2018年12月17日

●「中国の『国家情報法』の恐ろしさ」(EJ第4912号)

 一体ファーウエイの何が問題なのでしょうか。
 野村総合研究所セキュアテクノロジーズの時田剛氏によると、
ファーウェイの製品に仕様書にないポート(通信の出入り口)が
見つかった例があるそうです。つまり、ハードウェアに仕掛けが
施されているようです。以下、時田氏と日経記者のやり取りを引
用します。
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記者:ファーウェイ製品による情報漏洩の被害は実際に起ってい
 ますか。
時田:実害は断定できないが、これまでに何度か深刻な問題が見
 つかっている。例えば、通信機器に仕様書にないポートが見つ
 かった例がある。インターネットで外部と通信が可能なため、
 不正にデータを盗み出すバックドア(裏口)に悪用できる。た
 だ、それがファーウェイの故意かどうか分からない。開発時の
 設定作業に利用していたポートを停止せずに製品を出荷したと
 しても不思議はない。
記者:バックドアを使うと、どんな情報を取得でき、何ができる
 のですか。
時田:携帯電話の基地局を例にとると、基地局を経由するスマー
 トフォン(スマホ)の端末識別用の情報や通信の宛先情報がわ
 かる。悪用すれば、政府の要人がどこで誰とやり取りしている
 のかなどを特定できる。
  企業の拠点に設置するネット接続用のルータ−などは、設定
 次第で社内ネットワークに流れるあらゆる情報を取得できる。
 機密性の高い情報技術を盗まれるなどの被害が考えられる。
記者:最新技術を使って、そうした機器を見つけ出せないのでし
 ょうか。
時田:難しい。全ての製品を検査するのは不可能だ。しかも最近
 の不正プログラムは、特定の時間しか動作しないなど、手が込
 んでいる。どこまで検査すれば安全なのかというゴールを設定
 できない。  ──2018年12月12日付、日本経済新聞
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 ファーウェイ副会長逮捕の背景に、中国政府が2018年6月
に施行した「国家情報法」なる法律の存在があります。この法律
は、国家の安全保障強化のため、国内外の「情報工作活動」に法
的根拠を与えるもので、2017年12月に全国人民代表大会で
審議入りし、2018年6月27日に採択されています。
 国家主権の維持や領土保全などのため、国内外の組織や個人な
どを対象に情報収集を強める狙いが考えられます。国家安全局員
を外国に派遣し、彼らに中国の国家機密を漏洩する恐れのある人
物を監視、調査する権限を与えることも、この法律ならすべてが
可能になります。ひどい話です。
 また、この法律によると、例えば、ファーウェイが全くその気
がなくても、国家のためであれば、製品に細工を施し、情報を盗
み出すこともしなければならないことになります。民主主義国家
では考えられないことですが、この法律なら、その国の法律を無
視して、やりたい放題ができることになります。
 習近平国家主席は、「国家安全法」、「反テロ法」、「反スパ
イ法」、「NGO管理法」、「インターネット安全法」といった
法律を次々と制定し、国家としての管理・規制を強めています。
習近平政権のこのような対応に対し、トランプ政権は、関税引き
上げを武器として、その対抗措置をとったのです。
 米国のトランプ大統領は、2018年8月13日、2019会
計年度(18年10月〜19年9月)に戦費を含め計7160億
ドル(約80兆円)の国防予算を計上する「国防権限法案」に署
名し、同法は成立しています。米メディアによると、国防予算は
この9年間で最大規模になります。トランプ大統領は、東部ニュ
ーヨーク州のフォートドラム陸軍基地で大勢の兵士を前に署名式
を開き、巨額の予算確保で「米軍再建」重視を強調しています。
 この法律のなかで、米政府機関とその取引企業に対し、中国情
報通信大手のファーウェイやZTEの機器を使うことを禁止する
など、対中強硬姿勢を鮮明にしたのです。中国外務省の陸慷報道
局長は、国防権限法に「強烈な不満」を表明、「冷戦思考とゼロ
サムゲームの理念を捨て、正確かつ客観的に両国関係を扱うよう
米国側に促す」とコメントを発表しています。
 このような状況において、カナダでファーウェイの副会長が逮
捕されたのです。そして米国は、日本を含む同盟国にも中国通信
企業の製品を使わないよう要請しており、この動きは今後拡大す
るものと思われます。既に日本は米国の要請に答える措置をとっ
ており、ソフトバンクをはじめとする通信大手企業はその対応を
急いでいます。
 つまり、米国はちゃんと国防権限法の法令にしたがって、孟晩
舟容疑者の身柄の米国への引き渡しをカナダに対して求めている
のです。こうなってくると、米国のこうした対中国強硬姿勢が、
休戦どころか、容易には収束する可能性が低いことがわかると思
います。トランプ政権は本気です。
 何しろファーウェイは、通信基地局で世界シェア第1位、スマ
ホで2位、半導体だけで年間調達額は1・5兆円を超え、日本企
業からも5000億円規模の部品を購入しているのです。したが
って、ファーウェイ排除の動きがさらに加速すると、そのサプラ
イチェーンを担う日本や米国の企業にとって、大きな打撃になる
ことは確かです。
 かつての東西冷戦の時代と異なり、米国、中国という2大経済
大国がそれぞれ「自国第一」で確執を強めると、結局、国境を超
えて互いに依存し合うグローバル企業に犠牲を強いることになる
のです。これらのグローバル企業は、国家間の安全保障をめぐる
「地政学リスク」を突き付けられていることになります。そもそ
も超大国が覇権を求め、対立を深めると、どちらの国にとっても
けっしてよい結果にはならないのです。
               ──[フリーテーマ/006]

≪画像および関連情報≫
 ●経済と安全保障は分けて考えるべきである
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   各国を巻き込んだ米中冷戦の様相をみせはじめた「安全保
  障に関する中国メーカー排除」方針である。日本政府も実質
  的な「中国メーカー排除」が念頭にあるという論調の報道は
  12月に入って以降強まるばかりだ。
   2018年初め、年初め、FBI(連邦捜査局)やCIA
  (中央情報局)、NASA(国家安全保障局)の高官は上院
  の情報委員会で、ファーウェイとZTEのスマートフォンに
  関して、アメリカ国民に2社の製品とサービスの利用を勧め
  ないとする見解を示した。政府が中国を問題視する根本的な
  理由は何なのか。そして、私たちが日常的に使うスマートフ
  ォンの風景や、日本経済はこの先どういう状況に入っていく
  の  か。その解釈を、前総務大臣政務官で、通信行政に詳
  しい衆議院議員の小林史明氏に聞いた。
   そもそも、なぜ日本政府はこのタイミングで、政府調達機
  器に関する基準の強化を図ったのか。日本政府はアメリカの
  要請に答えたのではないかという見解もあるが、小林氏は、
  「もともと取り組んでいたが、改めて答えた形」と語る。小
  林氏「時期については、いくつかの観点があります。1つは
  2018年7月27日にサプライチェーンリスクに関する閣
  議決定があり、きちんと強化していくという話は以前からあ
  りました。具体的に(国として)どうするということを世の
  中に伝えていくタイミングでした」。
                  https://bit.ly/2rDz5hD
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渦中のファーウェイ.jpg
渦中のファーウェイ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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