2018年12月27日

●「貿易摩擦がハイテク摩擦へと発展」(EJ第4919号)

 今年のEJは本日で終了します。再び米中貿易戦争の話です。
なぜなら、これがどうなるかによって、来るべき2019年の世
界経済を決めると思われるからです。これが原因で、25日の日
経平均は、2万円を大きく割っています。
 現在、この案件でホワイトハウス内を仕切っているのは、ピー
ター・ナヴァロ大統領補佐官です。実はEJでは、2017年1
月4日からの新テーマである『米中戦争の可能性は本当にあるの
か/そのとき日本はどうするか』で、このピーター・ナヴァロ氏
の著書『米中もし戦わば』(文藝春秋)を取り上げ、冒頭に次の
質問を紹介しています。再現します。
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【問題】歴史上の事例に鑑みて、新興勢力=中国と既成の超大国
=アメリカとの間に戦争が起きる可能性を選べ。
  「1」 非常に高い
  「2」ほとんどない
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この正解は「1」の「非常に高い」です。ナヴァロ氏は、これ
にはきちんとした歴史的根拠があるとし、紀元前五世紀の「ペロ
ポネソス戦争」を上げています。この戦争は、当時の覇権国家ス
パルタを中心とする勢力と、新興勢力のアテネを中心する勢力と
の間の30年に及ぶ戦争です。
 EJがこれを紹介した2017年1月から、2年の時が過ぎよ
うとしています。本当の戦争こそ起きていないものの、貿易戦争
という名の貿易をめぐる米中の戦争は激しさを増し、目下、米中
は極度の緊張状態にあります。そして、ナヴァロ氏は、この戦争
について記述したハーバード大学の政治学者であるグラハム・ア
リソン氏の言葉を紹介しています。再現します。
─────────────────────────────
 この劇的な(アテネの)勃興にスパルタはショックを受け、為
政者たちは恐怖心から対抗策を取ろうとした。威嚇が威嚇を呼び
競争から対立が生まれ、それがついに衝突へと発展した。30年
に及ぶペロポネソス戦争の末、両国はともに荒廃した。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここでのスパルタを米国、アテネを中国に置き換えると、本物
の戦争ではないものの、それに近いことがいま起きつつあるとい
えます。何しろ、この本の著者のピーター・ナヴァロ氏が、現ト
ランプ政権の大統領補佐官として、貿易問題を担当しているので
対中摩擦が生じているのです。
 トランプ大統領は、大統領選挙のときから、年3800億ドル
(約43兆円)の対中貿易赤字に強い不満を表明していますが、
2018年7月に制裁関税を発動した理由は、「知的財産権の侵
害」であり、貿易摩擦というよりも、その本質はハイテク摩擦に
なっているのです。
 ピーター・ナヴァロ大統領補佐官は、中国のことを次のように
非常に厳しく批判しています。
─────────────────────────────
 中国は、世界貿易の最大のぺテン師であり、米国にとって最大
の貿易赤字国でもある。貿易の不正が続くなら、トランプ氏は防
御的な関税を課す。
 中国は5カ年計画をつくり、政府主導で大量の産業補助金を投
じている。中国産業を守るため、高率の輸入関税を課し(許認可
などの)非関税障壁もある。これら全ての解決が90日間の米中
交渉の主題である。        ──ピーター・ナヴァロ氏
             ──12月23日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 つまり、米国と中国の対立は、貿易不均衡に端を発した経済摩
擦ではじまったのですが、それがテクノロジーや軍事面での覇権
争いに発展しているのです。貿易摩擦のはずが、ハイテク摩擦に
すり替わっています。これは、トランプ政権の3人の「超」の付
く対中強硬派のなせるわざであるといえます。
─────────────────────────────
               ペンス副大統領
      ナヴァロ大統領補佐官(貿易担当)
    ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)
─────────────────────────────
 当のトランプ大統領は、むしろこの3人よりは、それほど強い
対中強硬派ではなく、企業家であるため、企業の赤字と貿易赤字
を一緒にしており、何とか中国と取引しようと考えているフシが
あります。しかし、安全保障が絡んでくると、とても90日で解
決することは困難です。
 トランプ大統領はほとんどわかっていないのです。こんな話が
あります。日米首脳会談の前夜、トランプ大統領は安倍首相にど
のように話そうかと考えていたのです。そこで、ドルが高い方が
良いのか、安い方が良いのか迷ったそうです。貿易にはドルが安
い方がよいはずですが、米国は貿易重視ではないので、専門家は
皆、ドルが高い方が良いというのです。
 トランプ氏は、安倍首相に為替について噛みついてやろうとし
て考えたのですが、よくわからない。既に真夜中だったにもかか
わらず、国家安全保障を担当するフリン大統領補佐官に電話をし
米国としては、ドルが高かったほうがいいのか、安かった方がい
いのかどっちだと尋ねたのです。しかし、フリン氏は「経済の専
門家に聞いたらどうか」として答えず、結局わからなかったので
安倍首相には為替の話をしなかったのです。トランプ大統領は、
その程度の人なのです。
 今年のEJは今回で終わりです。一年間EJをご愛読ありがと
うございます。新年は新しいテーマで、4日から配信します。よ
いお年をお迎えください。   ──[フリーテーマ/013]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、外資への「技術移転強制」禁止へ/法案準備
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   北京(CNN)中国政府は25日までに、中国で事業を行
  う外国企業の知的財産保護に向けた法律を導入する姿勢を明
  らかにした。国会にあたる全国人民代表大会(全人代)に法
  案が提出された。この中では、外国企業に対する強制的な中
  国企業への技術移転について禁じることが盛り込まれた。こ
  うした知財の移転については、米国のトランプ大統領らから
  批判の声が出ていた。
   華南米国商工会議所の幹部は、こうした取り組みについて
  「中国政府による重要で正しい動きだ」として一定の評価を
  示した。ただ、同幹部は、法改正がなされても、中国で活動
  する外国企業は、強制力の欠如や地元政府による不公平な取
  り扱いなど他の困難に直面するのではないかとの見方を示し
  た。中国国営新華社通信は、「平等な取り扱い」と同時に、
  「安定的で透明性があり予測可能な投資環境が生まれる」と
  強調。新法によって、外国企業は、事業の発展を支援する全
  ての国策を享受し、政府調達に参加できるとしている。
  中国当局はこれまで、外国企業に対して不公平な取り扱いを
  行っているという指摘について否定していた。トランプ大統
  領は繰り返し、中国政府による科学技術の盗難について懸念
  を表明しているが、今回の新法導入は、こうした批判に対応
  するものといえそうだ。     https://bit.ly/2EJUBcs
  ───────────────────────────

ピーター・ナヴァロ大統領補佐官.jpg
ピーター・ナヴァロ大統領補佐官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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