2019年02月20日

●「馬雲会長は先を読んで逃げたのか」(EJ第4951号)

 一連の急成長企業の若手経営者、「安邦保険集団」の呉小暉C
EO、フランスで急死した「海航集団」の王健会長、そして米国
で逮捕された「京東集団」の劉強東CEO、いずれも不可解な事
件で失脚させられています。
 一般的な観測では、これらの若手経営者は、これからの中国を
支える重要な人材であり、国のトップである習近平主席としては
交流を密にしているとされていましたが、そうではなく、むしろ
警戒心を高め、敵対しているのです。習近平政権にとって最も重
要な国有企業の存在を脅かす存在としてとらえているようです。
中国の民営企業の位置付けはあくまで次の通りです。
─────────────────────────────
    外資系企業<中国の民営企業<中国の国有企業
─────────────────────────────
 このうち、安邦保険集団の呉小暉CEOと、海航集団の王健会
長のケースには共通点があります。
 呉小暉CEOは、ケ小平の孫娘の婿であり、安邦保険集団はケ
小平一族の企業なのです。中国建国十大元帥のひとり陳毅の息子
・陳小魯も董事を務めています。ケ小平と陳毅という最強の革命
ファミリーの名前を背景に、呉小暉は“中国のバフェット”と呼
ばれる手腕で一民間企業・安邦集団を巨大化し、中国2位の保険
収入を誇るまでに成長させています。
 故王健氏が率いていた中国複合企業、海航集団(HNAグルー
プ)は、江沢民派が後ろ盾といわれています。HNAの大株主で
ある海南省慈航公益基金会のトップが海南省元高官である一方で
HNAが89年創業当時から、資金調達で当時の劉剣峰・海南省
省長のバックアップを受けていたのです。
 劉剣峰氏は、1984年に中国電子工業部の副部長兼規律検査
組の組長を務め、1997年には、国有通信大手のチャイナ・ユ
ニコムの会長に就任しています。これに対して、江沢民氏は19
83年〜85年まで電子工業部部長(大臣クラス)を務めており
劉剣峰氏の上司の関係です。それに加えて、チャイナ・ユニコム
は、江沢民氏の長男である江綿恒氏が実質オーナーを務める江沢
民一族の利益基盤であり、そういう関係もあって、HNAのバッ
クには江沢民一族がいるのです。
 習近平主席は、成功した若手経営者のバックには大物の政治が
いるとして、とくに警戒しています。なかでも、江沢民元主席の
勢力がバックにいる民営企業に対しては、さまざまな方法を駆使
して潰しにかかります。
 ジャック・マー(馬雲)氏は、江沢民元主席の孫で、投資ファ
ンドを運営する江志成氏と近い関係にあります。江志成氏は、江
沢民氏の孫です。これは、アリババの「潜在的リスク」といわれ
ジャック・マー会長も、十分それを意識していたのです。
 中国に詳しい宮崎正弘氏は、アリババのジャック・マー会長と
江沢民派の関係について、次のように書いています。
─────────────────────────────
 アリババは中国最大のネット通販、そのシェアは8割を超え、
筆頭株主は孫正義の「ソフトバンク」である。つまり最大の裨益
者は日本企業という皮肉!
 創業者の馬雲は通販ビジネス成功の勢いに乗って盛んにM&A
作戦を展開し、映画製作、百貨店、サッカーチームにまで経営の
手を広げた。馬雲は世界的なビジネスリーダーとなり、神話も生
まれた。本社は浙江省杭州市。ハイテク団地に近い川岸に巨大な
本社ビルがある(筆者も何回か目撃しカメラに収めた)。
 中国の通信ビジネスで大成功を収めたのは、このアリババと、
「騰訊」、そして「百度」だ。アリババのCEO馬雲は個人資産
が218億米ドルといわれ、江沢民の孫、江志成と「親密」な関
係が指摘されている。江志成は米国留学後、香港へあらわれて、
「博裕ファンド」を設立した。
 この江沢民の孫ファンドが、アリババの相当数の株主であるこ
とが分かっている。また、このファンドが、馬雲のすすめるベン
チャー・ビジネスに出資しているとも云われ、持ちつ持たれつの
ズブズブ関係がある。おりから江沢民の子分だった周永康ら「石
油派」が失脚し、江沢民は、捲土重来を期していると囁かれてい
る。                https://bit.ly/2SGdtkD
─────────────────────────────
 つまり、アリババは、早い時点から、習近平政権に睨まれてい
たし、ジャック・マー氏自身も十分それを認識していたのです。
2015年には、中国人民大学公共管理学の劉太剛氏が次のコラ
ムを書いてからは、アリババに対する風当たりは一層厳しくなっ
たのです。
─────────────────────────────
     アリババのビックデータは国家安全を脅かす
─────────────────────────────
 2017年には、中国人民銀行(中央銀行)がアリババのアリ
ペイはじめ、電子マネーを傘下に収容する通達も出しています。
建前は、スマホ決済の安全性を高めるためとなっていますが、こ
れによって、2019年以降、年換算で1000億円相当のアリ
ペイ金利収入が、人民銀行に接収されることになっています。
 こうした状況を踏まえて、時代の空気に敏感なジャック・マー
会長は、逃げを打ったのではないかと考えられます。
 福島香織氏は、これは終生国家主席を続けようとする習近平主
席への痛烈な、最後の当てこすりであるとして、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 野心の強い劉強東がはめられ、賢い馬雲は逃げを打った、と言
う噂が本当なら、声高にスゴイと叫ばれる中国のIT業界の前途
は、けっこう暗雲が垂れ込めているという気もするのだ。
                  https://bit.ly/2tonYtV
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/032]

