2019年01月21日

●「トランプ政権を甘く見ていた中国」(EJ第4930号)

 1月11日から5回にわたって、フェイスブックのデータ流出
事件について書きましたが、これが本当であるとすると、その影
響は多岐にわたり、とんでもないことになります。
 フェイスブックを毎日使うアクティブ・ユーザー数は2018
年7月31日時点で、世界で14億7000万人、日本国内だけ
でも2800万人もいます。既に述べているように、フェイスブ
ックの登録には、氏名、性別、生年月日、メールアドレスが必要
であり、プロフィールには写真を設定する必要があります。プラ
イバシーの公開範囲を絞って、居住地や出身地などのさらに詳し
い情報を設定する人もおり、その流出はきわめて深刻です。
 ところがフェイスブックでは、ユーザーに断りなく、端末メー
カー60社以上とこれらのデータを共有しており、そのなかには
ファーウェイを含む4社の中国メーカーも含まれています。こん
なことは許されることではなく、フェイスブックの信用失墜につ
ながりかねない深刻な事態です。
 フェイスブックの情報漏洩の話はひとまず置き、トランプ氏が
大統領に就任にした2017年以降、米中間で起きたことについ
て、主として日高義樹氏の記述に沿ってみていくことにします。
 2017年4月7日、習近平国家主席が訪米し、米中首脳会談
が行われます。この首脳会談において、米中間の貿易不均衡の問
題が指摘され、その解消のための米中包括経済対話メカニズムの
立ち上げが合意されています。
 このとき、習近平国家主席は、米国の対中輸出を増やすための
100日計画の策定を約束しています。苦し紛れにその場をしの
ぎ、時間稼ぎをした印象です。果せるかなその100日後の20
17年7月に、米中の閣僚級による包括経済対話メカニズムの交
渉が行われましたが、何の進展も見ないまま頓挫しています。
 これを受けて、トランプ政権は、中国に対し、不公正な貿易慣
行がないか、スーパー301条に基づく調査を開始すると宣言し
調査をはじめます。2017年9月18日、ライトハイザー米通
商代表は、講演において、次のように述べています。
─────────────────────────────
 外国企業が中国に進出するさい、技術移転を強要し、その上で
不公正な補助金で輸出を促進する中国が、国際的な貿易体制の脅
威になっている。       ──ライトハイザー米通商代表
─────────────────────────────
 ここまでいわれても中国は、額面通りに受け取らず、次のよう
に反論しています。
─────────────────────────────
 それは、企業間の取引の話であり、中国政府による干渉など一
切あり得ない。            ──中国の高峰報道官
─────────────────────────────
 この時点でも、中国はまだトランプ政権を甘く見ており、楽観
視していたといえます。なぜなら、11月には、トランプ大統領
の訪中が決まっていたからです。
 11月9日、トランプ大統領は中国を訪問し、習近平国家主席
による最大級のもてなしを受けます。このとき行われた米中首脳
会談では、対中貿易赤字削減のため、総額2535億ドルの商談
が調印されていますが、そのほとんどは、覚書や協議書のたぐい
であったのです。このようなもので、騙されるようなトランプ大
統領ではないのです。
 年が明けて2018年になると、トランプ政権は、具体的に行
動を起こします。1月12日に中国が2017年の対米貿易額を
発表しますが、その対米貿易黒字額は、2758億1000万ド
ルという過去最高を更新したのです。
 これに対してトランプ政権は、1月22日に緊急輸入制限を発
動し、太陽光発電パネルに30%、洗濯機に20%以上の追加関
税を課すことを発表しています。太陽光パネルの国別シェアにつ
いては、1位がマレーシアで、2位が中国だったのです。これに
よって、関税引き上げによる貿易戦争がスタートしますが、標的
はまだ中国に向けられていないのです。
 そして、3月1日、トランプ政権は、通商拡大法232条に基
づいて、鉄鋼、アルミニウム製品に追加関税を実施すると発表し
ます。課税額は鉄鋼25%、アルミ10%。米国の安全保障を理
由にするものですが、日本を含め、ほとんどの国がターゲットに
なったのです。そして、3月23日、トランプ政権による鉄鋼、
アルミ製品への追加関税措置が発動されます。
 これに対して中国商務省は、128品目の米国製品に対し、約
30億ドルの追加関税をかける報復措置を発表し、この時点から
米中の貿易戦争の様相がはっきりとしてきたのです。
 実は、トランプ大統領は、この鉄鋼、アルミ製品の追加関税の
発表後、4人の経済政策担当の閣僚級のスタッフを北京に送って
います。ムニューチン財務長官、ロス商務長官、ライトハイザー
通商代表、ナバロ国家通商会議委員長の4人です。このときの様
子について、日高義樹氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 北京での会議では、トランプ政権の経済政策の責任者である4
人の意見がまったく合わず、大混乱になったという。ムニューチ
ン財務長官は、トランプ大統領の対中国強硬政策に反対し、政策
としては望ましいものではない、という姿勢を明確にした。いっ
ぽうでは、ライトハイザー通商代表が、トランプ大統領の決定が
手ぬるいと主張し、もっと厳しい制裁措置が必要であると主張し
た。(中略)政府を代表してワシントンからやってきたトランプ
政権の経済政策のトップが、意見が合わずして対立し、混乱して
いることを交渉の相手の前でひけらかしてしまったのである。
                      ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/011]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易戦争なら米国の圧勝、日本には漁夫の利
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   米国の対中輸入額は、対中輸出額の約4倍あります。とい
  うことは、米国の対中輸入制限と中国の対米輸入関税が同時
  に課された場合、単純に考えて、中国の受ける打撃の方が4
  倍大きいということを意味しています。中国のGDPは米国
  よりも小さいので、打撃額のGDPで比べれば、その差は更
  に大きくなります。金額だけではありません。中国の対米輸
  出品が労働集約型製品で、米国の対中輸出品が技術集約型製
  品だ、という点も両者の打撃の大きさに影響します。
   まず、米国の中国からの輸入品について、考えてみましょ
  う。米国は、別の国から輸入することもできますし、米国内
  でも生産することができます。現在米国が中国から輸入して
  いるのは、「安いから」という理由だけなので、関税がかか
  れば対中輸入は激減し、他国からの輸入と国内生産が増える
  でしょう。国内生産が増える分は、米国内の雇用を増やしま
  す。「米国の人件費は高いので、中国から輸入されている物
  を米国内で作るはずがない」、と考える人もいるでしょうが
  途上国で労働集約的に作るか米国内で機械を使って作るかの
  比較なので、中国と米国の生産コストの差は賃金格差ほど大
  きくはないのです。一方で、米国の対中輸入関税が中国に与
  える打撃は大きなものとなります。労働集約型製品の輸出が
  大きく落ち込むと、中国人労働者が大量に失業することにな
  るからです。          https://bit.ly/2QXFC17
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ライトハイザー通商代表.jpg
ライトハイザー通商代表
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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