2018年12月11日

●「宣戦布告なき戦争が勃発している」(EJ第4908号)

 中国には「韜光養晦」(とうこうようかい)という言葉があり
ます。これは、これまで中国の国際社会に対する態度をあらわす
言葉として使われてきています。そもそもこの言葉は、中国の国
家指導者、ケ小平の演説が根拠になっているといわれています。
その意味は次の通りです。
─────────────────────────────
     韜光養晦 → 才能を隠し、内に力を蓄える
─────────────────────────────
 「力のないときは、あれこれいうんじゃない。じっと我慢し、
内に力を蓄えよ」という教えです。しかし、中国はとっくの昔に
国際社会に対してこの態度をかなぐり捨て、爪も牙も剥き出しの
中国になっています。
 それは、2005年から始まっているのです。当時の米国のロ
バート・ゼーリック国務副長官が台頭する中国に対し、ステーク
ホルダー(利害共有国)になってほしいと呼び掛けたのがきっか
けといわれています。以来13年間、今や米国と正面から対立す
るようになっています。
 それを端的にあらわしているのが、APECでのペンス副大統
領の中国を意識した演説です。はっきりと中国を特定し、次の要
旨の演説を26分間にわたってブチまくったのです。これは「言
葉による戦争」そのものです。
─────────────────────────────
 独立戦争からまもなく、ジョージ・ワシントン初代大統領は、
負債と外国の干渉が、独立によって得たすべてのものを脅かす恐
れがあると警告した。
 こんにちにおいても、すべての国は主権を脅かす負債を受け入
れてはならない。国益を守り、独立を保持するべきだ。アメリカ
のように、常に自国ファーストで行くべきなのだ。
 アメリカはよりよい選択肢を提供する。パートナーを借金の海
に溺れさせることはない。独立を脅迫したり、譲歩させたりする
こともない。アメリカはオープンにフェアに行動する。(一帯一
路のように)ベルト(帯)を締めすぎたり片道切符のようになる
こともない。今日、インド太平洋透明化イニシアティブを誇り高
く発表する。それは4億ドル以上に上るアメリカの資金援助であ
り、この地域の国民が腐敗に対抗し、主権を強化するのに役立つ
ものだ。
 皆さんが米中の競争を案じているのは分かっている。米中の競
争が地域の経済を傷つけたり、南シナ海での発展が軍事的緊張を
高めてしまうのではといったことだ。そこで私は明確にしたい。
アメリカは中国とのよりよい関係を求めている。だがそれは、公
正で、相互主義的で、主権の尊重に基づくものだ。
 もしも中国が、隣国の主権を尊重し、自由・公正・相互主義的
な貿易を受け入れ、人権と自由を守るのであれば、自由で開放さ
れたインド太平洋地域において、その名誉は保たれる。アメリカ
人は、それ以上は望まない。     https://bit.ly/2BYK6Ak
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、現在の中国の存在は、過去数十年にわた
る米国の対中戦略の失敗に原因があるといっていますが、それは
まさにその通りです。そこで、トランプ政権は、対中戦略を従来
の「接触戦略」から、「全方位封じ込め戦略」に転換を図ってい
ますが、これは正解であるといえます。
 米ソ冷戦が崩壊した1990年代以降、米国の対中政策は一貫
していないのです。民主党のクリントン政権は、中国を国際舞台
に引き出し、国際ルールに従わせる「エンゲージメント戦略」を
とり、米中関係を安定させています。ここでいうエンゲージメン
トとは、「関与する」という意味です。国際ルールを守るように
なれば、中国も少しずつ民主国家になって行くだろうと期待した
のです。しかし、これは見事に裏切られます。
 クリントン政権に続く共和党のブッシュ政権では、中国の軍事
的、経済的台頭を抑え込む「ヘッジ戦略」を取りながらも、急膨
張し、巨大化する中国市場を獲得したいと希求する米国企業の要
請に答えて「接触政策」もとったので、政策が中途半端なものに
なったことは確かです。
 再び政権は民主党に戻り、オバマ政権が誕生します。このとき
中国側は西側と協調を図ろうとする胡錦濤政権だったので、再び
「エンゲージメント戦略」をとります。しかし、2012年秋に
強権的な習政権が生まれると、対中強硬戦略に転換したものの、
中国が南シナ海で軍事拠点化を進め、対外膨張、覇権主義の牙を
むき出しても、オバマ政権は言葉では非難したものの、実際には
何も有効な手を打てなかったのです。
 このオバマ政権を受け継いだ現トランプ政権は、現在の覇権主
義を目指す中国の存在は、歴代米政権の対中政策の失敗であると
し、強力な「全方位封じ込め政策」をとったのです。その内容は
中国にとって非常にシビアであり、習政権は改めてトランプ大統
領の底しれぬ恐ろしさを感じているはずです。
 いま中国の習政権が困っているのは、米国との全面衝突の時期
が予定よりも早くやってきてしまったことです。その原因は、予
想に反して、クリントン氏ではなく、トランプ氏が大統領に選ば
れたことにあります。
 よく知られているように、トランプ政権はメディアとバトルを
繰り広げています。マスコミはトランプ大統領を毛嫌いしており
米中貿易戦争をかなり度の強い色眼鏡を通して見ています。その
ため、トランプ政権が何を考え、中国に対して、どのような手を
打っているかがかえって見えにくくなっています。
 それに加えて、トランプ氏はツイートを頻繁に発進し、メディ
アがそれを伝えるので、それがトランプ政権が何を画策している
のかをさらに見えにくくしています。実は、トランプ政権は、こ
と対中国戦略に関する限り、きわめて有効な手を打っており、こ
れにより習政権はかなり追い詰められています。
               ──[フリーテーマ/002]

≪画像および関連情報≫
 ●米外交シンクタンクの専門家に米中摩擦を聞く
  ───────────────────────────
   習主席の究極の目的は偉大な国として中国を再生させるこ
  とだ思います。その時に浮上する疑問は、どのようにそれを
  達成するか、どのようにして世界的な舞台で存在感を取り戻
  していくのか、ということです。これまでに習主席が決定し
  たことを見ると、国内では抑圧的で独裁的、国外では野心的
  で拡大志向な国家を構築することです。
   習主席がそれをどのように進めたかというと、第一に中央
  集権化を進めました。中国を改革・開放に導いた当時の最高
  指導者、ケ小平が構築した集団指導体制ではなく、彼の手中
  に権力を集中することで実現したんですね。
   第二に、共産党が中国社会と中国経済に深く入り込みまし
  た。企業の中に細胞組織を作るように命じたのは一例です。
  そして第三に、外国からの影響が国に及ばないように、制限
  と規制の「仮想の壁」を築きました。
   中国は製造業の高度化を目指す「中国製造2025」を進
  めていますが、この壁によってAI(人工知能)や新素材な
  ど、最先端の分野で多国籍企業が公正に競争できなくなる可
  能性があります。また、外国のNGO(非政府組織)の管理
  に関する新たな法律によって、外国のNGOが中国の取引相
  手と協力することが難しくなりました。ご存じの通り、イン
  ターネットへのアクセス制限も厳しくなっています。
               ──エリザベス・エコノミー氏
                  https://nkbp.jp/2RLcuLH
  ───────────────────────────

APECで演説するペンス副大統領.jpg
APECで演説するペンス副大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]