といえます。2018年3月11日、全人代は、国家主席と国家
副主席の任期を2期10年とする制限を撤廃して習近平思想を盛
り込む中華人民共和国憲法改正案を賛成2958票、反対2票で
成立させ、習近平氏は中国の事実上の皇帝になったのです。
ところで、習近平主席の誕生日は6月15日です。この日にな
ると、習近平派の側近たちは、中南海の習近平宅に参集し、お祝
いをするのが常ですが、不思議なことに、習近平氏の誕生日には
ロクなことが起きていないのです。
習近平国家主席は、サッカーが趣味だそうです。そこで、20
13年の誕生日には、還暦祝いとして、側近がタイの代表チーム
を招いて、中国代表と親善試合をさせたのです。タイは中国より
も格下であり、中国が勝つという想定のもとに、わざわざタイの
チームを招いたのです。しかし、結果は「中国1対タイ5」で、
中国が完敗してしまったのです。
2015年の誕生日は、株式バブルの真っ只中だったのです。
前日まで上海総合指数は5178ポイントと高値をつけており、
さらなる上昇が期待されていたのです。個人投資家としては、習
主席の誕生日には、きっとご祝儀相場があると信ずる者が多く、
勝負に出たのです。ところが、上海総合指数は、5048ポイン
トまで急落し、その後3週間で32%も暴落したのです。この下
落によって、540兆円が消え、「習近平暴落」という不名誉な
ネーミングがついてしまったのです。
そして、2018年6月15日、トランプ米大統領からの次の
メッセージが届いたのです。
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これ以上、対中貿易赤字の拡大を看過できない。そのため、中
国の知的財産権侵害に対する制裁措置として、500億ドル(約
5兆5000億円)分の中国製品に、25%の追加関税を課す。
まず、7月6日に、産業ロボットや電子部品などハイテク製品を
中心に、計818品目、340億ドル分の制裁関税を発動する。
残りの160億ドル分は、これから発動時期を検討していく。
近藤大介著/NHK出版新書568
「習近平と米中衝突/『中華帝国』2021年の野望」
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まさか、習近平主席の誕生日を狙って、トランプ大統領が貿易
戦争を仕掛けたわけではないでしょうが、中国にとっては、6月
15日にトランプ政権による爆弾が炸裂したのです。
しかし、最初のうちは中国は威勢が良かったのです。2018
年7月7日、人民日報社の発行する国際紙「環境時報」は、「ワ
シントンの貿易覇権主義は必ず敗れる」と題する次の社説を掲載
したのです。
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アメリカが貿易戦争の最初の一撃を放った。だが中国を倒すに
は及ばず、必ずや強力な反撃を食らうだろう。
まず第一に、アメリカは世界の貿易の歴史に、永久に残る汚点
を刻んだ。ワシントンはWTOの規則に完全に違反した史上最大
規模の貿易戦争を故意に発動し、世界経済を全面的に破壊する影
響を与える可能性がある。それは、ワシントンのちっぽけなソロ
バンで弾き出したものとはかけ離れた規模であり、この一点だけ
をとっても、アメリカは世界貿易史に残る犯罪国家だ。
第二に、ワシントンの貿易覇権主義が敗北に終わることは疑い
がない。ワシントンは、自分たちが勝つと無理やり思い込んで開
戦したが、「戦場」で痛い目に遭って初めて、理性を取り戻すか
もしれない。
グローバリゼーションが深く浸透した21世紀にあって、各国
の経済は、とりわけ中国とアメリカの経済は、「自己の中に相手
がいて、相手の中に自己がいる」関係にあり、切り離すことはで
きない。アメリカが中国を叩いて、自分だけ無傷ということはあ
り得ない。
現在ワシントンが踏んでいるのは、二本のレッドラインだ。一
本は多国間の規則というレッドラインであり、もう一本は中国が
発展していく権利というレッドラインである。前者によって全世
界の反対に遭い、後者によって中国からの反撃に遭っている。ワ
シントンは、世界の反対と中国の反撃が巨大なパワーとなること
を見くびったのだ。 ──近藤大介著の前掲書より
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「環境時報」はなかなかうまい表現を使っています。現在の中
国と米国の関係については、「『自己の中に相手がいて、相手の
中に自己がいる』関係にあり、切り離すことはできないと述べて
います。つまり、争えば共倒れになるといっているのです。確か
にその指摘は当っています。世界1位の経済大国と世界2位の経
済大国が貿易で争えばどちらも経済がおかしくなるし、どちらも
傷つき、それによって世界経済にも大きな影響が出ます。
しかし、米国としては、自国の安全保障上の問題があって貿易
戦争を仕掛けており、両方とも傷つくことは確かですが、今なら
国力の差によって勝つと読んで、米国は、この貿易戦争を仕掛け
たのです。
果せるかな、中国国内では、トランプ爆弾によって大きな地殻
変動が起きつつあり、3つの方面から「習近平政権批判」が続々
と出てきたのです。
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1.国内の経済や金融の専門家からの習近平批判である
2.北載河会議での長老たちからの政権失政批判である
3.「墨汁事件」に代表される市民の習政権批判である
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時の国家主席である習近平主席を批判するということは、中国
では考えられないことです。しかし、米国との貿易戦争によって
その考えられないことが起きているのです。
──[米中ロ覇権争いの行方/020]
≪画像および関連情報≫
●なぜ中国共産党指導者の誕生日は国家機密なのか?
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日本であまり知られていないことだが、中国では共産党指
導者の誕生日は国家機密になっている。中国政府は公式ホー
ムページなどで指導者の略歴を発表しているが、生まれた年
と月しか公表しておらず、誕生日がない。例えば習近平国家
主席の場合「1953年6月生まれ」となっている。
そのため記事を書く際、指導者の年齢をめぐり困るときが
ある。例えば2013年の全国人民代表大会(国会に相当)
で、副首相に任命された汪洋氏の場合、「1955年3月生
まれ」となっており、人事が決まったのは3月16日で、そ
のときに誕生日が来ていたかどうかが分からない。57歳か
58歳そのどちらかの可能性があるため、年齢を省いて記事
を書かざるを得なかった。
中国人は指導者の誕生日については関心が高く、性格から
星座を推測するなど、長文を書いて論証する人さえいるほど
だ。インターネットで、習近平主席の誕生日は「6月1日」
と「6月15日」と2つの説が有力だが、それぞれ根拠があ
り、どれを信じればいいのかわからない。しかし、李克強首
相の誕生日が「1955年7月1日」であることははっきり
している。それをばらしたのはインドのモディ首相である。
2015年7月1日、モディ首相は自身のツイッターに「中
国の李首相、お誕生日おめでとうございます」と書き込んだ
ことが、インターネット上で話題となった。
https://bit.ly/2WCqc6u
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トランプ大統領と習近平国家主席


