2018年11月22日

●「全日空機に航空法違反の疑いあり」(EJ第4896号)

 千歳空港を出発するに当たって、58便の川西機長が、運輸省
千歳空港事務所に提出した飛行計画書には次のルートにしたがっ
て飛ぶことが明記されています。
─────────────────────────────
 13時15分千歳離陸(予定)
 J10L → 函館NDB → J11L → 大子NDB 
 → J25L → 佐倉NDB → 木更津NDB → 14
 時35分羽田着          ──佐藤守著/青林堂刊
          『自衛隊の「犯罪」/雫石事件の真相!』
─────────────────────────────
 専門的なので詳しい説明を省略しますが、「J××L」という
のは、ジェットルートといい、計器飛行で無線施設間を飛ぶ一本
のライン(直行経路)のことです。24000フィート以上で飛
ぶルールになっています。
 しかし、このように飛行計画書を出しても、少なくとも当時は
必ずしも飛行計画書通り飛ぶとは限らないのです。昨日のEJの
コックピット内における機長と副操縦士の対話を思い出していた
だきたいのです。再現します。
─────────────────────────────
機長:こんなに良く見える日は航法に気を使うことはないよ。今
 日は大分遅れたたから、仙台のVORで、気楽に近道と行こう
 じゃないか。
副操縦士:そうします。ところでキャプテン、おなかの方は?
機長:ペコペコだよ。千歳じゃ食べている暇はなかったからな。
 “ジョージ”(自動操縦装置)におまかせして、昼食にすると
 しよう。            ──佐藤守著の前掲書より
─────────────────────────────
 このやり取りで重大なのは、「今日は大分遅れたたから、仙台
のVORで気楽に近道と行こう」という部分です。飛行計画書で
は函館NBDから「J11L」というジェットルートに乗ると書
かれているのです。当然自衛隊側もそのことを知っています。そ
のため、それを避けて訓練空域が設定されています。なお当時は
函館NBDから、仙台VORルートに乗るジェットルートは開設
されておりません。なお、墜落して破壊された58便の機長側の
ルート指示機には「仙台VOR」にセットされた状態になってお
り、このルートを飛行しようとしたことは間違いないのです。
 飛行方式には、次の2つがあります。
─────────────────────────────
       1.有視界飛行方式(VFR)
       2.計 器飛行方式(IFR)
─────────────────────────────
 有視界飛行方式とは、パイロットの責任において飛行する方式
です。これに対して計器飛行方式とは、飛行コースを申請し、承
認されたコースと高度を計器に従って逸脱しないように飛行する
方式のことです。当時の飛行方式は、このVFRとIFRの両方
を使っていたのです。
 それとは別に、当時は「VMCオントップ」という飛行方式も
認められていたのです。これについて、佐藤守氏は、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 「VMCオントップ」というのは、通常「雲上有視界飛行」と
いっていましたが、使用飛行場が計器飛行状態(IMC)である
場合、計器飛行方式による出発を予定して申請し、航路などの指
定を受け、離陸して雲上に出て、「VMC(有視界飛行状態)」
が確保できると判断される場合には、地上管制官に「VMCオン
トップ」と報告してIFRをキャンセルし、VFRで飛行するも
ので、この時点で管制官の仕事は軽減されます。
 我々もよく使用していたものですが、その条件は雲の頂上(ト
ップ)から1000フィート(約300メートル)以上離れて飛
行することが出来ること、及びVFR同様、高度をIFRの高度
と500フィート差をつけることでした。その基準を守れば、管
制指示を受けなくとも自由に飛行できるから、民間機パイロット
も重宝していたのです。しかしこれは雫石事故の後、ニアミスの
可能性があると運輸省が禁止しました。
                 ──佐藤守著の前掲書より
─────────────────────────────
 もし、飛行計画書に届けていた「J11L」というコースを飛
行せず、断りもなく、仙台VORに向けて飛行した場合、明らか
に「航空法違反」になります。しかし、当時は、こんなことは日
常茶飯事に行われていたのです。とくに全日空機は、申請した航
空路を恒常的に無視するという重大な航空法違反を繰り返す常習
犯だったといわれています。
 背景として、この全日空の運行にみられるように、操縦クルー
の過密なスケジュールがあります。既に述べているように、事故
機は1日に、千歳と羽田を3回往復しているのです。これでは食
事をするヒマすらないのです。そのため、操縦クルーは少しでも
時間を節約しようと、計画書とは異なる仙台VORを通るショー
トカットを行っていたものと思われます。したがって、千歳から
羽田に向う50便でも、羽田から千歳に戻る57便でも、おそら
く、このコースを通っていたはずです。
 そのため、再び千歳から羽田に向う58便でもこのコースを使
い、仙台VORの進路を取り、28000フィートの巡航速度に
到達して水平飛行に移った後、自動操縦装置に切り換えて、操縦
クルーは3人一緒に昼食をとったものと思われます。もし、一人
でも見張りをしていれば事故は防げたはずです。
 しかし、添付ファイルにあるように、そこは自衛隊の訓練空域
であり、「A」のところで、自衛隊機と接触したのです。時刻は
14時2分31秒。なお、事故調は衝突場所を「B」としており
時刻は14時2分39秒です。
         ──[日航機123便墜落の真相/066]

≪画像および関連情報≫
 ●計器飛行方式と有視界飛行方式
  ───────────────────────────
   計器飛行とは読んで字のごとく、各種の計器から得られる
  情報だけを頼りにして行う飛行のこと。計器によって機体の
  状態や現在位置を把握して、進むべき針路を決めたり、上昇
  ・下降したりする飛行の形態を指す。ちなみに航空法では、
  「航空機の姿勢、高度、位置および針路の測定を計器のみに
  依存して行う飛行をいう」とある(第一章「総則」の「第二
  条(定義)」以下、第16項)。
   計器飛行を行うためには、所定の訓練を受けて試験に合格
  して、計器飛行証明という名の免許を取得する必要がある。
  計器に頼って飛ぶということは、計器の読み方・使い方を正
  しく知っていなければならないということだからそうなる。
   ずいぶん昔の話だが、日本航空のパイロット訓練生が計器
  飛行の訓練を行うために、外が見えないように頭の上からバ
  イザーを被って操縦している写真を見たことがあった。上半
  分はまるごと覆われた状態で目の前の計器盤だけが見える。
  その計器盤に並んだ計器だけを頼りにしなければならない状
  態を物理的に作り出しているわけだ。ややこしいことに、計
  器飛行に加えて計器飛行方式(IFR)という言葉があって
  この両者は別物である。計器飛行方式のキモは、「事前に飛
  行計画書を提出して」「航空管制官の指示に従いながら飛行
  する」点にある。        https://bit.ly/2DxMHSV
  ───────────────────────────

58便は自衛隊機とどこで衝突したか.jpg
58便は自衛隊機とどこで衝突したか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 日航機123便墜落の真相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

RDF Site Summary