2019年01月07日

●「中国本には2つの種類が存在する」(EJ第4921号)

 年末から2019年の年始にかけて、米中が台湾をめぐって、
激しくぶつかっています。
 12月31日のことです。トランプ大統領は、アジア諸国との
安全保障や経済面の包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保
証推進法」に署名し、新法を成立させています。この法律には、
台湾への防衛装備品の売却促進やインド太平洋地域での定期的な
航行の自由作戦が盛り込まれており、明らかに中国を強く牽制す
る内容になっています。
 これに対して、中国の習近平主席は、1月2日、台湾に対して
硬軟を織り交ぜた5つの提案をしています。その3項目目に次の
記述があります。
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 B「1つの中国」原則を堅持し、台湾独立には絶対反対。武
  力使用の選択肢も放棄しない。
             ──習近平/台湾への5提案より
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 これは、台湾に向けたものであると同時に、米国を牽制してい
ます。中国は、台湾での昨年11月の統一地方選で、独立志向を
持つ民進党が大敗したことを受けて、台湾に対して実利を強調す
る「ソフト路線」を展開することで、「親中」世論を台湾に拡大
させることを狙っています。これに対して、台湾の蔡英文総統は
次のように強く反発しています。
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 台湾は一国二制度を絶対に受け入れない。中台交流推進の条件
として、台湾2300万人の人民が、自由と民主主義を堅持して
いることを尊重すべきである。        ──蔡英文総統
            ──2019年1月3日付、朝日新聞
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 EJでは、2回にわたって中国をテーマにして書いています。
2013年と2017年にです。
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                 新中国論/76回
    2013年01月04日/EJ第3503号〜
         米中戦争の可能性を探る/123回
      2017年03月11日/EJ第4431
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 実はこのとき痛感したことがあります。中国について本を出版
している人はたくさんいますが、次の2種類に大別できます。
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    1.米国を中心とする西側から中国を論じる著者
    2.中国を中心に西側、とくに米国を論じる著者
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 日本で発刊される中国本は圧倒的に「1」が多いのです。しか
し、この手の本を読むと、中国観を誤る恐れがあります。なぜか
というと、日本人の反中・嫌中意識は80%を超えていて、中国
が米国を超えようとしていることを素直に認めず、結局、最後は
米国が勝つということを内心期待して、「1」の本を読む人が多
いからです。したがって、「1」の本の著者は、どうしても話を
読者の期待する方向に合わせようとする傾向があります。つまり
一定のバイアスがかかるのです。
 一方、中国内部の真の情報は、内部に協力者がいないと、なか
なか入手できないものです。その協力者は、中国共産党の序列で
いうと相当上の人とつながっており、そこから情報を入手してい
る関係上、著者は中国にとって真の不利益になることは発言でき
ないし、書けないのです。これらの人々は「中国ウォッチャー」
といわれる人たちです。
 したがって、どちらの中国本を読むとしても、それぞれのバア
イアスを考慮して読まないと、中国観を誤ってしまいます。最近
発売されている中国に関する新刊書には、まさに上記の「1」と
「2」に該当する次の2つの本があります。
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 ◎「1」に属する本
                       日高義樹著
       「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
         徳間書店刊/2018年11月30日発刊
 ◎「2」に属する本
                       遠藤 誉著
              「『中国製造2025』の衝撃
          /習近平はいま何を目論んでいるのか」
           PHP/2019年01月11日発刊
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 「1」の著者は、日高義樹氏です。
 1959年にNHKに入局し、NHK外信部、ニューヨーク支
局長、ワシントン支局長、米国総局長を歴任。その後、ハーバー
ド大学客員教授に就任、現在はハドソン研究所主席研究員として
主として日米関係の将来の調査、研究にあたっている人物です。
つまり、米国側から見た中国分析の第1人者です。
 「2」の著者は、遠藤誉氏です。
 遠藤誉氏は、中国吉林省長春生まれです。国共内戦/蒋介石率
いる国民革命軍と、中国共産党率いる中国工農紅軍との間で行わ
れた内戦を経験し、1953年に日本に帰国します。
 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、そして
理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員、教授などを
歴任し、現在では、中国分析の第一人者といわれています。
 まさに真逆です。日高義樹氏は、米国の保守派のシンクタンク
の首席研究員、遠藤誉氏は、中国社会科学院社会学研究所客員研
究員です。中国社会科学院は、中国の哲学及び社会科学研究の最
高学術機構であり、総合的な研究センターです。当然、今後の中
国の覇権の行方についても2つの本で違ってきています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/002]

≪画像および関連情報≫
 ●米中競争の行方と日本の役割
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   12月1日、ブエノスアイレスG20に合わせて開催され
  た米中首脳会談は決裂を回避し、米中それぞれが外交的な勝
  利を宣言する結末となった。2月末まで90日間行われる交
  渉で合意点を拡大できるかが鍵となるが、米中貿易戦争はつ
  かの間の小休止を得ることになった。アメリカによる対中関
  税の「第4弾」は回避され、「第3弾」に含まれていた追加
  関税(19年1月から)の発動も当面猶予された。
   両国は構造的な対立局面に入っており、アメリカは中国と
  の競争を前面に据えた政策を修正しないとみる向きが強い。
  会談直後のタイミングでのファーウェイ最高幹部の逮捕も、
  そのような見通しに説得力を持たせている。つまり、小休止
  は休戦に過ぎないということだが、その背景にはアメリカの
  中国認識の悪化も大きい。
   中間選挙、アジア歴訪を前にマイク・ペンス副大統領がハ
  ドソン研究所で行った演説(18年10月4日)は、多面に
  わたり中国の行動を批判しており、今年に入り(特に初夏に
  かけて)強硬化の一途をたどったアメリカの対中認識の悪化
  を総括するような内容であった。ペンス氏は、「中国は政府
  を挙げて、政治・経済・軍事的な手段、さらにはプロパガン
  ダまで活用して米国に対する影響力を広げ、利益をかすめ取
  ろうとしています」と述べた上で、中国が投げかける問題は
  貿易赤字だけでは決してなく、アメリカからの技術窃取、安
  全保障、信仰の自由、さらには民主主義や国際秩序のあり方
  への挑戦であると、逐一具体的な例をあげて、40分の演説
  時間の多くを割いて中国を叩き続けたのである。
                  https://bit.ly/2FaZ2gv
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日高義樹氏と遠藤誉氏.jpg
日高義樹氏と遠藤誉氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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