2019年01月28日

●「米国はなぜ貿易戦争を仕掛けたか」(EJ第4935号)

 トランプ大統領は、毀誉褒貶相半ばする人物です。よくいう人
もいれば、悪くいう人もいます。単純な人間という人もいます。
たとえば、米中貿易戦争では、米国が中国との貿易でこうむって
いる赤字はけしからんとして「特別関税」をかける──ずい分乱
暴な措置のように見えます。企業家は赤字が嫌いなので、貿易赤
字に過剰に反応しているという人もいます。
 しかし、トランプ大統領の対中国政策はなかなかスジが通って
います。日高義樹氏は、特別関税に関して、海兵隊出身のある財
界人の次の言葉を紹介しています。
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 特別関税をかけるというトランプ大統領の真意は、中国が不正
な貿易で貯め込んでいる資金を使って、人権を無視した全体主義
的な侵略政策を、近隣の国々に及ぼすのを阻止することだ。トラ
ンプ大統領はアメリカに対する輸出で稼いだ資金を、不法な目的
のために使っている中国に、心底ハラを立てている。
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
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 2018年にそれははじまったのです。2018年のはじめに
米国防総省とCIAは、トランプ大統領に「中国製造2015」
に関する報告を行っています。中国が2015年までに、あらゆ
る先端技術で米国に追い付くという計画です。
 中国が米国との貿易で得ている貿易黒字は年間およそ5000
億ドルです。トランプ大統領は、この5000億ドルが、全体主
義的な非人道的な侵略政策を推し進めるために使われているとみ
ています。
 それに加えて、2018年4月の全国人民代表大会における習
近平主席による次の演説です。この大会は、李克強首相を始めと
する国家機関指導者や閣僚たちがこぞって「習近平『新時代』」
と叫ぶ異様な雰囲気に包まれていたといいます。
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 中国の社会主義は「新時代」に入った。今世紀半ばまでに、中
国は、米国と肩を並べる「社会主義近代化強国」を建設する。
                    ──習近平国家主席
                  https://bit.ly/2R9TpBF
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 「中国製造2025」と習近平主席のこの演説によって、トラ
ンプ大統領の怒りは頂点に達し、米中貿易戦争は開始されたので
す。トランプ大統領の対中国戦略は、特別関税だけが目立って見
えますが、基本的には次の2つの柱があるのです。
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◎国家戦略第1:
 中国経済の基本になっている、国営企業のアメリカ進出を禁止
することだった。2018年6月26日、トランプ大統領は国家
緊急経済防衛政策を発動し、中国政府が25%以上の資金を出し
ている中国の国営企業のアメリカ進出を禁止した。
◎国家戦略第2:
 中国の国営企業だけでなく、中国の民間企業が、アメリカに投
資するさい、これまでは商務省や国務省の認可だけでよかったも
のを、新しくCIAなどの審査を必要とする仕組みに変えること
だった。            ──日高義樹著の前掲書より
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 上記国家戦略に基づき、トランプ政権は、「対米投資監視委員
会」を設置しています。この委員会には、商務省、国務省、CI
Aが担当します。CIAが加わっているのは、安全保障上の観点
からの監視が必要であると考えているからです。
 また、米国の企業が中国で投資するさいにも、この監視委員会
の審査が必要になったのです。これまで、米国の企業が中国に進
出すると、必ず中国企業との合弁のかたちで共同経営の仕組みを
とらされ、先端技術の無料での提供を余儀なくさせられてきたか
らです。
 このように、トランプ政権は基本的に必要な手を打ったうえで
2018年7月6日、午前0時1分(米国東部時間)、対中制裁
関税を発動したのです。これに対して習近平主席が率いる中国は
居丈高に戦う姿勢を示したのです。
 このとき、習近平主席は、全国人民代表大会において、中国の
憲法第79条「国家主席の任期は二期、10年を超えてはならな
い」という規定を削除させ、事実上の「終身主席」の地位を手に
入れて4ヶ月しか経っておらず、米国に対して弱気の姿勢を見せ
るわけにはいかなかったのです。そこで、同日午後0時5分(北
京時間)中国商務部の報道官は次の談話を発表しています。
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 アメリカはWTOの規則に違反し、今日までの経済史上最大規
模の貿易戦争を発動した。この種の追加関税行為は典型的な貿易
覇権主義であり、まさに全世界の産業と価値のチェーンの安全を
著しく脅かすものである。また、世界経済の復興の足踏みを阻害
するものであり、世界の市場に動揺を引き起こすものであり、世
界のさらに多くの無辜の多国籍企業と一般企業、消費者に波及す
るものであり、アメリカの企業と国民の助けにならないばかりか
彼らの利益をも損なうものだ。中国側は、先制攻撃はしないとし
た。だが国家の核心的利益と国民の利益を断固として守るため、
必要な反撃に出ざるを得ない。        ──近藤大介著
    『習近平と米中衝突/「中華帝国」2021年の野望』
                   NHK出版新書568
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 このとき習近平国家主席は、いささか気分が高揚しており、米
国何するものぞと考えていたようです。中国人民日報社が発行す
る国際紙『環境時報』では、「ワシントンの貿易覇権主義は必ず
敗れる」と題する勇ましい記事を掲載しています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/016]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易戦争/いま中国で起きている「ヤバすぎる現実」
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   米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国から
  の投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格
  好で、中国を潰しにかかっています。なぜトランプ政権が、
  このような行為に及ぶのかと言えば、それは「未来の中国年
  表」を見ると一目瞭然です。「未来の中国年表」とは、「人
  口はウソをつかない」をモットーに、人口動態から中国の行
  く末を予測したものです。
   現在の米中両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカ
  の約4・2倍の人口を擁しています。経済規模(GDP)に
  ついては、2017年の時点で、63・2%まで追い上げて
  います。このペースで行くと、2023年から2027年の
  間に、中国はアメリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国
  となるのです。
   先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻で
  す。国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国
  の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は
  1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万
  8882件と肉薄しています。しかも企業別に見ると、1位
  が中国のファーウェイで、4024件、2位も中国のZTE
  で2965件。3位にようやくアメリカのインテルが来て、
  2637件となっています。トランプ政権がファーウェイと
  ZTEの2社を目の敵にしているのも、アメリカの焦燥感の
  表れなのです。         https://bit.ly/2wjm67H
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トランプ米大統領.jpg
トランプ米大統領

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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