2018年12月21日

●「いずも型空母は果して機能するか」(EJ第4916号)

 報道ジャーナリストの伊藤明弘氏は、防衛省のある施設におい
て、ジェット戦闘機を搭載した護衛艦「いずも」の模型を見せて
もらったといいます。2017年11月のことです。その模型は
現行の「いずも」がフラットな甲板を持つのに対して、やぐらの
ようなスキージャンプ台状の甲板を備えていたそうです。ちょう
ど、中国の空母「遼寧」のような形と思われます。
 少なくとも現在の「いずも」とは形が異なるのです。ジャンプ
台がついているということは、見た目はより「空母」らしく見え
るので、設計が変更されたのではないかと思われます。しかし、
就役時点では、野党の政治家の追及は、ほとんどなかったという
のです。彼らはこの問題に関心が薄いのです。
 「いずも」が就役したのは2015年3月25日のことです。
第3護衛艦隊群(舞鶴基地)に編成替えとなった「ひゅうが」に
代わって、「いずも」は第1護衛艦隊群第1護衛隊に編入されて
います。定係港は横須賀です。初任務は、2016年4月に発生
した熊本地震による災害派遣です。被災地支援にあたる陸上自衛
隊を輸送する任務です。
 あくまで「いずも」は、DDH=ヘリコプター護衛艦、すなわ
ち、「護衛艦=駆逐艦」として就役したのです。しかし、「いず
も」は明らかに駆逐艦には相応しくないのです。そして2017
年のクリスマスの時期に、「いずも」が空母に改修されるという
情報が拡散されたのです。
 なぜ、2017年暮れかというと、2019年度から新しい中
期防衛力整備計画が始まるからです。これによって、1番艦「い
ずも」と2番艦「かが」を「いずも」型として、戦闘機の発着が
可能なものに改修するというのです。
 問題は、「いずも」が、日本の憲法の制約上、保有が認められ
ないとされている「攻撃型空母」に該当するかどうかです。とこ
ろで、空母の定義というものはあるのでしょうか。
 1921年のワシントン軍縮会議において、空母の定義は決め
られており、それは次のようになっています。
─────────────────────────────
 水上艦船であり、専ら航空機を搭載する目的を以って計画され
航空機はその艦上から出発し、又その艦上に降着し得るように整
備され基本排水量が1万トンを超えるものを航空母艦という。
─────────────────────────────
 ところが、1930年のロンドン海軍軍縮条約では、基本排水
量が1万トン未満でも空母に含まれることになります。ところで
「基本排水量」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 基本排水量とは、船舶の重量を表す数値で、排水量の計測方法
のひとつである。満載の状態から、燃料と予備缶水(水)の重量
を差し引いた状態を示したもの。
─────────────────────────────
 この定義にあてはめると、「いずも」型は建造費が1139億
円で、基準排水量は1万9500トンであり、十分に「空母」と
いえるサイズです。しかし、サイズ、その大きさから、空母を定
義するのは問題があります。
 「ナショナル・インタレスト」という米防衛誌は、空母は、単
に攻撃力だけでなく、防衛にも役立つと指摘しています。
─────────────────────────────
 空母の能力は、攻撃的役割に限定されているわけではない。空
母は、味方の水上艦と基地を敵の攻撃から守るために戦闘機を展
開できるし、敵の船や潜水艦の位置を把握するために偵察機とヘ
リコプターを発進させることもできる。
         ──「ナショナル・インタレスト/電子版」
─────────────────────────────
 理屈から考えても、日本のような島国が、数隻の空母を運用し
離島を守り、領海をパトロールするのは理にかなっており、専守
防衛に反しないと思います。攻撃と防御は表裏一体であり、防御
に重点を置く「防御型空母」というものがあってもおかしくない
と思います。とくに、尖閣諸島の防衛には、空母はきわめて有効
な手段です。
 「いずも」型DDHに搭載される戦闘機についても述べておく
ことにします。F35という戦闘機には次の2種類があります。
─────────────────────────────
  F35A ・・・      通常離着陸/ CTOL
  F35B ・・・ 短距離離陸・垂直着陸/STOVL
─────────────────────────────
 「F35A」は、通常離着陸の戦闘機ですが、既に42機は三
沢基地に配備されることに決まっています。これに対して「F3
5B」は200メートルほどの短距離で発進し、着陸するときは
垂直に降りるのです。したがって、「いずも」型護衛艦には「F
35B」が搭載されることになります。
 「いずも」型DDHを空母化し、F35Bを搭載する考え方に
対して、香田洋二元海上自衛隊司令官は、日米同盟の役割分担を
守るためには効果があるとしています。日米同盟の役割分担とは
日本が盾(日本の防衛)、米国が矛(相手国への攻撃)を守るこ
とです。これについて香田氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は矛の機能を論じる前に、いまだ十分でない盾の機能を高
める必要があると考えます。まずは、日本の防衛作戦(盾)に米
軍を巻き込まないですむようにすることです。巻き込めば、その
分、米軍の打撃力を削ぐことになります。そうならないようにし
て、米軍には得意の打撃作戦(矛)で力を発揮してもらうように
するのです。その前提が、米軍の安全な来援を確実ならしめるこ
とであり、自衛隊は我が国の直截的な防衛に加え、米軍来援を支
援する力を養う必要もあります。   https://nkbp.jp/2UVeT8l
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/010]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に空母は必要か/米メディアが分析
  ───────────────────────────
   米防衛メディア『ディヘンス・ワン』も、中国の脅威が増
  すなか、特に離島防衛が鍵となる現状では、日本が空母を保
  有することには一定の妥当性があると見ている。ただし、日
  本政府は運用面と財政面の2点において、果たして空母がベ
  ストな選択なのか、よく考えるべきだとしている。
   運用面では、尖閣諸島に比較的近い無人島などに無人機を
  配備するという「より安く、人員も必要としない」オプショ
  ンもあると指摘。ただし、「日本には無人機で制空権を確保
  する技術はない」とし、その取得に莫大な予算と長い年月を
  注ぎ込む必要があるとしている。そのため、短期的に見れば
  空母の方が現実的ではあるが、「20機程度のF35Bで、
  数で勝る中国空軍を相手に制空権を維持できるのかという疑
  問は残る」とも言う。
   「いずも」と「かが」をそれぞれ改修して計20機余りの
  F36Bを新規に購入するのに必要な予算は、約40億ドル
  だと言われている。安倍政権は、2019年度の防衛予算に
  約5兆3000億円要求しているが、その約8%に当たる予
  算を空母につぎ込めるのか。「ディヘンス・ワン」は、空母
  部隊の維持費もかかるとし、「既に人口減で隊員の確保に四
  苦八苦している自衛隊が新たな人員を確保できるのか」と人
  材難の可能性にも言及している。 https://bit.ly/2GtBEgC
  ───────────────────────────

香田洋二元海上自衛隊司令官.jpg
香田洋二元海上自衛隊司令官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]