2018年12月20日

●「日本海軍悲願の『空母化』実現か」(EJ第4915号)

 日本政府は、2018年12月18日午前、新たな防衛力整備
の指針「防衛計画の大綱」と、2019年〜23年度の「中期防
衛力整備計画」(中期防)を閣議決定しています。
 これは今までにない重大な決定です。この計画は、昨日今日に
練られたものではなく、制服組が主導して周到な計画の下に年数
をかけてやっと実現にこぎつけた計画であるといえます。自衛隊
が空母を持つことは、現在の海上自衛隊の母体になっている「日
本海軍」の悲願であったからです。
 なぜ、「日本海軍悲願の空母」なのでしょうか。それは、かつ
て日本海軍が世界に先駆けた「空母大国」であったからです。そ
れを知るためには、報道ジャーナリスト伊藤明弘氏の次の一文を
読んでいただく必要があります。
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 ここで少々、空母の歴史をひもといてみたい。世界初の水上機
母艦は、1912年、フランス海軍が「ラ・フードル」を改装し
水上機8機の収容設備と滑走台を設置して誕生した。日本では、
早くもその2年後、1914年に「若宮丸」が特設水上機母艦と
して第一次世界大戦の青島攻略戦に参加している。
 1918年、英海軍が、世界で初めて全通飛行甲板を採用した
「アーガス」「ハーミーズ」を建造した。現在の空母をイメージ
していただければいいのだが、甲板全体が滑走台となっている構
造だ。しかし、世界初の「新造空母」、つまりいちから空母とし
て建造された戦艦は、実は1922年12月27日に完成した日
本の「鳳翔」なのである。
 公試排水量は1万500トン、全長179・5メートル、艦載
機は艦戦8機、同補用3機、艦攻6機、同補用2機。カタパルト
はなかったものの、着艦には、光学式着艦システムや、航空機の
フックにワイヤーを引っかけるという、現代でも使い続けられて
いる方式が採用された。
 「鳳翔」は、第一次上海事変、太平洋戦争開戦からミッドウェ
ー海戦に参加し、のちに練習空母として、呉鎮守府第四予備艦と
なった。終戦後は除籍しつつも復員艦として特別輸送艦となり、
1947年に解体され寿命をまっとうした珍しい軍艦である。
 日本海軍は正規空母をのべ26隻を運用し、他にも、航空巡洋
艦、航空戦艦、はたまた潜水空母まで建造した。そして、これら
を使って、世界初の空母を中心とした機動部隊を編成。真珠湾奇
襲攻撃を成功させた。
 これを受け、米海軍も大艦巨砲主義を捨てて、日本をまねたタ
スクフォース(任務航空艦隊)をすぐさま編成した。日本海軍は
まさに世界に先駆けた「空母大国」だったのである。
 戦後は冷戦という状況下、米ソの空母の大型化や原子力空母の
導入が加速。現在のような「空母打撃群」として成長したため、
かつて日本が空母大国だったというイメージは色あせてしまった
が、その事実はもっと知られてしかるべきだろう。
                      ──伊藤明弘著
    「海上自衛隊『悲願の空母』になる『いずも』の実力」
                  https://bit.ly/2Bq1JaG
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 日本海軍に関しては、もうひとつ話があります。それは、日本
海軍は終戦後、解体されることなく、海上自衛隊にそのまま引き
継がれているという事実です。
 これは、阿川尚之氏の次の著作に詳しく出ています。この本は
何度読み返しても感動できる内容で、多くの人に読んでいただき
たい名著であると思います。
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                       阿川尚之著
  「海の友情/米国海軍と海上自衛隊」/中公新書1574
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 太平洋戦争直後、日本の沿岸には、米海軍が敷設した感応機雷
が1万1千個、帝国海軍が敷設した防御用機雷が、約5万5千個
残っていたのです。実際に機雷に触れて民間船舶が沈没し、大量
の死者を出しており、これらの機雷の存在は経済活動再開のがん
となっていたのです。これに対して米軍が何をしたのかについて
は、阿川尚之氏の本から引用します。文中の「アワー」とは、元
米海軍中佐、ジェームス・アワー氏のことです。
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 昭和20年(1945年)8月の敗戦を機に、帝国海軍は消滅
する。海軍軍人は武装解除され、戦艦「長門」をはじめとする残
存艦艇は、しかるべく処分された。海軍省は12月1日第二復員
省と名前を変え、外地からの軍人復員援助がその主要な任務とな
る。しかし、この間、戦争中の任務をほとんど中断せずに続行し
た部隊がある。海軍掃海部隊である。(中略)
 米軍は機雷処理の仕事を帝国海軍の掃海部隊に行なわせた。ポ
ツダム宣言受諾後マニラで開かれた日米軍担当者の会議で、終戦
処理の一環として連合軍進駐までに機雷をすべて除去するように
との命令が下される。9月になって横須賀に到着した米海軍当局
者は、掃海が完了していないと責任者を叱責した。しかし短期間
で何万という数の機雷を処理するのほとても無理である。米軍は
日本沿岸水域の掃海作業を甘く見ていたようだとアワーは言う。
12月に入ると田村久三海軍大佐の指揮する帝国海軍掃海部隊は
海軍省が廃止されて新しく発足した第二復員省に籍を移し、掃海
の仕事を続けた。使用する艦艇、乗組員ともに、海軍時代そのま
まである。GHQの民生局は掃海部隊を指揮する旧海軍士官を追
放しようとしたが、米極東海軍司令部がこれに反対し、所属はと
もかく海軍の現役部隊がそっくりそのまま残った。アワーが帝国
海軍は消滅しなかったという理由は、ここにある。このころ、掃
海部隊の陣容ほ艦船391隻、人員2万9100名を数えた。
                ──阿川尚之著の前掲書より
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               ──[フリーテーマ/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「いずも」空母化に神経とがらせる中国
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   中国は、安倍政権が進める大型護衛艦「いずも」の空母化
  に神経を尖らせている。空母化と並んで中国が警戒するのが
  護衛艦の南シナ海とインド洋への長期派遣で、トランプ政権
  の「航行の自由作戦」を補完する「哨戒活動」とみなす。日
  中関係は5月の首脳会談で改善軌道に乗ったが、中国側は安
  倍政権が「安全保障面では中国を敵視している」(中国軍系
  研究者)と不信感を隠さない。
   「いずも」は、全長248メートルの全通式甲板を備え、
  対潜水艦を主任務とするヘリ搭載護衛艦で、海上自衛隊は同
  型護衛艦を4隻保有している。第二次大戦の敗戦で旧帝国海
  軍の空母機動艦隊が解体されたため、空母保有は、自衛隊に
  とって「悲願」だったと言える。
   空母化へは、甲板の塗装を変えて耐熱性を上げる改修をす
  れば、F35B最新鋭ステルス型戦闘機を搭載できるように
  なる。防衛省は4月末、F35Bの発着や格納が可能かどう
  か「いずも」の能力向上に関する調査内容を公表。さらに自
  民党は5月、2018年末に策定される新たな「防衛計画の
  大綱」(防衛大綱)と中期防(中期防衛力整備計画)に向け
  「多用途運用母艦」の早期実現を図る提言をまとめ、空母化
  が現実味を帯びてきた。     https://bit.ly/2T0qVfd
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阿川尚之氏.jpg
阿川尚之氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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