2019年01月08日

●「『2025』は半導体制覇の戦略」(EJ第4922号)

 米中関係で現在問題になっているものに、中国が2015年に
打ち出した「中国製造2025」があります。これについて、日
高義樹氏と遠藤誉氏のコメントを両氏の書籍から、抜き出してみ
ると、かなり違うのです。
 はじめに、日高義樹氏のコメントから検証します。
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 中国は数の上ではいまや、アメリカやロシアに匹敵する兵器を
保有している。それにもかかわらず、なぜ依然としてして戦いの
技術の面で遅れているのか。その最大の理由はすでに述べたよう
に、中国が自ら技術を開発するのではなく、常に外国から盗んで
いるからである。
 中国は手短かに先進諸国に追いつこうと、兵器類を外国から買
い集めたり、技術を盗んで製造したりしてきた。莫大な貿易黒字
で豊富な資金があり、共産主義による専制国家なので、そうした
安易な行動を取ることが容易だった。かくして中国は戦いに勝つ
ための技術を自ら開発する努力を怠った。その段階で、その兵器
をいかに使うかという努力も、なおざりにされてしまったのであ
る。したがって、アメリカやロシアに匹敵する軍事力を保有して
いても、その内容が空虚なのである。(一部略)
 習近平が「チャイナ・メイド2025」という名の計画のもと
で、人工頭脳の開発に全力をあげているのは、中国の軍事大国と
しての能力を高めるためであり、アメリカに勝つためである。こ
れに対して当然のことながらトランプ大統領は全力をあげて、習
近平の計画を阻止しようとしている。     ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
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 中国が「中国製造2025」を打ち出したときは、オバマ政権
でしたが、これに対して何の手も打っていないのです。歯牙にも
かけなかったというべきかもしれません。オバマ大統領の出身母
体である民主党は、どちらかというと中国に甘いというか寛容で
あり、クリントン政権にいたっては、中国に対して米国の門戸を
大きく開き、WTOに加盟させたのです。しかし、これが現在の
中国を作り上げてしまったといえます。
 中国は少しでも早く米国に追いつこうと、まず、圧倒的な数の
国民を持つ経済的優位性を生かして経済を飛躍的に伸長させ、日
本を抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国になります。そして
それから得られる潤沢な資金を使って、カネで兵器を買い漁り、
多数の留学生を米国をはじめとする先進国に送り込んで技術を習
得させたのです。さらにカネで買えない技術に関しては、ハイテ
ク手段を縦横に駆使して技術を盗んだりして、現在、米国やロシ
アに匹敵する数の軍備を持つにいたっています。
 しかし、日高義樹氏は、いかに数を揃えていても、自ら開発し
たものではないだけに、それを使いこなせるレベルには到底達し
ていないといいます。確かにそれはその通りです。したがって、
「中国製造2025」にしても、同様に当初米国は、それを何ら
脅威には感じていなかったのです。AI(人工知能)にしても、
現時点では、米国のレベルの方が圧倒的に高く、そう簡単に追い
つけるものではない──これが、日高氏の論調です。日高氏は本
のなかで、「失敗したチャイナ・メイド2025」というタイト
ルをつけてこのように論じています。
 これに対して、遠藤誉氏は「中国製造2025」は、ハイテク
製品のキーパーツにおいて米国を抜く計画であることを明確にし
て、次のように述べています。
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 中国は、2015年5月に「中国製造(メイド・イン・チャイ
ナ)2025」という国家戦略を発布し、2025年までに、ハ
イテク製品のキー・パーツ(コアとなる構成部品/主として半導
体)の70%を「メイド・イン・チャイナ」にして自給自足する
と宣言した。同時に有人宇宙飛行や月面探査プロジェクトなどを
推進し、完成に近づけることも盛り込まれている。
 アメリカや日本を中心として、運営されている国際宇宙ステー
ションは、2024年あたりに使用期限切れとなることを見込ん
で、中国が中国独自の宇宙ステーションを2022年までには正
常稼動できるようにする国家戦略が「2025」に潜んでいるの
である。(一部略)
 中国は今、トランプが仕掛けてきた米中貿易戦争は、「202
5」を破壊させるためであり、中国の特色ある社会主義国家を崩
壊へと導くためであると解釈するに至っている。だから一歩も引
かない。「2025」はトランプの攻撃より、今や社会主義体制
が維持できるか否かのデットライン化してしまったのだ。
   ──遠藤 誉著/PHP/「『中国製造2025』の衝撃
           /習近平はいま何を目論んでいるのか」
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 遠藤氏は、中国が10年計画で挑んでいるのは、ハイテク製品
のキー・パーツ(つまり、半導体)の70%を「メイド・イン・
チャイナ」にするというのです。中国は、既に米国が支配してい
る分野で米国に勝つのは容易ではないことはよく理解しており、
米国があまり力を入れていない分野を支配することを目指してい
ます。それが「宇宙」であり、それには半導体が不可欠です。
 中国は、2009年に「宇宙計画2050」を発布しましたが
米国は大きな反応を示していないのです。さらに中国は2016
年に「宇宙計画白書」を発表していますが、「2025」と歩調
を合わせて2022年までに中国独自の宇宙ステーションを正常
に稼働させようとしているのです。
 2014年4月に習近平国家主席は、中国人民解放軍の空軍に
対して、「空天一体化」を指示し、「強軍の夢」について語って
います。ちなみに「天」は中国語では「宇宙」、「空天」とは、
空軍と宇宙の一体化──つまり、宇宙軍を意味しています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「宇宙軍創設」トランプの真意は中国への宣戦布告
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   トランプ米大統領が2018年6月、宇宙軍創設の指示を
  出した。マスコミはトランプの発言をとかくフェイクと見な
  したがる。そこで、この発言もトランプ一流の大ぼらかのよ
  うな報道ぶりだった。
   もっとも、マスコミの責任ばかりとは言えない。米国は、
  1980年代、当時のレーガン大統領がスターウォーズ計画
  を発表した。当時から人気のSF映画の題名そのままに、レ
  ーザー砲で旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を破壊
  する画像がニュースなどで繰り返し流されたものだった。
   結局、米ソ冷戦の終結で、この計画も沙汰止(さたや)み
  になった。ただし、ここで開発された技術が現在のミサイル
  防衛に生かされているので、レーガンの大ぼらだったという
  のは言い過ぎであろう。
   とはいえ、発表当初から膨大な予算を必要とすることから
  実現を疑問視する声が絶えず、ICBMをレーザーで破壊す
  る画像が文字通り絵に描いた餅に終わったのは事実である。
   従ってトランプの宇宙軍創設も当初マスコミは大統領の大
  ぼらと見なしたわけだが、8月にペンス副大統領が具体的な
  計画を打ち出し、にわかに現実性を帯び始めた。なにしろペ
  ンスは誠実な人柄で知られ、マスコミからも評価が高いから
  だ。ペンスは「2020年までに宇宙軍を設置する」と述べ
  それまでの当面の措置として宇宙担当の国防次官補を新たに
  任命し、統合宇宙司令部、宇宙作戦部隊、宇宙開発局を設置
  すると発表した。        https://bit.ly/2SCDkWL
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中国/「空天一体」.jpg
中国/「空天一体」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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