2019年02月18日

●「中国の民間企業を気にする習体制」(EJ第4949号)

 習近平国家主席にとって、国有企業ほど重要なものはないと考
えられます。国有企業は共産党の利権の巣窟であり、もし国有企
業が弱体化すれば、共産党も弱体化するからです。そのため、市
場での企業の優遇状況が以下のようになるようにしていますが、
これでは、他国、とくに米国とまともな投資協定などは結べない
のです。現在米国との間でまさにこれが問題になっています。
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    外資系企業<中国の民営企業<中国の国有企業
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 それに、習近平主席は、経済問題を政治問題の延長線上でとら
えています。つまり、自己の権力と利権が増大する経済政策こそ
が、習主席にとって正しい経済政策なのです。
 その習主席の経済ブレーンの筆頭格が劉鶴氏です。2018年
3月19日に、第2次李克強内閣の国務院副総理に就任していま
すが、劉鶴副首相は習主席の意向を踏まえて、国有企業改革をめ
ぐっては縮小を目指す李克強総理より、拡大を掲げる習近平総書
記の立場を代弁しています。いわば、李克強首相の経済政策にブ
レーキをかける役割を劉鶴氏が担っているといえます。
 このように、習主席にとって社会主義は何よりも大事なもので
あり、就任以来イデオロギーの引き締めを図っています。米国と
しては、中国経済が発展すれば必ず市場経済に移行すると考えて
いたものの、習主席は中国を真逆の方向に引っ張っていこうとし
ています。それがまさに米中貿易戦争というかたちで激突してい
るといえます。
 このことについて、北海道大学大学院公共政策学研究センター
の西本紫乃研究員は、次のように述べています。
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 2016年12月中旬、教育部の陳宝生部長(大臣に相当)が
共産党の機関誌『紫光閣』に教育機関におけるイデオロギーの徹
底強化に関する記事を発表した。教育機関のイデオロギーを徹底
することで体制の維持を強固にするとともに、次世代を担う若者
に対して正しい思想教育をしなければならない、という趣旨の文
章である。この陳宝生部長の文章で注目すべきは、「敵対勢力」
の中国への攻勢を防ぐ必要があると述べている点である。「敵対
勢力」が中国に侵入するときは、まず教育システムに入り込み学
校を乱すのだという。「敵対勢力」が具体的に何を指すのか明確
ではないが、国外からの脅威というより、おそらく内なる敵を指
しているのだと思われる。つまり、中国国内の西洋の哲学や価値
観を教える教員や体制批判的な意見をもつ人を「敵対勢力」と見
ているのだ。中国国内の有識者はこの文章を、教育機関内部の体
制に従順でない人たちを排除するための、クリーンアップキャン
ペーンの開始宣言だと見ている。   https://bit.ly/2SNgmQb
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 西本紫乃研究員は、習近平主席の独特の人事について解説して
います。習主席は、自身の政権をつくるに当って、自分が歴任し
たポストでのかつての部下を中心に要職に起用しています。安倍
首相と同じいわゆる「お友だち人事」です。そして、その人物に
対し「クライエンテリズム的人間関係」を強く求めるのです。
 「クライエンテリズム的人間関係」とは、いわゆる「親分子分
関係」のことです。コトバンクには次のように出ています。
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 人から受けた好意に対してはお返しをするという社会的交換の
一種で、互酬的関係という。ある特定の人から何かを頼まれたと
きに、過去にその人から受けた好意に照らして断りきれないとい
う感情。親分・子分の関係,パトロン・クライエントの関係はこ
うしてできあがる。クライエンテリズムは,このような特定の人
間に結びつく影響力の関係である。一般に前近代的なものといわ
れるが,現在でも政治や国家を「好意の源泉」とする政治的なク
ライエンテリズムは,南イタリアのキリスト教民主党などにみら
れる。    ──ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
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 習近平主席に取りたててもらった部下たちは、子分として習主
席の掲げる左派イデオロギーを受け継ぎ、それをさらに加速させ
る旗振り役を任じなければならないのです。それが、引き立てて
もらった恩にお返しすることになるのです。
 習近平体制ではさまざまな規制が強化されています。2016
年11月には「国民教育促進法」の修正案が可決され、2017
年以降、私立の小中学校の設立ができなくなっています。教育機
関のイデオロギーによる囲い込みの一環であり、こうした規制は
今後、ますます強化されていくと考えられます。
 こういう中国の習近平政権において、いちばん頭の痛い問題は
中国の民間企業、それも成功をおさめ、急速に伸びつつある民間
企業のCEOです。彼らの多くは、外国からの資本提供を多く受
けている多国籍企業であり、表面上はともかく、ハラの中では、
自由市場を望んでいる──これは、現在の中国の社会主義市場経
済とは本質的に相いれないからです。
 それにしても、このところ中国では、安邦保険、海南航空集団
万達集団などの民営企業のトップが失脚したり、世間からバッシ
ングを浴びることが相次いでいます。
 「安邦保険」に関しては、創業者の呉小暉氏を詐欺や職権乱用
の罪で懲役18年とする判決が出されています。習近平指導部は
個人資産105億元(約1800億円)を没収し、呉氏を厳罰に
処しています。「海南航空集団」は、中国最大の民間航空コング
ロマリットですが、海南航空集団の会長、王健が旅先の南フラン
ス・プロバンスで客死しています。「万達集団」は中国最大財閥
・王健林率いる企業ですが、経営危機に陥っています。
 こういうことが現在中国では、相次いで起きているのです。こ
れらの事件に関し、アリババのジャック・マー会長が、強い不安
を感じたとしても不思議はないのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/030]

≪画像および関連情報≫
 ●ケ小平一族の企業「安邦」、急ブレーキの意味
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   中国の代表的“紅色企業”安邦保険集団が揺れている。紅
  色企業とは、革命に参加した主要ファミリーが経営や資本に
  かかわっている企業を指すが、この企業のCEOはケ小平の
  孫娘の婿・呉小暉。つまり、ケ小平一族の企業という、中国
  最強と見られる免罪符を持っていた。しかも、中国建国十大
  元帥のひとり陳毅の息子・陳小魯も董事を務めている。ケ小
  平と陳毅という最強の革命ファミリーの名前を背景に、呉小
  暉は“中国のバフェット”と呼ばれる手腕で一民間企業・安
  邦集団を巨大化し、中国2位の保険収入を誇るまでに成長さ
  せた。だが、この安邦の躍進に習近平がブレーキをかけてい
  る。その意図はどこにあるのだろうか。
   2017年5月5日午後、中国保険監督管理委員会(保監
  会)は安邦保険集団傘下の安邦人寿保険株式会社に対して、
  3ヶ月の新規製品の発売禁止処分を決定した。これは安邦人
  寿の発売する安享5号というハイリスクユニバーサルライフ
  保険が、規制・監督を逃れて市場秩序を乱しているなど、2
  種類の保険商品に違反が見られたことに対する処罰というこ
  とになっている。その前の4月、安邦による米保険会社のフ
  ィデリティ・ギャランティ生命買収などに保監会がストップ
  をかけた。香港紙によれば、安邦の海外資産比率が高すぎる
  のが理由という。キャピタルフライトを食い止めるために、
  中国当局が海外投資を抑制しているにもかかわらず、安邦が
  言うことを聞かないので、本格的に圧力をかけ始めた、と見
  られている。          https://bit.ly/2tqMc6S
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安邦保険集団.jpg
安邦保険集団
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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