2019年02月15日

●「経済発展を無視した国有企業改革」(EJ第4948号)

 中国経済を正常軌道に乗せるには、国有企業改革に手を染める
必要があります。2012年に発足した習近平体制は、それに着
手する絶好の機会だったのです。なぜなら、中国の社会主義市場
経済の「経済」を担当する国務院総理の李克強氏が、経済にすこ
ぶる詳しいプロであったからです。
 李克強氏は、早速「リコノミクス」を策定し、国有企業改革プ
ランを作っています。その内容は概略次の通りです。
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 第1段階は、国有企業の市場化だ。市場に合わない、いわゆる
親方日の丸的な制度は、すべて削ぎ落としていく。第2段階は、
市場の多元化だ。中国の市場は、国有企業、民営企業、それに外
資系企業を、すべて平等に扱うようにして、競争の原理を働かせ
る。そして第3段階が、国有企業の民営化だ。民間にできること
はどんどん民間に権限を委譲し、市場の活性化を図っていく」。
        ──近藤大介著/講談社+α新書711−1C
          『中国経済「11OO兆円破綻」の衝撃』
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 しかし、「3中全会」において採択された「公報」で示された
国有企業改革に関する記述は、次のようなものです。この公報を
作成する起草委員会から、肝心の李克強首相を外しているので、
この考え方に李克強首相の意見は反映されていません。
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 揺るぐことのない公有制経済の発展を強固なものとし、公有制
の主体的地位を堅持し、国有経済の主導的な作用を発揮し、国有
経済の活力、コントロール、能力、影響力を不断に増強させる。
公有制を主体とした多種所有制の経済は、中国の特色ある社会主
義制度の支柱である。      ──「公報」/3中全会より
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 抽象的にボカされ、何をいっているのか明確ではありませんが
国有企業の民営化どころか、強化とも取れる宣言であるといえま
す。公有、公有、公有と公有が強調されています。これは、習近
平公有企業改革の伏線だったのです。習近平氏は、かねてから、
トップに就いたら必ずやると決めていたことがあります。これに
ついて、近藤大介氏は、次のように書いています。
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 習近平主席は、2012年11月に中国共産党のトップに立っ
て以来、決して表には出さないが、一貫した「政治目標」を持っ
ている。それは最大最強の長老である江沢民元主席及びその一派
を壊滅させるというものだ。なぜなら、石油、鉄道、電力、資源
・・といった多くの利権を、江沢民一派が手放さなかったからで
ある。そして、こうした利権の温床こそが、基幹産業を寡占する
国有企業に他ならなかった。   ──近藤大介著の前掲書より
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 習主席は、2012年の年末から、「腐敗防止キャンペーン」
の名の下に、かねてからの計画を実行に移します。まず、やった
ことは、周永康前・中央政治局常務委員の失脚です。周永康氏は
「江沢民の金庫番」といわれた人物です。2013年12月に身
柄を拘束し、2015年6月11日に無期懲役を科しています。
 そのうえで習近平主席は国有企業改革に着手します。2015
年8月24日のことです。習主席は、「中国共産党と国務院の国
有企業改革を深化させるための指導意見」と称する長文の通達を
共産党および政府として決定しています。その「目的」について
は、次のように書かれていたのです。
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 中国の偉大なる社会主義の御旗を高く掲げ、党の国有企業への
指導を強化させ、強大で優秀な国有企業を作り、中華民族の偉大
なる復興という中国の夢の実現に、積極的に貢献することを目的
とする。揺るがない公有制経済、社会主義市場経済、監督管理強
化、党の指導などを基本原則とする。
         ──「中国共産党と国務院の国有企業改革を
              深化させるための指導意見」より
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 何を狙っているのかというと、国有企業を分類し、そのうち優
秀な国有企業を中心に、党の指導強化の下で、他を淘汰していく
というのです。そしてその改革を2020年までに完了させると
しています。
 リコノミクスでは、国有企業の市場化→多元化→民営化の3ス
テップで進めるというまともなものです。経済を発展させるには
「民営化」は欠かせないのです。しかし、その姿勢はカケラもな
く、「焼け太りによる市場の寡占」を目指すものといっても過言
でぱないのです。この指導同意見に対して、市場は敏感に反応し
ています。
 9月14日月曜日、上海総合指数は先週末に比べて2・67%
安い3114ポイントまで急落しています。これは、習近平就任
以来、7回目の暴落で「第7次習近平暴落」といわれます。
 こういう市場の反応を完全に無視し、2015年5月19日付
国営新華社通信は次の論評を出しています。あくまで国有企業重
視の姿勢が鮮明なのです。
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 習近平総書記はこれまで何度も、国有企業の強大化と優良化を
強調してきた。国有企業は国有経済の核心であり、支柱である。
国有企業がなければ、国有経済はなく、これまでの経済成長の重
大な成果もなく、中国の特色ある社会主義制度もなく、国民の共
同の富もない。そのため、国有企業改革とは、国有企業をなくす
ことではなく、その主体的な地位をさらに高めることなのだ。わ
れわれはそのことを自覚し、国有企業の各種私有化への反対を、
旗臓鮮明にしなければならない。 ──2015年5月19日付
                    国営新華社通信より
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/029]

≪画像および関連情報≫
 ●【中国を読む】国有企業改革の変遷と課題/日本総研
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   中国の国有企業政策は、1980年代の「経営請負制度の
  導入」、90年代の「民営化」、2000年代入り後の「強
  大化」という3つのフェーズに分けることができる。いまも
  政府は不良債権問題をコントロールするため国有部門を拡大
  している。これは、企業活動全体の効率を低下させ、潜在的
  な不良債権を増やすという副作用を持つ処方箋だ。国有企業
  の強大化は、当面の政権安定に寄与するものの、将来の問題
  を大きくする。
   中国の国有企業改革はさまざまな試行を経て、経営請負制
  度の導入から本格化した。1984年10月、中国政府は、
  国有企業の経営効率が大変低いと指摘したうえで、国有企業
  を活性化させる基本方針を打ち出した。この具体策として、
  経営請負制度が全国規模で導入されるようになった。経営請
  負制度とは、国有企業が国庫に上納する利潤額などの目標を
  達成すれば、自らの裁量によって利益を設備投資や従業員の
  給与に充てることが可能となるなど、経営の自由をある程度
  認めるという制度であった。
   もっとも90年代初めには、経営請負制度に対する否定的
  な見方が広がった。納得性の高い3〜5年先の上納利潤額な
  どの目標を設定するのは至難の業であり、目標が現実的な数
  値でないことが多々あったのである。「国有企業の所有者は
  政府」という原則に全く手を付けなかったことも大きな問題
  であった。           https://bit.ly/2N611Vt
  ───────────────────────────

周永康氏と習近平氏.jpg
周永康氏と習近平氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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