2007年07月02日

●橋本はなぜ減税を決意したのか(EJ第2113号)

 橋本政権の「経済失政」は、国民に対する9兆円の負担増が原
因で消費が冷え込み、金融機関の連鎖倒産がそれに追いうちをか
けたという見方が一般的です。ここで、9兆円の負担増について
復習しておくことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
     特別減税の廃止 ・・・・・ 2兆円
     消費税率引上げ ・・・・・ 5兆円
     医療費負担増加 ・・・・・ 2兆円
     ―――――――――――――――――
                   9兆円
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 この見方に関し、当時の官邸と自民党執行部は、景気の後退は
9兆円の負担増のせいではないと明確に言い切っているのです。
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 金融問題が招いた景気の後退なのであって、9兆円の負担増の
 せいではない。だから、減税しても効果はない。
             ――加藤紘一自民党幹事長(当時)
 消費税を上げ、消費が減退して景気が悪くなったかというとそ
 うじゃないことは統計上も明らかだ。危機の到来は三洋、拓銀
 山一の連鎖倒産で一気に金融が収縮し、企業の設備投資を冷え
 込ませたためだ。     ――江田憲司政務秘書官(当時)
             ――清水真人著/日本経済新聞社刊
            『官邸主導/小泉純一郎の革命』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 政策当局が景気後退の原因を9兆円の負担増であると認めない
のは、もしそれを認めると、自らの判断でやったことであるので
決定的な政策ミスを認めることになってしまうからです。だから
こそ、その原因を「予測がつかなかった」と言い訳のできる金融
機関の連鎖倒産に求めたものと思われます。
 要するに政策当局は、もし連鎖倒産がなければ景気は巡航速度
に戻っていたはずと考えていたのです。それに江田氏は連鎖倒産
によって金融が収縮し、企業の設備投資を冷え込ませたと分析し
ていますが、本当の原因は、リチャード・クー氏のいうようにバ
ブルの崩壊によって大幅な資産価値の下落が起こり、上場企業が
バランスシート健全化を図るため、一斉に借金返済をはじめたこ
とにあるのです。
 金融機関の連鎖倒産によって打撃を受けたのは中小企業なので
す。なぜなら、金融機関の連鎖倒産によって銀行の不良債権問題
が重視され、銀行が基準を厳しくしたことによって倒産しなくて
もよい多くの中小企業が潰れたのです。
 上場企業はこういう状況を見て、一層バランスシートの健全化
が必要であると認識し、キャッシュフローの多くを借金返済にま
わしたのです。銀行が融資を絞ったのは中小企業であって、上場
企業には大きく門戸を開いていたのです。しかし、一方で銀行は
それらの企業のバランスシートの健全化も大切であるとして、あ
えて黙って返済資金を受け入れていたのです。
 なぜなら、それらの上場企業のバランスシートが問題化される
と、不良債権問題が加熱しているときであり、銀行にとっても企
業の不良債権のランクを引き下げたり、それによる積立金の積み
増しが必要になるなど大きな問題になってしまうからです。
 しかし、これでは銀行にお金が積み上がるばかりです。本来の
借り手である企業が借りないで借金を返してくるのですから、経
済が回るわけがないのです。橋本政権はこの事実に気がつかない
で、財政再建をやろうとしたのです。
 その結果が1999年の財政赤字38兆円なのです。橋本政権
は、消費税率の引き上げによって財政赤字を一挙に15兆円減ら
す計画だったのですが、逆に38兆円に増えてしまったのです。
バランスシート不況下で財政再建をやると景気が後退して税収が
落ち込み、結果として財政赤字が増えてしまうのです。
 ところで、橋本首相はなぜ唐突に2兆円の減税に踏み切ったの
でしょうか。もちろん橋本一流の単なるパフォーマンスだけでは
ないのです。やむにやまれぬ強烈な突き上げがあったことについ
て述べる必要があると思います。
 この問題に関連して、2007年6月28日に亡くなった宮沢
喜一元首相に関する話題をひとつご紹介します。宮沢のニューヨ
ークでの定宿は、最高級ホテル、ウォルドルフ・アストリアなの
です。1998年3月、宮沢はそこに宿泊していたのです。
 その宮沢を訪ねて、米財務長官のロバート・ルービンがやって
きたのです。そして、次のようなとんでもないことをいったとい
うのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ハシモトにこう伝えてほしい。減税を含めて、リアル・マネー
 (真水)で8兆円から10兆円の財政出動を望んでいる、と。
 それに加えて消費税の税率を5%から3%に戻せないか。
              ――ロバート・ルービン財務長官
                ――清水真人著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 完全な内政干渉です。宮沢はきっぱりと断っています。「そん
な話を日本政府に伝えるわけにはいかない」と。背景としては、
1998年2月のG7会議において、アジア金融危機を打開する
ため、日本を名指しして財政出動を要請する、次のような共同声
明が出されていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の経済活動は低迷し、見通しは弱い。IMFの見方では今
 や、98年の経済活動を下支えするため、財政刺激の強い理由
 がある。        ――1998年G7・共同声明より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ルービンの要請をきっぱり断った宮沢でしたが、帰国すると橋
本と加藤にはルービンの要請のことを伝えています。ルービンは
そう読んでいたのです。   ――[日本経済回復の謎/22]


≪画像および関連情報≫
 ・主要先進国首脳会議(サミット・G8)
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  主要先進国首脳会議(サミット・G8)は、原則として年1
  回の開催で、国際経済、金融で重大な問題が生じた場合には
  必ず開催される。蔵相と中央銀行総裁で構成する非公式会議
  のこと。1975年に米、英、仏、独、伊、日の6ヶ国の国
  家首脳が集まり、経済強調についての自由な意見交換が始ま
  り。翌年にカナダの参加でG7となる。冷戦終結後、ソビエ
  ト社会主義共和国連邦(現ロシア)がサミット本会議の後に
  G7に参加し始め、P8(Political 8) または俗にG7プラ
  ス1といわれていたが、ロシアの完全参加でG8となる。G
  8は国際連合や世界銀行のような機関とは異なり、国際横断
  的な管理部門を持たず、メンバー国が毎年順番にグループの
  議長を担当する。議長国は一連の大臣級会議を主催し、続い
  て年の中頃に3日間の、首脳によるサミットを行う。また、
  出席者の安全確保も議長国の役割となっている。
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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