2019年01月17日

●「英国のEU離脱の選挙結果に異議」(EJ第4928号)

 2019年1月16日朝、衝撃的なニュースが飛び込んできま
した。英国政府がEUと協議のすえまとめた離脱案を受け入れる
ための承認採決が行われましたが、200票以上の大差で否決さ
れたのです。BBCのニュース記事を以下に示します。
─────────────────────────────
 英議会下院(定数650)は、15日夜、イギリスの欧州連合
(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の
承認採決を行い、432(反対)対202(賛成)の大差でこれ
を否決した。
 230票差での政府案否決は、英現代政治史において、政府に
とって最悪。2年以上にわたりブレグジット(イギリスのEU離
脱)交渉を行い、協定を取りまとめてきたテリーザ・メイ首相に
とっては、大きな敗北となった。
 また、これを受けて最大野党・労働党は、政府に対する不信任
案を提出した。なお、本日午後7時(日本時間17日午前4時)
に投票が行われる予定で、採択されれば総選挙となる可能性があ
る。                https://bbc.in/2QR3HGz
─────────────────────────────
 実は、「EU残留か離脱か」を問う2016年6月23日の国
民投票の結果に影響を与えたのは、ケンブリッジ・アナリティカ
(以下、CA)の疑いが濃厚です。同社はフェイスブックのデー
タを不正に取得し、本当は「EU残留」であった民意を逆の「E
U離脱」に導いたのです。
 なぜ、そんなことがわかったのかというと、ケンブリッジ・ア
ナリティカでリサーチ担当として働いていたクリストファ・ワイ
リー氏が内部告発をしたからです。
 このワイリー氏の内部告発に基づいて、英オブザーバー紙およ
びガーディアン紙、英チャンネル4ニュース、米ニューヨークタ
イムズ紙などが調査報道を行っています。
 調査報道というのは、あるテーマ、事件に対し、警察・検察や
行政官庁、企業側からの情報によるリーク、広報、プレスリリー
スなどからだけの情報に頼らず、取材する側が主体性と継続性を
持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事
実を突き止めていこうとするタイプの報道のことです。したがっ
て、その内容はかなり正しいといえます。
 実際にCAがどのようにして、選挙の投票先に影響を与えたか
については、詳細はわかっていませんが、フェイスプック上の詳
細な個人情報に対して心理的プロファイリングを行ってパターン
化し、それらのパターンごとに「カスタマイズされた情報」をフ
ェイスブックのタイムラインなどに流し、投票に何らかの影響を
与えようとしたと思われます。
 英国の国民投票については、CAと関係があるカナダのAIQ
という企業がかかわっており、「日経ビジネス」は、次のように
書いています。
─────────────────────────────
 英国のEU離脱を問う国民投票でも、CAとの関連があるとい
われるカナダの企業AIQによって行われたと指摘されているが
フェイスブックの情報がこちらでも流用されたのかは未だ不透明
だ。ただし、AIQは、離脱派陣営の団体「ボートリーブ」から
270万ポンド(約4億600万円)に及ぶ多額の報酬を得てお
り、これは「ボートリーブ」の支出の実に40%に上ると報じら
れた。デジタル戦略の効果を測ることは容易ではないが、「ボー
トリーブ」のキャンペーン担当者は離脱決定後、AIQなしには
「勝利は成し得なかった」と発言したと言われている。
 告発者のワイリー氏も特別委員会での証言で、このような「不
正な行為」がなければ、EU離脱決定に際し、異なる結果であっ
た可能性に言及した。ワイリー氏の証言によれば、EU離脱を問
う国民投票で、デジタル戦略によって有権者による実際の行動を
転換させることに成功した率はおよそ5〜7%であったという。
離脱を問う投票では、離脱支持が52%、残留48%と僅差だっ
たことを考えると、効果は否定できないのではないか。
                  https://bit.ly/2HrLrV9
─────────────────────────────
 ここでいうAIQという企業はどういう企業なのでしょうか。
ワイリー氏によると、AIQは、CAのフランチャイズ企業のよ
うなものではないかといっています。この企業は、法律を無視し
て、フェイスブックなどから不正に収集した情報を使用するのに
何の躊躇いもみせない企業であるというのです。
 どちらかというと、AIQは、ターゲットを狭く絞って、その
ターゲット層に響くメッセージを繰り返し送ったり、タイムライ
ンに表示させることで、意識的、無意識的に人々の思想や行動に
影響を与えるマーケティングキャンペーンを繰り広げるのです。
 そもそもフェイスブックの情報は、個人情報、発信する情報の
コンテンツ、受信する情報の種類や、「いいね!」をつけるコン
テンツなど、ユーザーの特性を把握できる内容を、豊富に持って
います。そのため、ターゲットを狭く絞りやすいのです。しかも
内容は正確で、写真まで付いています。したがって、フェイスブ
ック社としては、これらは絶対に流出させてはならない情報なの
です。ユーザーは、フェイスブックなら、セキュリティが万全で
あると信じているからこそ、正確な個人情報を託していますが、
フェイスブック社は、その信頼を裏切っています。
 とくに許せないのは、フェイスブックは、ユーザーの数を増や
すため、中国系4社を含む60社を超える端末企業と情報を共有
していることです。これでは、情報の流出に歯止めがかからなく
なり、信頼性を大きく損ねてしまいます。まして、そのデータが
世界を変える2つの選挙行動に影響を与えていることは、ほぼ確
実であるといえます。
 とくにフェイスブックのCEO、マークザッカーバーク氏は、
中国市場に大いなる関心を持っています。これについては、明日
のEJで述べます。  ──[米中ロ覇権争いの行方/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「フェイスブックは評判の危機」/疑惑渦中の学者語る
  ───────────────────────────
   フェイスブックのデータ流出疑惑をめぐり、疑惑のきっか
  けとなったアプリの開発者アレクサンダー・コーガン博士が
  2018年4月24日、英議会下院のデジタル・文化・メデ
  ィア・スポーツ(DCMS)委員会で証言した。同氏はフェ
  イスブックが全面的な「PR危機状態」(世間からの批判で
  評判が危機にあること)にあると語った。
   コーガン氏の発言は、同氏が英ケンブリッジ・アナリティ
  カ社によるデータ不正収集における自身の役割について下院
  議員の厳しい追及を受けてなされた。同氏はフェイスブック
  が、自社のデータが「数千におよぶ第三者によって利用され
  ていた」ことに全面的に気づいていたと述べた。
   同氏はケンブリッジ・アナリティカは同氏からデータを受
  け取っていなかったとするアレクサンダー・ニックス最高経
  営責任者(CEO=停職中)のこれまでの主張についても、
  「でっち上げだ」と批判した。後の釈明でケンブリッジ・ア
  ナリティカは、コーガン博士が設立した会社からデータの使
  用権を与えられたことを認めたものの、その情報が2016
  年の米大統領選で使われたことは否定した。コーガン博士が
  DCMS委員会で証言した後、ケンブリッジ・アナリティカ
  は記者会見を開き、同社の広報担当者クラレンス・ミッチェ
  ル氏は同社が、「(ジェイムズ・)ボンド映画の悪役ではな
  い」と語った。
   「データ分析は(広告配信などにおける)より正確な対象
  絞込みのために一般的に使われており、完全に合法だ。一部
  で描写されているような、ボンド映画に出てくるような洗脳
  ではない」           https://bbc.in/2CmvRnO
  ───────────────────────────

クリストファ・ワイリー氏.jpg
クリストファ・ワイリー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]