は2017年の
  1年間で倍増し、2017年12月末時点の額を合計すると
  1兆米ドルを超えている。
   個別で見た場合、GAFAの時価総額に続くのは、アメリ
  カ企業を除くと6位のテンセントと8位のアリババのみだ。
  米中企業以外を見ていくと、ヨーロッパ企業の最上位は18
  位の英蘭企業のロイヤル・ダッチ・シェルで、時価総額は、
  2746億米ドルである。トヨタは42位にランクインして
  おり、時価総額は1891億米ドルだ。ヨーロッパ勢も日本
  勢も、米中のトップ企業からは大きな差をつけられていると
  見ていいだろう。では中国のBATHがアメリカのGAFA
  を追い越す日はやってくるのだろうか?利益額ではすでにア
  リババはアマゾンを大幅に上回っている。時価総額ではアマ
  ゾンに及ばないアリババだが、いずれアマゾンを凌ぐことに
  なるだろう。          https://bit.ly/2BL6MDq
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中国内の「小米」の店舗.jpg
中国内の「小米」の店舗
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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