2018年11月19日

●「航空路と訓練空域の錯綜のリスク」(EJ第4893号)

 雫石空中衝突事故の全日空側58便のクルーをご紹介しておき
ます。これらの操縦士は全員墜落死しています。
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        機長 ・・・ 川西三郎
      副操縦士 ・・・ 辻 和彦
     航空機関士 ・・・ D・M・カーペンター
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 川西機長について、操縦経歴をご紹介します。
 機長の川西三郎氏は、関西学院大経済学部卒業後、昭和30年
4月に陸上自衛隊幹部候補生学校に入校し、基本操縦課程を経て
第3、第10航空隊などで、主として小型機を操縦し、約6年間
陸自に勤務した後、昭和36年4月に退職、5ヶ月後に全日空に
入社しています。
 全日空での操縦歴は、ダグラスDC3、コンベアCV440、
フォッカーF27の機長を務めた後、B727に移り、事故直前
の昭和46年6月7日に機長資格を取っています。自衛隊時代か
らの総飛行時間は8033時間であるものの、B727について
は、242時間5分と短いのです。6月にB727の機長の資格
をとって次の月の7月の事故ですから、やはり慣れていない面が
あったことは否定できなないと思います。
 雫石空中衝突事故では、「航空路」とか「訓練空域」に関係す
る事故なので、「航空路」について知る必要があります。
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 航空路とは、航空機が飛行していく方向や飛行する高度を決め
て、安全に航行できるようにした「空の道」を指す。航路とも表
記する。航空機は、出発空港から到着空港までの間を一直線に飛
ぶのではなく、自動車や鉄道と同様に、決められたルートが存在
する。     ──ウィキペディア https://bit.ly/2FmVoBY
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 よく「民間航空路」とか「民間機専用航空路」とかいわれます
が、厳密には「航空路」ないし、「ジェット・ルート」と呼ばれ
ています。少し専門的になりますが、航空路には無線標識によっ
て、次の2つがあります。
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  1.NDB/Non-Directional (Radio) Beacon
       無指向性無線標識
  2.VOR/VHF Omnidirectional Range
    超短波全方向式無線標識
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 「1」の「NDB」というのは、主に中波を使って、航空機の
航法援助を行う無線標識です。2つの無線標識局を探知すること
により、三角測量によって現在位置を知ることができます。しか
し、NDBには誤差が大きい欠点があります。
 「2」の「VOR」というのは、VHF帯(超短波帯)を用い
る航空機用無線標識です。標識局を中心として、航空機がどの方
向にいるか知ることができます。
 現在では、より精度の高いVORを結んだ航空路が主流となっ
ており、これを「ヴィクター航空路」といいます。ヴィクター航
空路は、具体的にいうと、次のようなものです。
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 ヴィクタールートは、各VOR施設間を結ぶ通路で、中心線か
ら左右それぞれ最小7・2キロメートル、したがって全幅14・
4キロメートルを持つ通路です。VORよりも精度の落ちるND
Bを結んだ通路は、片側9キロメートル、したがって全幅18キ
ロメートルに設定されていました。これら、航空路を飛行する場
合は、その直線経路上を飛ぶのが原則ですが、上空の風などの影
響によって進路がずれた場合に備え、全幅10マイル幅をとって
対処しているのです。        ──佐藤守著/青林堂刊
          『自衛隊の「犯罪」/雫石事件の真相!』
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 佐藤守氏によると、空自の「訓練空域」はこれらの航空路を避
けたところ設定されますが、訓練の種類、たとえば、他基地への
連絡飛行や、航法訓練(クロスカントリー)などでは、当然のこ
とながら、航空路を使います。したがって、「民間航空路」のよ
うなものはなく、航空路はいわば「官民共用」なのです。
 しかし、飛行計画は事前に提出されるので、それを守っていれ
ば、空中衝突などは起こり得ないのです。問題は、民間機のジェ
ット化が当たり前になり、高度にしても、自衛隊機が使う空域に
似てきていることです。それに計器飛行と有視界飛行が同時に飛
ぶ危険性です。
 朝日新聞主催の「空中衝突危険いっぱい」という座談会で、司
会者と、渡辺正元空自総司令官、小山昌夫運輸省航空局東京空港
羽田主任管制官、関川栄一郎航空評論家とのとのやり取りに次の
ようなものがあります。
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司会:訓練空域が、空路に挟まれているのは問題ではないのか。
渡辺:航空路の”あき”はだんだん狭くなっている。関東も大坂
 も北九州周辺も、その例に漏れず、三角形の空路のスキ間を訓
 練空域に採用せざるを得なくなっている。高度も民間機がジェ
 ット化されてきている結果、航路と訓練空域が重なっている。
小山:空路と訓練空域の間に緩衝地帯を設ける必要がある。ジェ
 ット機時代になり、使用高度も2万〜3万フィートと自衛隊と
 よく似てきた。空には、道路のように、はっきりとした区分が
 あるわけではないので、自衛隊機が民間航路に入り込むおそれ
 は十分ある。
関川:計器飛行と有視界飛行が同時に飛ぶのは、航空路を横切る
 のにも無警告でいいなど現行法には不備がある。
                 ──佐藤守著の前掲書より
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         ──[日航機123便墜落の真相/063]

≪画像および関連情報≫
 ●上田晋也のニッポンの過去問/雫石空中衝突事故
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   1971年7月30日、全日空機と航空自衛隊の戦闘機が
  岩手県雫石町上空で空中衝突しました。戦闘機を操縦してい
  た自衛隊の訓練生はパラシュートを使い脱出しましたが、全
  日空機の乗客乗員162人は全員死亡しました。衝突してし
  まった原因は自衛隊側の「ずさんな飛行訓練計画」「教官機
  の誘導ミス」「パイロットの操縦の未熟さ」の3点と考えら
  れ、自衛隊には大きな批判が寄せられました。
   一方、全日空機側には「ボイスレコーダーが装備されてい
  なかった」「訓練機を視認していたと推定されるが直前まで
  回避操作が行われなかった」などといったことも事故原因と
  して挙げられました。
   この事故により空の安全対策が急がれ、空域内を飛行する
  全ての航空機に官制を受けることを義務付ける「特別官制空
  域の拡充」「フライトレコーダーやボイスレコーダーなどの
  装置の義務化」やトランスポンダと呼ばれる「空中衝突予防
  装置の搭載」も義務付けられました。
   さらには自衛隊・米軍・民間の空路の完全分離など雫石衝
  突事故を教訓に数々の安全対策が設けられ、この事故の反省
  により空の安全は大きな進歩をとげたのでした。
                  https://bit.ly/2Bcyjhp
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上田晋也のニッポンの過去問.jpg
上田晋也のニッポンの過去問
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 日航機123便墜落の真相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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