≪画像および関連情報≫
 ●上場後のアリババを「やっつける」か/北京指導部情報
  ───────────────────────────
   【大紀元日本9月19日】中国の電子商取引最大手、アリ
  ババ集団(BABA)は19日に、ニューヨーク証券取引所
  (NYSE)に上場する見通し。米紙ニューヨーク・タイム
  ズ(NYT)は今年7月、謎めいた政治的背景を持つアリバ
  バの投資会社や「紅二代」株主について報じた。香港メディ
  アは最近、北京指導部の情報筋の話として、中国当局は米国
  上場後にアリババを「やっつける」可能性があると伝えた。
   NYT紙は7月21日、長篇評論「アリババの背後にある
  多くの「紅二代」株主が米国上場の真の勝者」を掲載し、深
  い政治的背景を持つアリババの投資会社の状況を明らかにし
  た。報道によると、江沢民元国家主席の孫、江志成氏が設立
  した「博裕ファンド」や、陳雲元副総理の子息、陳元氏が、
  15年間率いた「国開金融」(CDBキャピタル)、中国共
  産党序列5位の劉雲山政治局常務委員の息子、劉楽飛氏や中
  国共産党の革命元勲、王震・大将の息子、王軍氏に関係する
  「中信資本」(シティック・キャピタル)など、いずれもア
  リババに投資しているという。NYT紙はまた、「今や、ア
  リババを倒すためには巨大な衝撃を与える必要がある。・・
  ・諸々の国家部門では多くの密接な政治的同盟者を有する」
  と、北京ベースの証券分析会社美奇金投資コンサルティング
  会社の共同創立者楊思安氏の話として述べた。
   香港誌「中国密報」の最新号は、「アリババと四大太子の
  黄金の宴」と題する記事では、北京の情報筋の話として「N
  YTの分析は根も葉もない話ではなく、目下の中南海(北京
  指導部)の情勢に関する一つの客観的論述である。
                  https://bit.ly/2UXX7Aw
  ───────────────────────────

江志成氏/江沢民元主席の孫.jpg
江志成氏/江沢民元主席の孫
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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